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ある女子大生が考現学に出会う話(あるいは2010年代の日本のミュージックシーンについて)

これは体験記というか備忘録というか思い出話であって、決して考現学をアカデミックな視線で書いたものではない。ちょっとユニークな出会いが続いた結果、ある一人の女子大生が今和次郎という人物にたどり着いた物語である。

たとえば、平成ライダーを観ていた子供が原作者・石ノ森章太郎の存在に興味を持ち、トキワ荘、赤塚不二夫、藤子・F・不二雄、はたまた当時を知る漫画編集者の名前まで覚えてしまう、といったようなことがあるだろう。そんなふうにしてわたしは今和次郎、というか考現学に興味を持った。

本題に入る前に少し。タイトルを「ある大学生が考現学に出会う話」としてもよかった。本来のタイトルから読者が想像したのは若くてキラキラした「女子大生」がチョット時代遅れでヘンクツな「考現学」という学問に出会う意外性、みたいな話ではないだろうか。それは少し違う。わたしが当時「女子大生」として「考現学」に出会ったというのは本当である。それはなんというか、「女子大生的に」とか「女子大生っぽいルートで」という意味である。このニュアンスは本題に入ればすぐ伝わるだろう。

ということで本題......。
わたしの青春(2010年代)は女性アイドルグループ〈AKB48〉と密接に結びついている。そのピークは中学校時代だったような気がして、例を挙げるならば、あっちゃんと優子ちゃんどっち派?という話題で盛り上がる、駄菓子屋のくじで当たったこじはるの下敷きをまゆゆのものと友人に交換してもらう、学祭のパフォーマンスで彼女たちの楽曲をコピーする、というようなものである。ちなみにわたしの中学校在学期間は2010年度から2012年度で、この三年間に発売された彼女たちのシングルは「ポニーテールとシュシュ」「ヘビーローテーション」「Everyday、カチューシャ」「フライングゲット」「真夏のSounds good!」など。

AKB48は男の子のためだけの存在ではなくて女の子にもひらかれた存在だった。すくなくともわたしが育った地方都市の公立中学校ではそうだった。AKB48はわたしの情操教育にかなりの影響を与えた。そして次にキーワードとして挙げたいのは〈制服〉で、この言葉はスクールユニフォームとほとんど同義だとここでは思ってもらいたい。AKB48は女性アイドルグループのコスチュームが制服をモチーフにしていることを印象づけた。これは48Gだけの事例ではなく、2011年にデビューした乃木坂46を筆頭とした坂道シリーズのメンバーたちも、CDシングルが発売されるごとにユニフォームとしての制服を新調している。今や女性アイドルと制服は切っても切れない関係なのである。

中学時代より自分自身が個としての存在が問われるようになった高校時代、もはや休憩時間にAKB48の話題で盛り上がるような女の子たちはいなかった。女子も男子も邦ロックのバンドやK-POPグループをミュージックプレイヤーで聴いていた。みんな違う音楽をそれぞれの小型プレイヤーに集めていた。それでもなお、わたしは女性アイドルグループを追いかけ続けた。その消費行動はすこし大人っぽくはなっていたけれど(彼女たちに関する有識者のコラムを読んだり、当時流行ったドキュメンタリーの中の素の彼女たちに胸を熱くしたり)。そして相変わらず、わたしは女性アイドルの〈制服〉にこだわり続け、偏愛を極めていった。

【まとめ】考現学に辿り着くまでの道のり
〈AKB48〉→〈制服〉→???→〈考現学〉

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