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埼玉に住む、しがないの40代サラリーマン。 どうでもよい日常から得た心象と思いついた戯…

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埼玉に住む、しがないの40代サラリーマン。 どうでもよい日常から得た心象と思いついた戯言を虚実織り交ぜてクドクド書く。 LINEでの記事更新通知 http://nav.cx/7bX8AYM

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  • 四十五歳中央アジア紀行

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    40歳。しがないのサラリーマン。双子の兄の結婚式に乗じて旅する。ヨーロッパとイスラムがグラデーションのように混じり合い、時にぶつかる辺りへ。

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 二◯二四年の冬の朝である。  灰色の重い雲が垂れており、昼から雪が降ってくるらしい。大雪になるかもしれないという。  彼は朝のうちにいろいろ整えなければならないと断固決意し、家から十分ほどのコンビニで仕事中のお供として森永のラムネとコカ・コーラ500ml缶を、そして雪見酒と勇んでCOEDOビールとスコッチウィスキーハイボール、7プレミアム ヨセミテ・ロード 白250mlの缶を買い求め、それらの入ったビニール袋ブンブン振りながら歩いていた。  住宅地の中を流れる何も変哲もない

    • いつものサンクチュアリ

       カタカタカタ、ターン!  カタカタカタ、ターン!  エアコンの、ついている時は気に留めず、消すとその存在に気づく無感覚の音を超えて、フロアにキーボードを叩く音が響く。  社員が増えたせいなのか、月の最低出社率のルールを引き上げんとする経営による無慈悲な野心の実現に向けた布石のためか、これまで2フロアだったオフィススペースが今月から拡張し、3フロアとなった。  新しいフロアに固定席はなく、全てフリーアドレス席。個人の荷物をしまうロッカーがここにはないせいなのか、最低限の設備

      • アイドル

         負谷氏の出席する数人しかいない部署の朝会の時間は延びていた。  アイドルと組織論やマーケティング論を結びつけて、話は盛り上がっている。  口を開くのはSEVENTEENという韓国人アイドルグループの推し活をしている部長であり、入社の時は関ジャニ∞を推して全身オレンジに染め上げ、今はSnow Manというグループを推している行田さんである。その二人がいなければ、負谷氏は両グループの名前すら覚えていなかったという。 「男子二人はポカーンとしているけど、なんか喋りなさいよ。」  

        • 家族は武蔵野線に乗ってディズニーランドへ行き、私は野岩鉄道6050型に乗って檜枝岐村へ行く

          「パニック、パニック、パニック、みんなが慌ててるー」  夜明け前の春日部駅のホームに、クレヨンしんちゃんのテーマ曲を使った軽快な発車メロディが流れ、成人式後の徹夜明けなのだろう、スーツやドレスで着飾った集団がドタドタと車内に飛び込んできた。  三連休の最終日。妻と息子はスイミングスクールの友達グループとディズニーランドへ行くという。自由な一日を過ごす千載一遇の好機来たり。日帰り乗り鉄旅へ行こう。しかも、今回は思い切ってしまおうと思った。  特急サンダーバードの車窓から見る琵

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          大晦日のこころのえぐられ

           今年もあっという間で大晦日である。  年末年始休暇の前半をほぼ全て大掃除に費やし、トイレの便器にこびりついた尿臭の素を徹底的に取り除いて、ようやく私の年内のやるべきことが全て完了した。  毎年末我が家恒例の、義実家から贈られ、解凍するいなや正月を待たずの先走りおせちを家族と食い漁り、ようやく訪れた自由時間。休みに入って半径五キロ程度しか移動していなかったので、どこかへフラリと行こうかと思った。  あと十五分早ければ、所沢へ行き特急ラビューで秩父へ行き、秩父の酒を買って、秩

          大晦日のこころのえぐられ

          取り戻したもの、失ったもの

           取り戻したのはγ-GTPの数値がであり、失ったのは「文章を書く」という習慣であった。  一月に受けた人間ドッグで、私は衝撃を受けた。  肝臓が再検査となってしまったのである。体調に異常は感じないが、肝臓は沈黙の臓器と言われている。肝臓が悲鳴をあげた時、私の肝臓は死を迎えるのである。  これは本格的に生活習慣を変えねばならぬと決意した。  始めたのは毎日の晩酌の習慣を排除することである。もちろん無理は禁物である。  タイミングの極めて悪いことに、人間ドックの数日前に懇願さ

          取り戻したもの、失ったもの

          小田急ロマンスカーでケビるのだ

          「その髪型は実に素敵だね。まるで我が敬愛するアレクサンダー・ショルツを見ているようだ。」  私をして神と崇める浦和レッズの絶対的守護神アレクサンダー・ショルツに自身が例えられるとしたら私は有頂天になるが、女性の同僚に贈る賛辞ではないことはもちろん承知している。  強めのパーマを当ててウェーブする髪型は実に素敵で、「おっ、髪型変わったね!」と軽やかに話しかければ、おそらく円滑な社内コミュケーションの一つの風景となり得た(関係性によってはセクシャルハラスメントの可能性も捨てきれな

          小田急ロマンスカーでケビるのだ

          会社をいつ辞めてもいいように

           ここ数年間、己が職種で正社員は私一人であった。  属人的すぎて会社におけるリスクだとしばらく言われ続け、その声に押されて昨年後半から採用活動をし、思った以上に我が職種は売り手市場なのだと知り、私こそが求職者の立場になってやろうかしらと揺らぎながらも面接官を演じ続け、ようやく今年に入って少しか弱さも見える好青年を採用した。  チーム体制の安定化という目的を果たし、なおかつ私にとっては育成に成功すればいつ会社を辞めても迷惑をかけることのないというオプションを手にし、会社にとって

          会社をいつ辞めてもいいように

          ジョニー

          「ラストオーダー:21:30」  息子の通う学習塾の一階に入っているサイゼリヤのドアを開こうとして愕然とする。サイゼリヤの白ワインの口に仕上がっていた。  金曜日の夜。会社で残業して、最後まで残っていた才葉さんと石綿さんと駅へ向かう途中の町中華でたわいもない会話をしながら軽く一杯やり、餃子をつついた。  四十分ほどで散会し、二人とは逆方面の地下鉄に乗り、私は妻に「これより帰るよ」と定型文のLINEを送った。妻からはすぐに「お疲れさま」という定型のスタンプが返ってきた。  埼玉

          ジョニー

          年頭の不毛なる疲弊

          「あけましておめでとうございます」と挨拶して回るものの、私の気持ちはあまりおめでたくない。  一月二日の朝。  余っていた回転寿司の寿司をノロノロと起き、前日の我が方の実家で残飯処理係として余っていたはま寿司でテイクアウトした寿司を吐くほど食ったがための膨満感。雑煮だけを啜り、食後はスマホを見ながら皿を洗う。洗い終わり、手を拭き、スマホを持つ。薬を飲まなければならない。スマホから目を離すことなく、感覚で薬を手にし、水をごくりと飲む。  喉に少し引っ掛かりを覚える。  む?

          年頭の不毛なる疲弊

          【四十五歳中央アジア紀行3日目午前】サマルカンドへの高速鉄道アフラシャブ号 車内での出会い

          2日目の旅行記はこちら  十二月一日。  ひたすら移動する旅。歴史的にはマー・ワラー・アンナフルと呼ばれる中央アジア南部の歴史的オアシス都市であるサマルカンド、ブハラ、ヒヴァを駆け足で巡る。カザフスタン、タジキスタン、トルクメニスタンとの国境に近接するが、国境を超えることはない。首都のタシュケントからヒヴァまでおよそ一千キロ。一本の線で繋げる位置関係なので、行程に無駄がない。無駄のない人生はごめんだが、限られた日程なのだ。行程の無駄のなさは肝要である。  今日は青の都サマ

          【四十五歳中央アジア紀行3日目午前】サマルカンドへの高速鉄道アフラシャブ号 車内での出会い

          【四十五歳中央アジア紀行2日目】飛んでアルマトイ、そしてタシュケント

          1日目の旅行記はこちら  十一月三十日。四時間ほどの睡眠で目覚ましが鳴る。東横インの朝食は七時からであった。ソウル駅発8:10の仁川空港鉄道の直通列車を予約していたので、五時四十五分に起きなくてもいいはずだ。だが、私は己の睡眠欲を打倒して、激しく起床し、熱いシャワーを滝行のように猛烈に浴び、長い機内と乗り継ぎ時間に向けた機内持ち込み荷物を改めて整えて、脱兎のごとくソウルの街へと飛び出した。六時二十分のことである。  細やかな滞在であっても韓国の本格的な味を楽しみたいからであ

          【四十五歳中央アジア紀行2日目】飛んでアルマトイ、そしてタシュケント

          【四十五歳中央アジア紀行1日目】飛んでソウル

          0日目の旅行記はこちら  十一月二九日。  小学校へ登校していく息子たちとランニングに出掛けた妻を見送り、「BS世界のトップニュース」と新聞を読みながら昨日のあまりの餃子とご飯、味噌汁を食べ、洗濯機を回す。トルコ軍がシリアのクルド人勢力に対して本格攻撃を始めたというニュースに辟易とし、「羽鳥慎一モーニングショー」にチャンネルを変え、皿を洗い、掃除機をかけ始める。  掃除機の轟音の向こうに、武田修宏が森保監督を励ます会を主催したことを披露していた。全ての支払いはカズ、三浦カズ

          【四十五歳中央アジア紀行1日目】飛んでソウル

          【四十五歳中央アジア紀行 0日目】飛ばないイスタンブール

           久しぶりに出社した、九月のとある日。  ほとんどが在宅勤務のせいで閑散としたオフィス内で、私は東野出さんに話しかけた。 「妻という立場でさ、二週間くらい一人旅に出る夫ってどう思う?」  東野出さんは、業務ではほとんど絡みはないが、近しい年齢だ同じ釜の飯を食らっているので、たまに話をする。そして、二人の男の子のママということで、妻に対してそうであるように、私は東野出さんには頭が上がらない。 東野出さんは、ヘアドネーションして短くなった髪をかき上げて、言った。 「それはさあ、全

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          ムハンマド・アリーは意図して、私は意図せず

           ナポレオンによるエジプト遠征は、オスマン帝国軍の無名のアルバニア人傭兵隊長に過ぎなかったムハンマド・アリーをエジプト総督(ワーリー)として実質的な王朝を開かせしめた。  自身が権力を掌握したエジプトを強国化して、オスマン帝国から完全自立するために始めた政治、軍事、経済の近代化において障害となっていたのは、土着のマムルークであった。  マムルークとは、九世紀のアッバース朝から始まるトルコ系の奴隷兵士のことをいうが、十三世紀にマムルーク朝を建国するなど、エジプトにおいて政治的実

          ムハンマド・アリーは意図して、私は意図せず

          東京駅始発20:21発 小金井行き

          「いま、風の音がした。」  私の座る背後の、社長室前のデスクに一人座る阿藤さんの声がした。  退勤を打刻し、角ハイボールの井川遥とジムビームハイボールのローラが表裏となっている毎夏愛用している団扇を個人ロッカーにしまい、リュックを背負わんとした矢先だった。  窓際らしく、すぐそこにある窓の外を見ると、大粒の雨粒が強風によってガラスを叩いていた。  私はデキるビジネスマンの絶対条件として用意周到準備万端、鞄の中にはきちんと折り畳み傘を常備しており、デキないビジネスマンの証明とし

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