見出し画像

菌糸瓶の熟成とは?

 先月、3月30日に仕込んだオリジナル菌糸瓶ですが、今日現在、約一ヶ月経過で、上面、及び側面に大体菌が蔓延したかな、という状態です(画像向かって左)。
 おそらく、培地の中心部にまではまだ菌は到達していないのではないかと思います。生オガの植菌からの腐朽培養って、凄く時間が掛かるんですよ。まあ、この培地のチップは大きいというのもあるんですが、原木は更に時間が掛かります。

5 Liter リカー瓶で仕込んだオリジナル菌糸瓶
(向かって、左:03/30、右:04/07仕込み)


 右側のは、その一週間後に追加で仕込んだもので、比較するとチップの色味がまだ黄色っぽく見えますよね? 菌糸の蔓延具合がその色味の差として表れているのです。こちらは若干レシピを変えていまして、栄養体の量とチップの詰め具合が異なります。何せ、機会があれば比較検証するべしがわたしのポリシーなので、常にいろいろ変化を加えて実験しているわけです。ただ、栄養体とは言っても、よく使用されている薄力粉であったりの、単純なタンパク質(窒素源)ではないです。あくまで、培地のC/N比は高く保つ工夫をわたしはしていますので、それに影響のない物を使用しています。ここが一般的なブリーダーの考え方とは正反対のベクトルのわたし独特な発想によるところです。
 そして、エア・ブリード穴無しの赤い蓋は仕込み時からずっと閉めたままです。でも、ちゃんと菌は蔓延しているでしょう? 蓋と培地との隙間には結露が見られますよね? これ、菌が木質を酵素分解している証拠の代謝水です。同時に二酸化炭素も排出されているということです。これらが菌が呼吸しているという証なのです。どうです? これがオリジナル白色腐朽菌培養のリアル。

適正の見極め

 それでですね、今回、共生酵母の培養で一段階上がったオリジナル菌糸瓶開発の道の階段なのですが、実はもう一つ、見極めるべきテーマがあるんですよね。それは、幼虫に使用するのに適正な腐朽深度の問題です。言い換えると、適正熟成度合い。他のブリーダーのみなさま方は、何をして熟度を推し量られているのでしょうか?
 わたしは、これまでは市販品ベースの菌床を独自に改良するかたちで使用してきた経緯がありますので、元々、製造工場で添加されているであろう窒素源を培地内に余らせないようにするために、腐朽深度を高めるように独自に手を加えて工夫してたんですよね。それが発菌操作の繰り返しです。要するに、腐朽菌と幼虫に利用されなかった窒素が培地に多く残留することで腐敗菌の餌となって劣化してしまうので、それを回避するための方策で、使用する前に培地内の窒素源の分解を菌にできるだけ済まさせてしまい、木質のセルロースの分解に早く移行させる方法です。
 もう一つの方法は、炭素を加えてC/N比の分母そのものを薄めて(高めて)しまう方法で、この場合は培地に生オガを漉き込んで再発菌させるなどして調整していました。何れも、C/N比を下げてしまわないように培地を維持する調整です。
 ただし、これら何れも、培地の分解(熟成)に余計に手間と時間が掛かるというのが痛し痒しなところではあります。とにかく、これまでの実験で好結果なのは、C/N比を高く保ち、培地の状態を腐敗環境に決して導かないということに尽きます。その最も簡単な見極めは、前回の投稿でも解説済みではありますが、培地内で食痕を褐色化させないということです。つまり、「窒素源 = 栄養源添加 → 大型化」という安直な発想は大きな間違いの元なのです。オオクワガタが自然下で育つ腐朽材中環境を再現するには、むしろ菌糸瓶培地には炭素源がもっと豊富に必要なのです。特に、共生酵母にとってこれは重要なポイントです。まあ、これも、わたし独自の飼育論ですけれどもね。

マイセリウム

 ですので、もしも、この5 Liter瓶で飼育するとするならば、今ぐらいの発菌スタート直後状態で思い切って初令幼虫を投入しても良いのかも知れない、いや、むしろ、これくらいの浅い腐朽深度段階で投入し、腐朽菌と共生酵母と幼虫との共利共生トライアングルで徐々にビバリウム的にベストな腐朽バランス環境が瓶の中で完結できてしまうんじゃないのか? などと考えてみたりしています。菌糸体 = Myceliumなので、呼称的にはそのまま「マイセリウム」になるのでしょうか? まあ、これは強ち誤った考え方ではなくてですね、これまでの実験検証でもそれを裏付けるデータがあるんですよね、これもあくまで、ウチの環境では、のことですけれどもね。

 とにかく、まだまだ実際に試して確かめないとわからないことが多いのです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?