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『アフターデジタル オフラインのない時代に生き残る』 藤井保文・尾原和啓

私が3年考えても、というかもっと考えても、残念だけどこの本に出てくるアイデアを思い浮かばない。でも、中国やエストニアといった外国でこのアイデアは実現されて普通の人たちが使っている。「やっば~遅れてる、私やばい、日本やばい」と恐怖心が沸き上がるも、読み進めるうちに「まあそういう流れになるよな」とフラットな気持ちになり、「中国すごいなあ、アリババすごいなあ、頭のいい人たちがいるもんだなあ」と尊敬の念とちょっとワクワクが芽生えた。Amazonのベストセラー。

エストニアに行くと力士の把瑠都さんの資産や納税額、土地の登記、登録している免許といった情報を誰でも見ることができる。把瑠都さんは誰が自分の情報にアクセスしたかがわかる。強盗のようなことが起きたら、検索して所持金がいきなり増えている人を探せばいい。私はそんなことができるなんて考えたこともなかった。でも、きっとこれからそうなっていくだろう。

本著のタイトルの「アフターデジタル」について。日本でもオフラインがオンラインになるという動きがだいぶ一般的になってきた。例えば、リアル本屋とオンライン書店。紙の本(リアル)が電子書籍(デジタル)へと媒体が変わる。リアルとデジタルが分かれており、リアルをデジタル化するという考え方だ。(O2O, Offline to Online) アフターデジタルではデジタルの世界の中にリアルが内包される。(OMO, Online Merges with Offline) 例えば電子決済で買った本はリアル書店で買ってもオンライン書店で買っても、すべて購買行動がデジタル情報として取得される。企業はユーザー情報を蓄積し組み合わせ、属性とライフスタイル、位置情報などを加味したりしながら消費者に最適な製品やサービスを提供する。消費者はその製品やサービスをリアルでもデジタルでも状況に合わせて便利な形で享受する。企業は情報を集め活用しサービスを改善するかというサイクルをどれだけ回せるかが、生き残りの鍵となる。(・・・と私は理解したんだけど、この理解で大丈夫だよね?)

そういうことがレンタル自転車やタクシー、保険、信用情報などで実践されているのが中国。中国には無人コンビニがあるそうだが、これは無人化によるコンビニの収益UPではなく、そこでデータを集めることが目的だという。アリババでは2006年に構想が始まり、今ではエコシステムを作る方法論まで確立しているそうだ。日本では根付いてさえいない概念が、もう数々の実証を終えて体系化されている。呆然。

本著には、そういった中国の事例やコンセプトをどう日本企業に落とし込んでいくかといった情報も盛り込まれている。個人的に面白かったのは、ヨーロッパと中国におけるデータに関する価値観への違い。業務でちょっと関わったGDPR(EU一般データ保護規則)の背景が理解できた。日本の個人情報保護法はどうなっていくんだろう。これからの時代、データを集めること、分析すること、活用することが、ことさら重要になるらしい。だからデータサイエンティストが話題になっているんだな・・・ということもやっとわかって、ちょっと賢くなった。

面白かったけれど、本という媒体に載っている時点で既に情報は遅いんだろう。できれば一次情報としてこういうことを感じられる環境に身を置きたいとも思った。やっぱり新しい情報は面白いもの。

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