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Nov 17, 22. 秋のオオクワガタ採取行記

山活再開

 実は、この夏からつい先日まで諸事情で山活ができませんでした。で、11月16日から再開しまして、16日は今年のキノコの発生状態の下見と足慣らし・身体慣らしのための入山でした。夏前に目星を付けていたポイントに行ってみると、シーズンINなのでイノシシの括り罠を仕掛けている警告があったりで踏み入れないフィールドがあり、一部探索を断念したんですが、他の幾つかのチェック・ポイントで可食キノコを採取できたりました。
 で、その際に括り罠ポイントからは1km以上は離れたまったくの別フィールド山中で大きな体躯の母イノシシと後ろに続くウリ坊に遭遇し、驚かされたんですが、その付近の探索でオオクワガタの産卵痕っぽい形状の孔の在るクヌギ倒木の端材を見つけました。が、その時、既に夕暮れでしたので、その日は見置き・温存することにして、翌日、改めて割りに行ってみたら、案の定、という採取行でした。以下、そのレポートです。

毎年連続オオクワガタ採取記録更新

 当該材はヒラタケ腐朽木で、直径約250mm、長さ約1000mmほどの折れた幹の端材で、一見、雑木林なら何処にでも転がっていそうな駄材に見えます。しかし、中身はよく腐朽された良材でした。水分少なめで、ほぼ生木に近い硬度がありました。つまり、オオクワガタが最も好む白色腐朽の産卵材の典型と言える材だと思います。
 一昨日、InstagramでUPした動画では3令幼虫の♂・♀、1頭づつと♂の新成虫でしたが、実は、一番最初に出たのは、わたしのいつものプライオリティー・ワン狙いの初令幼虫だったんです。

京都市産ワイルド・オオクワガタ初令幼虫

 この初令幼虫の頭幅は2.5mmでしたので、オオクワガタの♂と思われます。ですので、この時点でオオクワガタ材確定だということです。ならば、ということで、まだ初令か2令が出てくるだろうと踏んで、引き続き本割りに入ったのですが……。

ワイルド・オオクワガタ3令幼虫の食痕

 直ぐにでっかい食痕が現れて、それらが重なっており、どんどん芯材付近まで続いていましたので、「あらら、こりゃ3令だわ……」と。

食痕に窓が空くと……

 慎重に割り進めてゆくと、食痕にポコっと小さな孔が空き、中を覗くと大きな頭の3令幼虫が居ました。引っ張り出すとかなり大きく成長した♂でした。これまで採取した中でも最大級サイズでした。

京都市産ワイルド・オオクワガタ♂3令幼虫

 ということは、この3令幼虫の大きさからして2年めの越冬に入る前と考えられますので、先の初令とは別親による種ということになります。つまり、二世代産卵材ということです。がしかし、これはわたしのこれまでの経験上、オオクワガタ材ではよくあることで、産卵に適した良材には多数の♀が、それも複数年に渡って産卵に来るという事実を多々観察しており、今回も同じ事例ということで、これはまったく稀なケースではありません。
 さて、食痕が交錯しているっぽかったので、割り進めてゆくと、またしても小さな孔がポコっと。今度はこれまたワイルドにしては大きめな3令♀でした。これは、おそらく先出の♂と同腹兄妹でしょう。

京都市産ワイルド・オオクワガタ♀3令幼虫

 まだ別の食痕が在るので追ってゆくと、またしても孔が空いたと思ったら、黒いお尻と足がもぞもぞ……うわあ、オオゴキかよ!……と思って、その場で腰を引きつつ見ていると、お尻からリバースで出てきたのは、なんと、♂の新成虫でした!

蛹室内で羽化後に冬眠中だった京都市産ワイルド・オオクワガタ♂新成虫

 冬眠前の体勢だったのを掘り出してしまった、これは申し訳ない。
 この新成虫は3令たちと同腹の1年化羽化だったのか、それよりも前シーズンに産卵された別親種なのか、そこのところは不明ですね。……ということは、3世代材の可能性も出てきたということになります。

ワイルド・オオクワガタ♂新成虫の居た蛹室とその3令幼虫時の食痕

 もう一つ、2令っぽい太さの食痕が在ったのですが、途中で白くなって消えてましたので、その1頭はお亡くなりだったようでした。

家の裏庭でやるのとは作業環境が違う

 今回、不便だったのが、現場のロケーションが谷筋の斜面だったことで足場は斜めで不安定だし、割っている最中にずっとブユの大軍に襲われてまして、それで作業に集中し続けるのが大変困難だったのですよ。
 コナラ材と違い、クヌギ、アベマキ材は芯まできれいに腐朽されるので、そういう良好な腐朽材ですと芯材のど真ん中にまで到達している幼虫はまったく珍しくないです。そして、これでもやっと材の半分を割れたかどうかというところ。これくらいの比較的小さなボリュームの材でも、大人一人の手で全部割り切るには半日では無理なんです。勿論、現場の環境条件も関わります。第一、幼虫の存在を確信したら、手加減をしつつ慎重に作業を続けねばなりませんので余計に時間が掛かります。また、あまり熱中しすぎると手首も腱鞘炎ものです。鯛の塩焼きじゃないですが、反対側半分にもまだ入っているのではないかと思いますので、後日、また確かめに行ってひっくり返してみます。

ワイルド・オオクワガタ採取のセオリーとは?

 最近、他の材割り採取者のYouTube動画を観たのですが、なんか、大袈裟すぎないか? て、正直、思いました。オオクワガタ採取を根性論で語られてもわたしにはまったく響くものがないと言いますか、相手が誰かは不明なんですが、何か敵対視している人が居るのか、その不明人物に対して動画内で罵声を浴びせていたりするので、その採取に対する姿勢というか、哲学が少々稚拙な気がします。
 また、「採取最速理論」とか仰いながら、「ただただ山を歩くのみ」とか……、それ、そんなのは理論でも何でもないですし、「空間を探せ」とか、いや、一本の木が立ち枯れしたら、そりゃあその樹冠分のギャップが林内にできるのは当然なんです。でも、そのギャップは林の中を歩いていて、直前にまで来なければ見えませんよ。そんなこと、実体験している本人もわかってる筈なのに、わざわざ遠回しにそういう抽象的な表現をする。語彙が少ないので表現できないのか、言説どれもが屁理屈っぽいし、と言うよりも、実績ある経験者としての自分の存在を尊大に見せたいがための採取未経験者に対する意地悪含みの言動に感じるんです。
 わたしはオオクワガタ採取行自体はそれほど大変なことだとは思わないです。だいたい、標高の高い山中にはほぼ居ないですし、低山ハイク・レベルの山行きなので、オオクワガタ・ハンター氏が仰るような体力的な大変さは然程伴わないです。例えば、わたしの地元の京都で言えば、愛宕山と比叡山が最も標高が高い山なんですが、その程度の山行きなら、おじさん・おばさんのベテラン・ハイカーさんたちなら半日で充分踏破して山頂ランチで帰って来られますし、ご近所さんなんて、犬の散歩がてらほぼ毎日登山されているくらいです(これ、事実です)。でも、オオクワガタ採取行なんてのは、それらの山頂まで上って下りてくる程のレベルじゃないです。体力的には里山散歩程度で充分遂行できると思います。YouTubeクワガタ・ハンター氏の持論は、何から何まで表現が大仰です。

絶滅危惧種と採取困難種いうバイアス

 他のクワガタ種とは違って、オオクワガタは白色腐朽菌と強力な共存関係にあると言えるかと思います。ですので、きのこの生えない林には居ません。その当該きのこは針葉樹林には少ないです。常緑樹林は微妙なところになりますが、落葉広葉樹林なら間違いなくその主な住処となります。つまり、そのような樹林帯のある程度纏まったフィールドでないと基本的にはオオクワガタは居ないです。がしかし、ヤナギ類やニレ系の樹種にも着くことは知られていますし、平地の河川敷などでも条件が揃えば充分生息地に成り得ますし、実際、そのような環境の採取実績は多数あります。何れにせよ、木ときのこ在りきです。でないと、彼らは子孫を残せないからです。がしかし、そういったポイントは、実はまだ日本国内に無数に在るんです。
 オオクワガタ採取行のすべては、採取行前の目的採取ポイントの下調べと決定に尽きると思います。未経験者であっても、少なくともスギやヒノキの植林地帯に狙いを定めて採取に行く人は居ないですよね。クワガタが好きな方でしたら最低限、それくらいの知識はお持ちだと思います。大凡、先に述べた落葉広葉樹林帯を目指す筈です。そのためには下調べは必ず必要、且つ重要です。そして、そのポイントに的を絞った段階で採取行の結果は九割方決まっていると思うんですよね。何故なら、我々、人の林内での徒歩移動可能な距離・範囲は知れていますし、当然、日中の半日という時間内では限られた範囲しか探索することはできないからです。つまり、ポイントに到着したら、もう現場で採取者ができることは極めて少ないんです。あとは、オオクワガタ♀が産卵していそうな白色腐朽材をなんとか見つけて、その材に産卵痕が在るかどうかとなります。

セオリー種明かし

 逆に言うと、幾ら実績・経験豊かななオオクワガタ・ハンター氏でも、或いは、わたしであっても、現場を闇雲に第三者に指定されての採取では結果は出せないと思います。もしも、其処が針葉樹の林だったりしたら、もう、林に入る前にお手上げです。わたしなら「すいません、此処では絶対採れません」って宣言して即降参します。
 要するに、現場での「採取最速理論」なんてのはただのはったり、詭弁です。その種を明かせば、すべてはその採取行を遡っての事前の採取ポイントの選定で既に決まっているんです。採取実績に長けている人は、どんな樹相・林分ならば大凡、オオクワガタが採取可能なのかを経験則により熟知しています。また、同様の採取者同士の情報交換などもあるでしょう。だからこそ、採取ポイント現場の選定時点で既に勝負は決しているようなものなのです。
 そして、そのような林はその殆どが二次林なんです。人類未踏の「原生林」なんていう森林はこの世には(特に日本には)存在しません。すべて過去に人の手で積極的に変革された後に放置された人工植林の姿であり、その手入れが放棄されたことにより形成された雑木林なんです。嘗ては肥料や燃料にするために人の手によって植林されていた薪炭林の成れの果てなんです。このことをよく理解するだけでも採取ポイントを絞り込むかなり大きなヒントになると思いますよ。

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