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『佐野洋子対談集 人生のきほん』佐野洋子 西原理恵子 リリー・フランキー

前回は1937年生まれ、上海育ちの桐島洋子さん。今回の洋子さんは1938年北京生まれ、『百万回生きたねこ』を描いた佐野洋子さん。佐野洋子、西原理恵子、リリー・フランキーというすごいメンツの本を図書館で見つけたので読んでみた。三人は武蔵野美術大学の出身らしい。

佐野洋子さんの本を何冊も読んだことはないけれど、彼女がワイルドで味わい深い人だということはなんとなく知っている。余命2年と宣告されて『死ぬ気まんまん』なんて本、普通の人は書かない。7人兄弟の長女として北京で生まれるも、兄弟のうち3人は幼くして死去。4歳の時に繋ごうとした手を、舌打ちして振りほどかれてから母とのきつい関係が始まる。

そんな彼女が、高知の厳しい環境で育ち、エロ本のカットから仕事を始め、戦場カメラマンでアル中の元夫を看取った西原理恵子さんと対談。生まれや育ち、男、結婚、離婚、仕事、子育てについてが語られる。大変濃厚。相当波乱万丈でタフな環境を乗り越えてきた2人が「生まれ変わったらまた女がいいよね」というのはとても深い。出産、子育てってやっぱりすごい経験だよね、という話もしているので、子供のいるお母さんたちにすごく響くんじゃないかと思う。

第2部は佐野さんと、彼女が小説『東京タワー』に感銘を受けて実現したというリリーさんの対談。お母さんと確執があった佐野さんが、対談の途中でリリーさんに言った言葉は「あなた、十分にお母さんに愛されたって感じがしているでしょう?」これもなぁ、深い。リリーさんとの対談は2回にわたって行われるはずが、2回目は佐野さんの体調不良により実現せず亡くなってしまった。テーマは「エロス」だったそう。読みたかった!!! 本にはタバコを燻らせながら話す佐野洋子さんの写真があるんだけれど、そのかっこいいこと。彼女に限らずこのメンツは濁の中で飲み込まれることなく、智恵を蓄え、何者にも汚されない清が研ぎ出されてきた、そんな感じがする。しぶい。

107 佐野洋子対談集 人生のきほん


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