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材飼育というオプション

一度は試したくなる


 そうなんです、わたしも長年実施したかった材飼育。これまでも数回試みはしたのですが、材に菌が上手く蔓延せず、断念してました。が、今回、種菌を植菌した材の状態が良好でタイミングも良かったので、いざ実施の運びと相成りました。

生クヌギ+ウスヒラタケ


 先ず、母材は台風被害で倒木化した幹が元の、地元の里山でいただいてきた生クヌギ材です。画像のように、丁度、DAISOのパンケースにすっぽりと収まるサイズです。多くの方が試されている廃シイタケ榾木の再利用植菌材ではありません。わたしは生オガ使用と同じく、生木使用に拘りたかったのと、そもそもシイタケ材にオオクワガタが産卵することはないので、実験検証的にもあまり意味がないと思っていたからです。また、栄養的にも廃シイタケ榾木使用には以前から疑問がありました。
 その生クヌギに種菌を植菌し、そのまま約一年近く常温で安置保管していたものです。腐朽菌は、菌糸瓶飼育でも圧倒的安定度のウスヒラタケを選択しました。これまではヒラタケでトライしていたのですが、どうも菌の活力が弱いように感じていましたし、悉く上手くいきませんでした。ウスヒラタケはヒラタケに比較して常温帯での管理が大変容易なのと、ヒラタケのように温度に敏感で活性が落ちない点が優秀だと思います。実際、今回、それが功を奏して材に菌が上手く回ってくれたと思います。

ウスヒラタケ植菌生クヌギ材(オリジナル)


 ただし、材の仕上がり状態は、水分量的には少々乾燥気味になっています。しかしながら、菌糸瓶にしてもそうですが、どうもオオクワガタに最適な材の水分量は抑えめが正解なのではないか? という結論をわたし個人の見解では得つつあるこの頃です。実際、野外採取に於いても、健康な幼虫ほど水分の少なめの材に居ることが多いです。また、ほぼ乾燥したパサパサの駄材にも幼虫は問題なく存在していましたが、一方、水分が多めの材に入っていることは少ないし、そういう材中では死骸を見つけることが多い、ということがあります。なので、使用に問題ないと判断しました。

3令幼虫の羽化仕上げ用


 幼虫は初令材採取個体で、我が家でオリジナル菌糸瓶飼育後に加齢した2年化3令♂幼虫を選別しました。他の兄弟も居るんですが、何故かこの個体は菌糸瓶での落ち着きがよろしくなく、幾ら瓶を交換しても直ぐに食い尽くすを繰り返していました。ならば、ということで、この幼虫に材を試していただこう、と考えた次第です。投入前体重は20.0gでした。

いざ投入


 今回は、材のど真ん中にドリルで導入孔を浅めに空けたところに、幼虫の頭だけを埋めるようにして軽く置き、あとは幼虫自身に任せる、という、わたしのいつもの菌糸瓶交換時の投入方法に順じました。この方法のメリットは、幼虫が培地なり材を気に入らなければ、自分では積極的に潜ろうとはしないので、それによって適材かどうかを単純明快に判断できる、という一点に尽きます。
 菌は回っていると判断しましたが、ドリルで孔を空けてみますと、水分量少なめなだけに材にはまだ結構な硬度があります。しかし、野外での材割り採取経験上、ワイルド・オオクワガタの好む腐朽材の硬さは熟知しているつもりです。また、少々硬めでないと羽化用として材質を長期間保てない懸念もあります。
 何れにせよ、幼虫が穿孔して坑道を掘って中に安住してくれるかどうか、これ次第ですので、実際に投入してみることとします。

材に穿孔する3令オオクワガタ幼虫


 幼虫は嫌がらずに顎で材を砕き始めました。材質はO.K.のようです。あとは、自然に材中にまで潜っていってもらうのをじっくり見守るだけです。

雑感&まとめ


 おそらく、幼虫が材中に収まり、居食いを始めだすと、腐朽菌(ウスヒラタケ)も活性が上がると考えています。それは、幼虫の糞によって窒素還元されるようになるからです。そうすると、菌が活発に呼吸することで空気中から水分を吸収、それによって材中には代謝水が発生し、自然に良好な水分量が材中に保たれるのではないかとわたしは考えています。
 材飼育のメリットは、羽化不全等の可能性が低いので、美しい体躯の個体が出易い、と言われていますよね。これについては自然の羽化状態に最も近い形態なので間違いないでしょう。あとは、やはり、材自体の質的問題です。良材とそうでない材でどう違いに現れるのか? 今回使用の生クヌギ+ウスヒラタケ材による効果のほどは? 結果報告は来年の夏以降、或いは、再来年の初夏頃の長丁場です。

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追記:

 1日経過して様子を見たところ、幼虫はまだ材中に穿孔できていませんでした。
これは何かおかしいな、と思い、念のために幼虫を取り出して材を確認したところ、どうやら芯がまだ硬いようで、材を顎で削り切れないようで梃子摺っているように感じました。このままでは幼虫の負担になると判断し、残念ですが材飼育は中止して菌糸瓶に投入し直すことにしました。もしも、ご期待いただいた方が居られましたらすいません。
 いやあ、植菌材を生木から作るのは難しいです。最低でも2年は掛かるかもです。

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