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親同士が連絡を取り合えないなら“エア共同養育”から始めてみよう〜古賀礼子さん〜

こんにちは。一般社団法人りむすびです。
子連れ離婚後も両親で子育てする共同養育を実践している女性「共同養育woman」特集。今回は弁護士・育休後アドバイザーとして活躍する古賀礼子さんを直撃インタビューしました。


■プロフィール

 ・お名前 古賀礼子
・ご職業・肩書き 離婚後子育て応援弁護士 育休後アドバイザー
・お子さんの性別・年齢 11歳男子 4歳女子 2歳男子
・経歴
教育学部出身、信州大ロー卒業、2013年弁護士登録。
キャリアと育児を柔軟に両立できるのは自由業としての弁護士だと考え、司法試験に挑戦したものの、浪人を重ね受験期間が長引く。出産・育児との両立を先行して取り組むことにして、ロースクール在学中に第一子を出産する。さらなる浪人中、子連れ離婚。弁護士登録後、養育費調停事件の当事者を経験。離婚後共同養育の大切さを学び、弁護士の立場でも発信している。


■現在、どんなカタチで共同養育を行っていますか。

 エアです。元夫婦として、父母間の連絡は全くありません。養育費調停事件で取り決めるとき、父母としては、緊急時を除いて連絡を取り合わないことを合意しました。そのおかげで、没交渉ですが、息子と父親は面会交流を続け、パパもママも大好きだと自信をもって気持ちを教えてくれます。そんな息子が誇りです。
 

■共同養育に前向きになれた経緯をお聞かせください。

 教育学部で子どもに関することを学んでいたころ、離婚後共同養育について自然に知る環境にあり、離婚後も養育費が払われること、心身の交流が続くことの大切さを元々理解していたと思います。

 しかし、最初に離婚話になった生後半年頃、元夫は、「離れて暮らす子どものことを覚えて生きることは辛いから、忘れるために養育費は払わないね」といった趣旨のことを宣言したので、当時、受験生だった私は、離婚協議自体凍結せざるを得ませんでした。

 修復の余地を視野に残しながら別居を続けるものの、関係は悪化するばかり。結局、息子が3歳の時に協議離婚をしました。その頃は、さすがに、養育に関する費用を負担しなければならないことは理解していたようでしたし、月に1回程度は会っていくことは口約束ですが合意していました。

 ところが、息子が小学校に入学したときに、養育費がストップし、調停を申し立てることにしました。口約束とはいえ、合意を守る気がないのであれば、私も会わせたくないという感情に襲われました。調停委員の熱心な説得があって、協議離婚当時の口約束の内容に近い形で調停が成立しました。親子断絶の危機を救ってくれた裁判官には感謝の気持ちでいっぱいです。

■共同養育するにあたり困っていること、困っていたことはありますか。

 面会交流の日を決めても、仕事が入ったから、とドタキャンがあったり、気分がジェットコースターのように振り回されることがありました。離婚までの音信不通期間が続いたり、無視されることに慣れていたせいで、目をつぶってしまっていたのもあったと思います。

 幸運にも、そういう状態に注意をしてくれるサポーターがいて、ドタキャンを我慢しなくてもいいと教えてもらい、私も毅然と対応していくようになりました。そのうち、ルールを意識して、マナーを守る形に安定していきました。
 小学生になってからは、キッズケータイで息子自身が父親と連絡をとって、背後で日程調整のアドバイスをしつつも、当日の送迎もないし同居親としての負担はゼロです。

 ただ、相変わらずメールや電話が不通になることが多い父親なので、息子自身が不満を覚え始めていることを懸念しています。次に会える日が不明な状態が続いていて、パパの仕事が忙しくて会えないことも多いので、パパにもっと会いたいと言う息子のために何かしてあげないと、と考えています。


■お相手がどんなことをしてくれたらうれしいですか。

 息子を愛してくれるのであれば、それは単純に嬉しいですね。私は、送迎にも立ち会いませんが、たまたま、面会交流終了場面の目撃談を聞くことがあって、熱烈に抱きしめてくれているようでした。

 お互い大切に思っているはずなのに、共に不器用な父子だな、と思うところはありますが、私に無理がない範囲内で架け橋になることで、父子が仲良さそうだとホッとします。少し遠くても、息子が行きたいといった遊園地に連れていってくれたのは、本当にありがたかったです。

 ウチには、再婚後に生まれた小さな弟妹がいるので、息子の年齢に応じた遊び方ができるのは、面会交流で父子だけで出かけることができるからだと思います。面会交流を終えてきた息子は、清々しい表情で、心なしか「いい子」になります。
 
 息子の運動会のときのお弁当をお願いしたことがありますが、息子が喜びそうなメニューの手作りお弁当で、息子は全部記憶するほど味わった喜びを教えてくれました。機会は限られていますが、息子は確実に父親に愛されているのだという実感を経験していると思います。

■共同養育はどんなメリットがありますか。
 お子さんはもちろんご自身にとっても良いことがあれば教えてください。

 子育ての責任を抱え込まずに済むという意味で、精神的に救われています。息子が父親と同居していた時間はとても短いですが、DNAは恐ろしいように作用して、息子は父親にそっくりです。外観だけではなく、優しく穏やかな性格その反面黙り込んでしまうところまで、完全に一緒です。

 そこが私の性格と合わなくて、元夫とは離婚することができて、今は、こんなに幸せなのに、どうして、別れたいと思った気質と向き合い続けなければならないのか、息子のことは大切なはずなのに、とても息苦しくなることがあります。
 私だけでは、愛し抜くことの自信が揺らいでしまいかねない部分を、きっとパパは息子(自分と似ている)を受け入れていくだろうと思うと、私も寛容な気持ちに落ち着くことができるのです。
 
 何だかんだとパパは社会人として立派に生活しているので、息子も何とかなるのだろうという気持ちにもなります。息子の人生なので、息子自身が開拓していくものですが、進路に悩んだときに、助けになる大人が多い方がいいのは明らかで、私も、息子の選択を尊重していこうという余白を保つことができるのかなとメリットを感じています。
 エアだけど、父親の存在が息子の養育にあたって支えになるから、私も、ありのままの息子を愛することができています。

■お相手との関わりにおいてご自身が心がけていることはありますか。

 没交渉ですが、この度、再協議の機会となりました。息子がパパを慕っていること、もっと会いたいと思っていること、祖父母にも会いに行きたいと言っていることをきちんと伝えていきたいと思います。


■ご自身のこれからの夢やビジョンがあれば教えてください。

 共同養育と、別居親子が交流することの大切さについては、国連の勧告がありましたし、これから法曹として取り組む課題として、いろいろやりたいことがあります。 
 その中でも、離婚後共同養育=離婚後も元夫婦が仲直りをして円満に協議交渉できる関係でなければ選択できないものという思い込みから脱け出し、共同養育のハードルを下げることが必要だと考えています。

 もちろん円滑に協力していくことは理想ですが、まずは、エアから始めていい。最も大切なのは、子どもが両親と愛し愛される関係を作り、その関係を続けることそのものであって、父母の関係が円満かどうかは手段にすぎません。

 父母間に葛藤があるならば、支援機関を利用するなど工夫して、親子の関係を守ることはできるはずです。ちょっとした知恵と努力で、子どもたちが両親に愛される環境を守っていきたい。離婚するほどの間柄だもの相手に対する負の感情が残ることも自然なこと。そうした感情と、そんな相手も子どもにとってはもう一人の親なのだ、と尊重していくことは両立可能なのだと、当事者として実感しています。

 嫌いのままでいいし、無理や我慢をしなくてもいいから、大切なわが子のために、親子関係の架け橋になることをエア共同養育ならできるはずです。エアでいいから始めてみようという気軽な共同養育を発信して、離婚後も共同養育が普及していくことを願っています。

企画・取材 一般社団法人りむすび

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