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離婚・再婚から拡がる家族 ー それぞれの家庭を尊重するあらたなカタチ〜緒倉珠巳さん〜

こんにちは。一般社団法人りむすびです。子連れ離婚後も両親で子育てする共同養育を実践している女性「共同養育woman」特集。今回は離婚・再婚家庭の研究やサポートなどで活躍する緒倉珠巳さんを直撃インタビューしました。

■プロフィール

・お名前 緒倉珠巳
・ご職業 SAJ(ステップファミリー・アソシエーション・オブ・ジャパ ン)代表 http://www.saj-stepfamily.org
・お子さんの性別・年齢 21歳男子、9歳男子
・京都生まれ仙台市在住

イベントや展示会ブースのデザイン設計の仕事に長年携わったのち、離婚・再婚を機にNPO活動にシフト。2001年からステップファミリーの支援団体SAJに参加しサポートグループ運営、研究者と連携しステップファミリーのサポートプログラムの開発のほか、支援者向け研修講師など務める。2010年からSAJ代表。
主な著書に「新たな親子関係の構築を考える」『子どもの虹情報研修センター 紀要No.15』pp92-pp108.(子どもの虹情報研修センター)、共著書に『ステップファミリーのきほんをまなぶ 離婚・再婚と子ども』(金剛出版)など。Amazon:http://amzn.asia/d/4SpXEKp


現在、どんなカタチで共同養育を行っていますか。

離婚時に調停を経て、当時3歳直前の子どもの親権を分属し、親権は実父、監護権は私が持つというちょっとレアなスタイルを選択しました。今は離婚からかれこれ18年が経ち、子どもも成人を過ぎてしまいました。

今は大学での寄宿生活を送っているため「養育」から手が離れています。正直なところ、共同養育というにはお恥ずかしいくらい元夫婦間は成長がなく、もう十数年お互い顔をみていません。

ですが、子どもは双方の家庭(どちらも再婚)を自分のペースで行き来しています。どちらでも「お兄ちゃん」と慕われていて、それが自慢というか、子どもにって大事な支えになっている気がします。あちらに行くときは、数日実父の家庭にお泊まりし、実父の実家にも家族揃って出かけているようです。


■共同養育するにあたり困っていること、困っていたことはありますか。

残念なことに、まともに話し合いができない間柄で、用事で連絡とっても常に怒鳴りあいになってしまい、ほとほと嫌になっていました。向こうもだと思います(笑)。事務的に話そうとするほど、相手には嫌味に伝わるのか、どうもうまくいかないんですよね。

また、年間60日以上は面会する約束でしたので、小さいうちから長期間の訪問は頻繁にありました。それは良いのですが、先方で楽しい時間を過ごしてくると、帰りたくないと駄々をこねるのも時々あり。帰りたくないと泣いて車から降りず、車から引っ張り降ろして家に入れる・・・なんてことがあり、すごく落ち込みました。私たちは悪いことをしているのかな、ひどい親なのかなとか。

先方もショックだったんでしょうね、一時会うのを止めることも考えたようです。離婚自体に罪悪感あるので、この選択が間違いだったの?と呆然自失とした時期がありました。


■前向きになれた経緯、やってよかったという思いをお聞かせください。

前向きになれたきっかけは臨床心理士の先生に思いがけず相談できたことです。そして「子どもは泣くものだよね。(嬉しくても悲しくても。)」と言われて、子どもの涙に振り回されていたらダメだって、ハッと気付きました。

帰りたくないくらい楽しく過ごせたことは良いことだし、それを保ち続けることが大切なのに、それを諦めたら、子どもが本当に悲しい思いをするのじゃないかと。ほんの一言だったんですけど、腹が決まりました。私も大泣きしてたんですがけろっと。離婚してもしてなくてもこういうことはありますよね。

やってよかったことは、やっぱり、子どもが「自分にはパパがいない」とは思っていない、とか、一緒に住んでいなくても親子・家族として大切にする様子が見られることです。「家族」や「離婚」に対して悲観的じゃない感じがします。

■お相手がどんなことをしてくれたらうれしいですか。

シンプルに、子どものことを気にかけてもらいたい・・・ですね。本当は色々期待はずっとあったんですが、かなり叶いませんでした(苦笑)。

養育費をずっと払ってほしい、子どもの勉強や苦手なことを応援してほしい、自転車の補助輪外しをサポートしてほしい・・・とか。どうもイクメンタイプじゃないようなので全然です。だけど子どもがささやかでも「嬉しい」と思えることが得られるなら、してやってほしいなと。

いつだったか、実父の今の奥様が、子ども用に部屋着を繕ってくれてたんです。アロハな感じのを。子どももすごく嬉しかったようです。ここに居ていいんだねって思える感じですよね。


■共同養育はどんなメリットがありますか。子どもはもちろんご自身にとっても良いことがあれば教えてください。

うまくいかない間柄では、理想的な協力関係は確かに難しいんですけど、理想じゃない方法であっても、個別に子どもとの関係を維持できていることが、意外に雑草的なつながりを感じるようになりました。

定型の家族とは異なるのだけど、形じゃなく、温かな良い経験が子どもの内面を支えている気がします。部屋着だけじゃなく、先方のおばあちゃんがお世話してくれたり、地元の友達と遊んだり、異母弟が慕ってくれたりが、子どもの居場所を作ってくれてるように思います。私は、そんな子どもの居場所を奪わずに済んだこと、それが救いですね。


お相手との関わりにおいてご自身が心がけていることはありますか。

子どもが中学生になってからは本人同士に連絡も任せるようにしました。一対一の関係を持ってもらえるように。

あと、お互いに再婚してるので、それぞれの家庭を尊重することですね。元の家族にこだわるのではなく、ホームステイ先のようにそこでのつながりを作りつつ、その家庭でのルールや習慣に子どもは従えばいいと考えています。

先方が再婚されたことで、うちはうち、あちらはあちらがとてもスッキリ棲み分けられた気がします。互いが異文化であることを前提とし尊重する、という感じです。先方の奥様の厚い理解とサポートにも感謝しています。

■ご自身のこれからの夢やビジョンがあれば教えてください。

うちの子は、小学校の頃は自己紹介で離婚・再婚を話す子だったんですが、転勤で仙台の中学に入学して以後、誰も家庭事情をオープンにしない状況に気づいてびっくりしていました。

このテーマで子ども同士が繋がることがないんですよね。きっとそうなのに、誰も開示しないんだなと知って寂しそうな様子でした。今の社会は、こうした家庭事情は子どもの成長発達に考慮されておらず、自分だけ定型じゃない家庭にいると、子どもは不安を抱え込んでいるように思います。

離婚はネガティブ、触れてはいけないことではなく、離婚もその後のケアが子どもの成長発達を支えるわけですから、その経験を理解しサポートできる社会が必要です。微力ですが、そうした社会にするための働きかけを、今の活動を通しより充実させていきたいと思います。

取材・企画 一般社団法人りむすび

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