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マックイーン:モードの反逆児

失業保険で初コレクション、そして自らのブランドとジバンシィのデザイナーを務め、自殺したアレクサンダー・マックイーンのドキュメンタリー。私が彼の服で覚えているのは、円錐状の白いワンピースを着た女が回転台に乗って回っていて、両脇から2台の水鉄砲のようなロボットがインクを出すと、白いワンピースに模様が吹き付けられる、というもの。もちろん映画にもでてきた、この「No.13」は1999年の春夏コレクション。おそらく私はテレビの「ファッション通信」で見たのだと思う。20年経っても忘れないファッションなんてほかに私にはあるだろうか。

あらすじを平たく言えば、彼が恐ろしく素晴らしいコレクションを発表し、商業的成功を収めながら、どんどん病んでいく、という話。コレクションは犯された直後を思わせる破れた服たち、精神病院の病室を模したセット、ケイト・モスのホログラムなど、圧倒的。なんであんなことを思いつくんだろう。なんであんなに頭の中をぶれなく三次元にして人に伝えられるんだろう。”Just Genius”と誰かが言っていたが、本当に天才。私が印象的だったのは2回目のコレクション(1995)の時、ランウェイの下でカメラを構えるカメラマンの表情。熱狂ってこういう顔をいうんだな、というイってる顔をしているのだ。あんな人たちを生み出してしまったら、途中で辞めることなんかできやしない。

見ている間に飽きたり、変に感傷的にさせられたり、憶測を押し付けられることもなく、彼のファッションや生き様に引き込まれていくのでとても良いドキュメンタリーだと思う。私は10代の時にテレビで「ファッション通信」を食い入るように毎週見ていたのだが、今回この映画を味わい深く見られたのはその時の遺産のおかげ。5年くらいテレビのない生活をしてきたが、また「ファッション通信」を見るためにテレビを買おうと思った。だってこんなすごいものがまた生まれているかもしれないから。

映画14 マックイーン:モードの反逆児


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