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温かい本屋

この本屋は温度がある。「温かい」。

会社から30分くらい歩けばかもめブックスに行けると気づいたので、寒さが厳しくない日に行ってみることにした。確かラカグの向かい。飯田橋駅の方から登ったら、思っていた以上に坂の上にあった。

お店に入って入って思ったのは「人がたくさんいる」ということ。イベントでもない限り、「人がたくさんいる」という感想を本屋さんで感じたことはなかったように思う。ここでは、ぽつんぽつんではない程のお客さんが本棚の間に存在する。もちろん人でギュウギュウということはなく、移動もしやすくて決して不快ではない。そして本のセレクト、組み合わせを見て感じる。「あれ?温かい。」なんとなく選んだ人の手のぬくもりがわかるような品揃え。

好きな本屋はいくつかある。例えば外苑前のBook Club KAIと西荻窪のナワ・プラサード。いずれも精神世界やボディワークなどを中心にしたようなラインナップ。『ネイティブアメリカンの教え』や野口晴哉シリーズがありそうなお店。(実際にそれらが今販売されているかは知らない。)Book Club KAIは地下にお店があることもあって、思想や自分の内側に深く深く潜っていくようなお店。一時期、金曜の夜、会社帰りに寄っては、荷物を置かせてもらって端っこの棚から背表紙をスキャンするように見ていたことがある。ある友人はここを「サンクチュアリ」と称した。なんて秀逸な表現。一方、西荻窪 ナワプラサードはもっとEarthyな感じ。中央線文化の重要な一部を担っている気がする。素材でいうとBook Club KAIが石なら、ナワプラサードは土。どうだろう?

元に戻って神楽坂のかもめブックス。ここは温度があるように感じる。機械で作られたコンビニのおにぎりじゃなくて、手のひらで握られたおむすびみたいに。ネットで検索した情報じゃなくて、人の言葉で語られたお話みたいに。活字が多いほうの本(小説やエッセイとか)もそうだけど、特に「うわー!」と思ったのが漫画のコーナー。子供向けではなく、完全に大人向け。戦闘ものなどではなくて、『ちひろさん』(安田 弘之)はじめ、人の気持ちをほこっとさせるようなラインナップなのだ。私の趣味と似ていて、中身を知っている本が多いかもしれない。この棚を作った人、私と話が合う!というか好きになっちゃう。

「はーすごい、たまんないなあ」と思って気が付くと手に二冊。そして、地元の本屋にもあるだろう漫画の新刊をみつけた。「私、ここの本屋さんにお金を払いたい」と思ってそれも併せて、三冊をレジに運んだ。お店にたくさんいた人たちは同じ気持ちなんじゃないかな。また行く。

かもめブックス
http://kamomebooks.jp/

同じく神楽坂でぶらさがっていた赤ちゃんの靴下。
これも「温かい」。

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