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京島の10月|27. 汁物ドリブンコミュニケーション

昨日に続いて天気の良い日。定例のオンラインミーティングを終え、月末の締め作業などをしつつ午前を過ごす。1週間分の日記を印刷して凸工所に並べた。当初は表紙を31パターン、いろんな機材や素材で作るのだと息巻いていたが、全くもって無謀な挑戦だった。日誌を毎日書くことの作業量をなめていたのだ。アイディア自体は悪くないので、この場所で作れるもののサンプルとして、時間を見つけて少しずつ増やしていきたい。

営業開始後すぐ、レーザーカッターの利用があった。何度も使ってくれている方で、素材をレーザーで加工し、製品化の準備を進めている。操作も慣れてきましたねと伝えると、でも1ヶ月も経つと忘れてしまうよねとの返し。確かにその通りである。毎月・毎週・毎日のように、デジタル工作機械に触るなんて、よほど限られた属性でしかない。自分の過ごしてきた環境の特殊性にはなかなか気づきにくいものだ。

今日は平日なので、夕方近くになると、下校中の小学生たちが表を通っていく。名前こそ知らないが、毎回3Dプリントされた大仏に興味を持つ子や、先週も工房の中でわちゃわちゃしていた子など、少しずつ記憶が重なっていく。いっそ放課後の図工室のような場所として割り切ってもいいのかもしれない。

EXPO企画のキーホルダーは好評続行中。レーザーカッターのみならず、空間内の道具や機材全般に興味を持つ子もいてありがたい。子供会用のグッズ制作に使えるかと聞かれ、それはもう、と答えた。誰もがイラレやフォトショを使えるわけではないから、その入口から丁寧にしつらえなければいけない。雑に置かれていた鳥の足や造形サンプルなども、いつの間にか綺麗に並べてもらえていた。


日が暮れて向かったヴァイオリンの時報は、金曜日にも関わらず大盛況。地面には子供たちがチョークで書いた文字や絵が広がり、凸のようなマークも見えた。幸せな勘違いだったとしても、それくらいの日数は過ごせているかもなと思う。

久しぶりに会う友人を連れて凸工所を案内すると、何かわからないけどやりたい!といった反応。その何かをさっと察知し、相談やワークショップという形で差し出すのが、工房長としての役目なのだろう。時には機材を見せるだけでスパークすることもあるようで、ふらりと訪れ、爆速でステッカーを作っていった大将はとてもニコニコしていた。

凸工所を閉めて、完成したばかりの海の家に行くと、リッツパーティーの現場がさらに進化した居心地のいい「場所」が仕上がっていた。専用の屋台に並ぶ器を買うと、それを自分で洗ってから豚汁を振る舞ってもらえるというおまけ付き。

芋煮、きのこ汁、豚汁。今週は汁物を振る舞われてばかりで可笑しい。でも、汁物をいただいて嫌な気分にはならない。一杯どうぞの一言は、もてなし、振る舞い、その先に続く関係作りの良い初手になるのかもしれない。

別の店でビールとワインを一杯ずつ飲んで、毎日ノルマにしている1万歩を達成するために、自転車を押しながら駅前をウロウロ歩く。一日中たくさんの人が周りにいたので、一人の夜道が静かに感じられた。

このnoteは「すみだ向島EXPO2023」内の企画、日誌「京島の10月」として、淺野義弘(京島共同凸工所)によって書かれているものです。

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