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『中村仲蔵』『畔倉重四郎』神田伯山

「すごい面白かった、というか感動した」とこの動画を勧めた人からLINEが来た。

たまたまYouTubeで宮藤官九郎と荒川良々が神田伯山に講談を習う動画が流れてきた。神田伯山の名前や評判、ラジオを知っていたが講談は見たことがないので、動画を見てみることにした。見ているうちに神田伯山が「特殊」だと感じる。うまく言葉にできないが、「なんだこれ」とか「只者ではない」とかそういう気持ちである。そこで荒川良々がYouTubeで見たという『なかむらなかぞう』を見てみることにした。

『中村仲蔵』は江戸時代の歌舞伎役者。歌舞伎の名門出身ではないが、素晴らしい役者で、大看板になったという男である。これまで退屈だと思われていた幕が、彼の工夫で解釈が変わり、誰も見たことがないような舞台になったいう。芸を志す者なら「こんな風になりたい」と思うような、客なら「そんな舞台を見せてくれよ」と思うようなお話である。私は神田伯山の意気込み、そして彼を応援しているお客さんを勝手に感じて胸アツになった。男の子がヒーローにあこがれるような気持ち、混じりっけのないキラキラした気持ちに触れるようだ。

あっという間に40分が過ぎ、私は誰もいない部屋でiPadに向かって拍手をした。話だけでこんなに人を夢中にさせるなんて。舞台装置もなく、一人の男が話すだけだから画面を見なくていいはずなのに、彼の一挙一動に目が釘付けになった。面白い。だけどそれだけじゃない。彼自身の見事な技を感じる。そして古くから色々な人によって話されてきて磨かれてきた艶のようなものも感じる。何なの、これは。これを一言にまとめるとしたらLINEで届いたように「感動した」という言葉もあてはまる。

衝撃的だったので『中村仲蔵』のYouTubeリンクをFacebookに張り付けて「面白かった」と投稿した。そこで「これもお時間があるときに」とMさんが紹介してくれたのが『畔倉重四郎』である。2020年1月に、5日間にわたって講演された全19幕がYouTubeで公開されている。(最後の19幕だけはA日程、B日程の2種類が公開されている。この違いも実に面白い)Mさんに勧められなかったら、あまりの長さに見ずに諦めていただろう。だけど見てよかった。すべて見るだけの価値がある。

気に入らないヤツ、邪魔なヤツは全員殺すという『畔倉重四郎』は大悪党。江戸の名奉行 大岡越前守がどうしても許せなかったという3人の悪党のうちの一人だ。そんな畔倉がどのように悪事に手を染めるようになったかから始まり、積み重ねた悪事、そして大岡越前との対決までを含む大長編。そこに人殺しも人情も艶も捕り物も詰まっている。毎日数幕ずつ見るのが楽しい。そして最後に大きなメッセージがあって、私はふと自分を振り返ってしまう。実に見事。こんなにすごい芸がYouTubeでただでいつでも見られるなんて。日本語ネイティブで本当によかった。小さなころに時代劇を見ておいてよかった。彼の話で、自分の頭の中に江戸の町が再現され、その中で登場人物が暴れまくる。ああ、快感。

まだ神田伯山を見たことがない人は、ぜひともまず『中村仲蔵』を見てほしい。新しい世界に出会えるはず。どんな気分になるだろう。いや~生で見たい。

映画・動画20 『中村仲蔵』『畔倉重四郎』神田伯山

#神田伯山 #講談 #中村仲蔵 #畔倉重四郎

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