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『たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング』西口一希

なんて鮮やかで気持ちがよくなる本。「従業員や部下に夢を見させることができる」というのは良い社長や上司の必須条件だと思う。もちろんそれが地に足がついていて実績を伴わないと意味がないのだけど。この本は「その仮説が当たって、商品がヒットしたらさぞかし楽しいだろうなーーー!」という具体的な成功事例が随所に盛り込まれていて、サラリーマン立志伝やっちゃう?みたいな気分にならないこともない。

仕事で丸投げ無茶ぶりが降ってきて途方に暮れていたところにTwitterで流れてきたのがこちら。著者の西口さんはP&G、ロート製薬、ロクシタン、ニュースアプリの「スマートニュース」で目覚ましい成果を出したマーケティングの人で、今ではコンサルをされているらしい。どんなスーパーマンだ。Amazonで調べたら、ベストセラーだというし、買ってみた。

読んでみたら実に見事だった。見開きの2ページで、5か所くらいハイライトしてしまう。ロジックに飛躍がないから納得しかない。ステップ1で構築した概念をステップ2で新しい概念を加えながら再度説明・・・と繰り返していくから、彼が言いたいことが、ページを追うごとに、じわじわみっちりとしみ込んでくる。「アイデア=独自性+便益」「アイデアはプロダクトアイデアとコミュニケーションアイデア」・・・読み終える頃にはこういった概念がしっかり頭に入っている。ではそういった概念をどうマーケティングに活かしていくのか。顧客を簡単な質問でセグメント化し、そのセグメントの中の「1人」を深堀りして・・・というメソッド。学生でもできそうなシンプルなやり方。

目の前に、やればできるけど面倒くさいことができたりすると「業界違うし~」とできない理由を上げたくなるもの。そういうところも水口さんは逃さない。彼はスマートニュースにヘッドハントされたときに、社外からこのメソッドを利用し、スマートニュースの分析をやってのける。ロジックとメソッドがわかったところで「具体的にどうやってやったのかわからないよ」といちゃもんをつけたくなる人には、スマートニュース時代に行った調査と実行の章が。具体的にどのような設問で、どのように他社比較で分析したか、それをどう実行、検証したかが記されている。「きれいごとばかり言われてもリアリティがないよ」という場合には具体的なきっつい失敗のお話が。これでもかと先回りして反論する余地がつぶされている。おそろしい。

頭良さそうすぎて怖い・・・と思っていたら、「おわりに」で水口さんが読者として具体的に設定した「ある人」のことが書いてあった。そうか、この人も人間なんだなと思えた。さて、次は私が仕事に活かす番。100%再現できなかったとしても、多分ある程度面白い結果が出ると思う。そのぐらいシンプルで再現性、効果的なメソッドだと思う。上司に「そんなこと求めてないんだけど」と一蹴されそうな気がするんだけど、まあ、いっちょやってみてダメならそこまでってことかな。

111 たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング


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