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所謂ワイルド「オオクワ材」というやつ

脱出口らしき孔

 これ(画上)は、クヌギが藤に巻かれて枯死し倒木化、ナメコとヒラタケによって腐朽していた材で、わたしはこの2年間、それらの子実体を採取して美味しくいただいていました(藤の蔦から出たナメコやヒラタケは風味が特に良いのです)。が、今年は何れも子実体は発生しておらず、「えー、ざんねーん……」と思っていましたらば、樹皮が捲れた辺材表面に脱出口らしき孔が空いているのを発見しました。
 また、一本材だったのが一部折れていまして、その断面(画下)を見ると、大きな古い食痕と思しき形跡が見られました。「あれ? もしかしてオオクワガタが入ってたのか?」と。産卵痕らしきものが見受けられなかったのと、キノコ採取を優先して2年間割らずに見置きしていた材だったので、盲点でした。

坑道と食痕らしき形跡も

先ずは産卵痕在りき
 わたしは基本的に産卵痕が見られない材には手を着けないことにしています。と言うのも、オオクワガタの産卵痕は辺材の表面上に痕跡としてほぼ遺っているからです。立ち枯れの場合は間違いなくそれを見つけられます。ただ、倒木の場合は産卵痕が地面側に隠れていたり、他の倒木や雑草などで見えなかったりするので、発見し辛いことがあるので厄介ではあります。がしかし、産卵痕の場所が何らかの原因で破壊されていたりさえしなければ、十中八九、オオクワガタの産卵痕は自然な
ままのカタチで確認できます。
 つまり、産卵されてから2 - 3年は物理的に——材の表面に——その痕跡が遺っているということです。この事実から、無駄に材を破壊したり、それが徒労に終わって体力を消耗しないためにも、先ず、材上の産卵痕を探し、その存在を確認してから材に手を着けることは大変理に叶っています。また、幼虫は産卵痕から食い進んで成長と共に移動して行きますので、その居処を大凡目星を付けながら材を割ってゆけますから採取の手順が早くなりますし、作業時のケアレスミスや事故などの失敗率も限りなく低くすることができます。
 要するに、オオクワガタ材の見極めとして、もしも、産卵痕がもう物理的に消えて無くなってしまっているような古い材には、コクワガタは入っていてもオオクワガタは居ませんよ、と言いたいんです。コクワガタの場合は腐朽がかなり進行して、もう崩壊寸前のような脆くなった材でも産卵していることが多いのですが、オオクワガタの場合はそういうことはまずありません。もっと腐朽深度の浅い、生木に近い硬度がある材で、しかも、乾燥気味の材を好みます。母オオクワガタにとっての産卵に適した材の絶対的条件は——白色腐朽菌が生きている材でないとダメ——ということなんです。オオクワガタを狙う場合は、ここをしっかり理解しておくべきですし、そうでないといつまでも採取の遠回りをすることになります。
 いやあしかし、何が言いたいかって、秋から冬季に掛けて山歩きしておりますと、材を無駄にタコ割りした痕跡を方々でよく見かけるんですよ。その傍らにはヒラタケの子実体をむしり取って無造作に周囲に投げ捨てられていたりするわけで……どうか、そういうのは止めてくれないかなあ、と、つい、わたしなんかは思ってしまいます。知識の無い人の所業というのは大体そういう感じで、無下に林内の至る処に斬材が遺されています。少なくとも、可食キノコの子実体は持ち帰って食すべし、と。

 さて、件の材はカミキリムシの可能性、また、オオゴキブリに殺られていることも無きにしも非ずですが、かなり太くて固まりの食痕なので、割らずともオオクワガタ材は今の時点でほぼ確定だと思います。ひょっとするとまだ3令が入っているかもしれません。もうしばらく見置きしつつ、ナメコもヒラタケも子実体発芽がない(材中の白色腐朽菌がもう死んでいる)ことを確認してから割ってみようかなと思っています。

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