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京大建築式を支える"学生ライター"に聞く、「建築の記事を書く」とは?

京大建築式のウェブサイトには,京都大学の建築学科・建築学専攻に所属する学生が作成した記事が数多く掲載されています.2018年度,京大建築式の立ち上げから,5人の「学生ライター」と呼ばれる人たちが活躍してくれました.彼ら第一世代の学生ライターに,その活動についてインタビューしました.
text: Kohei TAKATSUKA, photo: Katsura HIRATSUKA

浜辺亮太さん:松島研究室 修士2回生.
稲本佳奈さん:小椋・伊庭研究室 修士2回生.
稲田浩也さん:三浦研究室 修士1回生.
西村奏香さん:小椋研究室 修士1回生.
鈴木保澄さん:三浦研究室 修士1回生.

皆さんはどんな学生生活を送ってきましたか?

—— まずは,皆さんの京大建築での学生生活についてお尋ねしたいと思います.これまでの学部生・院生生活で楽しかったことや大変だったことなど印象に残っていることを教えてください.

浜辺亮太さん

浜辺—— やはり設計課題が大変でした.提出前に夜を徹して頑張ったのはすごく大変でしたが,そこで同期と仲良くなることもできました.大学院では2回生の8月末に1週間ほど,僕の研究で使用するシミュレーション手法を学ぶためにフランスに行きました.フランスで勉強しつつ,休みの土日は近くの街に遊びに行ったりもでき、いい経験ができたと思います.

稲田—— 僕は4回生で構造系に進んで卒業論文も書きつつ卒業設計もやったことが一番大変で,それに尽きます(詳しくはこちら).学部の記憶は今となってはそれが全てです.大学院に入ってからは京大建築式に関わっていることもその1つですが、興味が湧いたことにいろいろと手を出してます.

稲本——  学部生の間は所属していた少林寺拳法の部活が楽しくも大変でもありました.大学院では,エネマネハウス(詳しくはこちら)に携わることができ,外部や他大学の人と交流しながら進められたことが楽しかったです.また環境系に進んだことで,パソコンやプログラミングの知識がつきました.

西村——  学部生のときはマネージャーとして野球部に入っていたので,部活中心の生活でした.大学院に入ってからは時間ができたので,研究関連でやりたいこととやるべきことをこなしながら,海外旅行に行ったりもしています.研究は自分で進めていかなくてはならず,頭の片隅にはいつも研究の事がありますね.

鈴木—— 学部生のとき一番大変だったのは設計課題,とくに卒業設計でした.大学院では,所属する研究室の教授が高齢者施設の見学などに誘ってくれるので,実際の建物を見たり使っている人の話を聞いたりし,架空の建築の設計をしていた学部時代に比べ,実際の建築に目を向けるようになりました.(関連記事はこちら).

学生ライターをやってみて、感じたことは?

稲本佳奈さん

—— それでは,学生ライターの活動についてお聞きしたいと思います.まずは皆さん1年間お疲れ様でした.記事作成など様々な業務があったと思います.その中で楽しかったことや大変だったことを聞いていきます.
ざっくりとまとめると
  [1]記事にするネタを探す
  [2]記事作成のために取材に行き資料を収集する
  [3]記事を作成する
の3工程だと思います.皆さんはどういったことが大変でしたか? そして逆に楽しかったことはありますか?

浜辺—— 多くの人が[2]を選ぶと思いますが,僕は取材などが少なかったこともあり[3]が大変でした.論文などは専門知識を持った人向けに書きますが,記事ではどちらかというと専門知識を持たない人向けに書くことになるので,どこまで噛み砕くかということが難しかったです.

あとは,記事に掲載する写真のキャプションなど,普段雑誌などの記事を読むときに気にしないところも注意する必要があって,それは僕にとって新鮮な点でもあり大変なところでもありました.ただ,こうして集まって色々話をするのは楽しかったです.

浜辺さんが振動台実験の背景や目的を丁寧に噛み砕いた記事。

稲本—— 私も[3]が圧倒的に大変でした.専門知識をどうしたら分かりやすく噛み砕けるのか,表現方法がなかなか分からず難しかったです,書いた後に見直してあまり面白くないなあと思ってしまい,記事作成にすごく時間がかかってしまったりもしました.また,大学のオープンキャンパスの記事留学生インタビューの記事を書いたことをきっかけに知り合えた人もいて,それは楽しかったです.

稲田—— 僕は取材系の記事が多かったので[2]が大変でした.取材先や関係者の日程調整や,提供してもらう情報の内容や分量の調整が難しかったです.逆に文章書くことはあまり苦にはなりませんでした.

取材をするといろいろな話が聞けるので,ありがたかったですし楽しかったです.(関連記事はこちら).この間ポートフォリオ展の記事を書いたときは展示会に遊びに来てくれた他大学の人にもインタビューし,知らない人としゃべる機会もできました.

稲田さんがOGに東京でインタビューをし,まとめた記事。

西村—— 私は[3]が大変でした.このネタよさそうと思っても,文章に起こすと悩むことが多かったです.あと,ゼミの記事のように手元に写真が無い時にけっこう苦労しました.

自分が作った記事のプレビュー数やランキング,ツイッターの反響などを会議などで教えてもらい,反応がわかるのは楽しかったです.また自分の研究テーマが「ザ・建築」から少しズレたところにあるので,建築学科・専攻にいるという感覚が学部生の頃より薄れていたんです.京大建築の紹介記事を作る作業にかかわって,久々に建築の他分野に進んだ同級生と話したりできるのも楽しかったです.

西村さんが撮影をしたり、他研究室に依頼したりして画像を集めた記事。

鈴木—— 私は[1][2]が大変でした.最初は読者に興味をもってもらえるのか不安で,考え込んだりしていました.また写真などもパッと見て興味を持ってもらえるものを選ぶのが難しいのと,この写真は載せていいのかということまで考えなくてはならず,大変でした.逆に[3]の文章に起こして記事を作るときは楽しかったです.あと,自分が作った記事(たとえばこちらなど)を紹介するツイートがたくさんリツイートされているのを見ると嬉しかったです.

鈴木さんがまとめた記事。Twitterなどで、かなりの反響がありました。

—— 卒業論文を書いたことがある人は文章を書くことには慣れていると思っていましたが,皆さんの作業の様子を知り,あらためて記事を拝見すると,対象読者が違うので苦労があったことがわかります.

稲田浩也さん

—— 京大建築式ウェブサイトの立ち上げや記事の作成など,初めての経験が多かったと思います.何か驚いたことや気づいたことはありますか?

浜辺—— 自分が作った記事に反応があることに驚いてます.あと,どこ経由でウェブサイトや記事にアクセスしてるかまで分かるので,そういう時代になったんだなぁと思っています(笑).その情報をもとに記事の内容や書き方を考えるというのも面白いと思いました.

稲田—— Twitterからのアクセスが多いようで,それは意外でした.あと,ライター紹介ページがよく見られているとも聞き,さらに驚いてます.せっかくなので自分の紹介文を定期的に更新しようと思いました(笑).

西村—— ネットでの情報の広がり方を知り,自分たちも他人事じゃないんだと実感しました.あと,こちらから記事を発信してもそれで終わりじゃなくて,その記事の反響から次の記事の発信につなげていくサイクルが面白いなと思いました.

稲本—— 楽しかったことと重なりますが,取材の過程でいろんな人に関わって,その人たちに色々な話を聞けたことです.

鈴木—— これまで自分が見てたネットの記事のキャプションとか見出しとかは,パッと流してみてて気に留めてなかったんですが,この仕事を通してこうした物の大事さや難しさを感じて,今は「へ~こんな風に書いてるんや~」とか「これはちょっと微妙やな」とか、考える視点を持つようになりました(笑).

記事作成にあたって、大事にしていたことは?

西村奏香さん

—— 自分たちが記事を作っていくうえで大事だったなと思うことや重視していたことを教えてください.

浜辺—— まず重視していたことは,誰に伝えるのかを意識することでした.専門知識を持たない、例えば高校生などが読んでも分かりやすいように書くようにしていました.しかしそもそも記事を読んでもらうために大事なのは,記事のタイトルと写真でいかに惹きつけるかということです。このことも意識しながら全体をまとめるようにしていました.

稲本—— たとえばエネマネハウスの記事を書く際には,既に他のウェブサイトでも紹介されているので、内容や書き方がかぶってしまわないよう,プロジェクトに参加した学生ならではの目線で記事を書くよう工夫しました.留学生のインタビュー記事他大学のウェブサイトにある類似の記事をみて、それらとの差別化を図るようにしました.

稲本さんが、学生目線を意識してエネマネハウスを紹介した記事。

稲田—— 写真は大事だと思いますが,知識があまりないので,構図などどういう写真が人の目を惹きつけることができるのかを学ぶ機会があるとありがたいです.重視したことは,記事の〆切を自分で作ることです.あまり厳しい〆切がない活動だったので当初はサボりがちでしたが,自分で「いつまでにやる」と宣言してその〆切を守るようにしてからはちゃんと取り組めるようになりました.

西村—— 記事を書くときに自分が面白いと思うことです.書いている本人が面白いと思っていることは,読んでいる人にも伝わると思うので,何をどう面白いと感じているのかをしっかり表現するよう,書き方を大事にしました.あと,私も〆切が大事だと感じました(笑).定期的に集まって顔を合わせるので,それまでにここまで進めようと考えながらやっていました.

鈴木—— 対象読者に高校生も含まれると聞いていたので,自分が高校生の時に何が知りたかったか,建築に抱いていたイメージを踏まえて,どんな情報を伝えるべきか考えることを大事にしていました.

来年以降の学生ライターに向けてメッセージ!

鈴木保澄さん

—— 最後に,応援のメッセージや学生ライターの魅力など,来年以降の学生ライターに向けて一言お願いします!

稲田—— 知らない世界が見えるよ! ということを推したいと思います.自分とは違う研究室のことがわかりますし,今後なかなか関わることがなさそうな社会人の方と関わることもできますし,いい経験ができると思います.

西村—— せっかく京都大学の建築学科・建築学専攻にいるので ,自分の知っている京大建築のことを再確認し,発信するよい機会だと思います.

鈴木—— 設計でも論文でも,自分の専門分野に関して文章を書くことはあると思うんですけど,広い範囲の人にみてもらうことはあまりないと思うので,そういう経験ができるいい機会だと思います.

浜辺—— 普段やらないことにチャレンジしてみよう! だと思います.社会人になってからは,ネット上に記事を書くという機会はなかなかないと思うので,やっておいてもいいんじゃないかなと思います.もう一つは,自分の名前がネット上に残るよということだと思います.自分の名前をネットで検索した時に京大建築式の記事がヒットして,僕はちょっとうれしかったです.

稲本—— 読んでくれる人を意識しながら書く表現力,残っても恥ずかしくないものを書く力が身に付くと思います.

—— 1年間学生ライターとして頑張ってくれてありがとうございました.いろいろと当事者ならではの面白い話が聞けてよかったです!

(2019年2月18日 京都大学 桂キャンパスにて)

執筆者:
高塚 康平 | 助教
1989年転勤族一家に生まれる。洛南高校を卒業後、京都大学工学部建築学科に入学。京都大学大学院工学研究科修士課程修了後、博士課程を2年で修了。2015年4月より現職。趣味はDIY。甘いお菓子が大好きな猫舌。

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