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割れた顎が教えてくれた事(大池ニキ)

「いや~、小さい頃ってよくケガするじゃないですか~」
軽快に話始める大池氏は、自慢の胸筋を交互に揺らしながら、
何故か怪我の話題を嬉しそうに語り出した。

「僕ね、幼稚園の時2回顎割ってるんすよ」
けつあご・・・というわけでもないが、その鍛え抜かれた肉体からは、
いつ顎が割れても大丈夫という自信がみなぎっていた。


年少の時だったかな、幼稚園で遠足に行ったんですよ
そう、浅草寺幼稚園、わかります?
浅草寺幼稚園の前て石畳なんですよね。
その石畳を、男女で手をつないで歩きながら出発する。
ちゃんと整列して歩いていくんだけど、まあ年少ですからね、
いろんなものに興味が移ってちょっとずつ列が乱れて行く。
ふと前を見ると、さっきまで手の届くところにいた前を歩く男の子が、
はるか先を歩いていくのが見えた。
「やばい!追い付かなきゃ!!」
急いで駆け出したその刹那、僕はまだ女の子の手を放していなかった事に気づいた。
「きゃっ!!」腕を引っ張られ声を上げる女の子、
当然ですが、僕も同じく腕を引っ張られた。
そして、盛大に転んだんですよ。
「ダーンッ」って
もう目の前に火花が飛んで、顎がすごく熱くてぬるぬるしている。
石畳に打ち付けられた顎はパックリ割れて、
真っ赤な血がどくどく流れていた。
「あの子は大丈夫か!?」血まみれの顎を左手で押さえて振り返ると、
手をつないでいた女の子も転んでいたが大丈夫そうだった。
よかった。。。
そう思ったとたん、急に顎に激痛が戻ってきた。
顎に心臓が出来たみたいに痛みが響き、
見送りに来ていた母親がそのまま僕を病院に連れて行った。
2針縫った。

あの頃からかな、遠足って聞いてもあまりワクワクしなくて、
白い病院の待合室と、消毒液の匂いばかり頭に浮かんでしまうようになったのは。

第一部 完


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