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【前編】stand.fmに見るインフルエンサー2.0の台頭

2020年、必然的なテクノロジーの進歩と、偶然的な社会変化が密接に絡み合い、SNS市場には新しい市場が誕生しつつある。

今回は、stand.fmを始めとする音声コミュニケーションツールがユーザー心理に与えた影響を紐解く事で、新時代のインフルエンサー、(仮に「インフルエンサー2.0」と呼ぶ)の台頭についての個人的見解をメモする。

本論は後編にて述べるが、前提知識が無い場合は前編で簡単に説明します。

1.歴史


【要約】
「可処分時間が多いコンテンツ」に「個人最適化された広告」を行うという歴史

2000年以前、影響力とは=テレビ、新聞、雑誌にて取り上げられる事の多い所謂 芸能人のみが持つ力だった。情報発信媒体が限定かつ固定化され、そもそも何かしらにおいて秀でた才能を持つ人を知る事が出来なかったからだ。

この状況は2000年代、インターネットの台頭で次のフェーズへ移行する。
90年代に世の中に徐々に浸透し始めたインターネットは、当初ポータルサイトに集客を行うようなビジネスが主流であり、一部の趣味の人が利用するにとどまっていた。
2000年代、検索連動型広告と結びついた事により、インターネット広告ビジネスが勃興し、稼げるインターネットへと変貌をとげた。多くの企業が参入し、リプレースの必要ない市場で縦横無尽に面を取りに行った時代だ。
googleが切り開いたこの広告市場は、従来の広告と全く異なる次世代広告として革命をおこす。

全員に同じ広告を見せる ⇒ 個人に最適化された広告を見せる

2000年以降この流れが加速し、いかに個人最適化率をあげていくのか、購入コンバージョンを高くするのか、というベクトルで進歩が進む。
この流れは今も変わっていないが、WEBメディアの主流が、ホームページからブログになり、SNSになり動画へと変化していく過程で、それぞれのWEB媒体においてより効果的な手法が選ばれてきた。

そして、youtube、tiktok、Netflixといった、隆盛を誇る動画コンテンツに対する広告手法は未熟ながらも先が見えだしている。

そして、ポスト動画コンテンツとなりうるWEBコンテンツの種が2020年、芽吹きつつある。

2.ポスト動画コンテンツ

要約 2020年まではコンテンツリッチ至上主義だった

WEB上でのコミュニケーションは、掲示板→ブログ→SNS と発展し、コンテンツは、テキスト→写真→動画へという流れで進んできた。これは、下記3つの要因からよりコンテンツリッチな方向に進んだごく自然的な流れだ。

【コンテンツリッチ至上主義の要因】
1.インターネットの出現(場所と時間の制約から解放された)
2.回線速度の向上(ブロードバンドの普及)
3.個人端末の所有(スマホの普及)

2010年以降、技術の進歩により、コンテンツの大幅な質向上が可能となり、技術での殴り合いが横行した。高画質、速いスピード、端的な内容、これが個人レベルでも可能となった。結果、SNS×動画 というコンテンツが隆盛を誇る。

ここで難しい点は、「SNS×動画」というコンテンツが、私達が求めていた終着点だという事だ。発信する情報量の最大化を目指すなら動画が一番だ。
(情報密度の最大化を目的とする場合はテキストだろうが、総合的な情報交換において現実の次に情報量が多いのは動画だ)
そして、コミュニケーション効率が最も高いツールは現状SNSだろう。ネットワーク化された個人発信に対し、即時性のあるやりとりが出来るのだから、これ以上のサービスはない。上記2点を理由に、「SNS×動画」というコンテンツが、私達が求めていた終着点となっており、IT界隈では2019年の段階でWEBサービスは出尽くした感が蔓延していた。

3.コロナによる強制的な社会変化


要約 2021年から、コンテンツプアの存在感が増す

ところが、2020年状況が一変する。新型コロナウイルス感染症の拡大により、2020年以前の前提条件が瓦解し、新しいルールが出来てしまった。これにより、人々がインターネットに求めるサービスも変化しはじめる。

2019年、出がらしのお茶にお湯を注いで薄いお茶を啜っていたIT業界は、2020年、突如出現した新しい茶葉に飛びつき、お湯が沸くのも待てずに水を注いで新しいお茶をバンバン入れだした。

新しいルールとは、コンテンツリッチの真逆、コンテンツプアの台頭である。素人臭さ、へたくそな編集、特徴的な話し方といった、旧来のネガティブ要素が全て強みになるというものだ。そして、コンテンツプアの台頭要因は、一人の時間の増加が大きな要因である。
 2019年以前もコンテンツプアは存在した。それは仲の良い友達との過ごす「無駄な時間」を代表とする、学びの無い楽しい時間というコンテンツだ。
この市場はめちゃくちゃでかい。しかし参入障壁の非常に高い市場だった。

2020年、コロナによってこの市場が急に解放された。

市場は開放されたが、これまでコンテンツリッチを目指していた情報発信者は、「情報を発信しない」事がめちゃくちゃ苦手だったため、この市場で存在感を強めたのはこれまで情報発信をしてこなかった「普通のおしゃべり好き」達だ。
そして、コンテンツプアな「普通のおしゃべり好き」をエンパワーメントしたのがstand.fmなどの音声配信プラットフォームだ。

4.新しい流れ

要約 ポスト動画コンテンツの中で音声配信のみが異様な動きを見せている

ポスト動画コンテンツを狙うサービスは、いろいろある。しかし、基本的にはコンテンツリッチ至上主義のサービスだ。
しかし、音声配信のみ異様な動きを見せている。コンテンツプアの存在感がどんどん強くなるという現象が現れた。

2019年以前から存在したポスト動画コンテンツを狙ったサービスをいくつかあげる。視覚、触覚、聴覚、嗅覚、味覚、に対して新しい価値を提供するコンテンツサービスが盛り上がりつつある。基本的には利便性の向上をテクノロジーで補完するサービスだ。

①視覚・・・VR、AR
旧来の動画コンテンツには弱点が2つある。一つは、没入感が現実より低い点。もう一つがながら需要に危険性が伴う点。この二つの弱点を、コンテンツリッチのベクトルで解決する。没入感の解決はVR、ながら需要にはARである。

・VR「Virtual Reality」「人工現実感」や「仮想現実」
今のyoutubeなどの動画コンテンツをさらにリッチな方向に進めた未来に存在する。ハードとコンテンツの質向上には余地が大きく、近い将来現実よりもリアルなバーチャルを私達に体感させてくれる事だろう。
・AR「Augmented Reality」「拡張現実」
ポケモンGOで広く認知されたARだが、これはソーシャルゲーム用の技術ではない。ながら需要、たとえば、魚のさばき方をyoutubeで見ながら魚をさばく、みたいな時にARゴーグル越しに魚のこの部分に包丁を充てるとか、ここは傷つけちゃいけないみたいな体感型マニュアル機能、または、徒歩移動時のナビゲーション、海外での看板翻訳機能付き眼鏡などのコンシェルジュ機能、このようなQOLの向上を実生活から助ける秘書的な役割が主流になると思われる。

②触覚・・・各種触覚インターフェース、LOVOT、OriHime

超音波を利用した触覚インターフェースの開発が進んでいる。方向性は没入感、より現実に近いリアルというコンテンツリッチの方向性だ。
LOVOT,OriHimeなど、癒しロボット、コミュニケーションロボットの普及は、触覚インターフェースの発展を後押しすると思われる。

③聴覚・・・ASMR,音声配信

ASMRは音声におけるコンテンツリッチの最終形態に近いが、技術的な改善余地はまだ大きい。iPhone13以降にて、※iPhoneにバイノーラル録音機能が搭載される事で、この市場は急拡大すると思われる。

※特許関連の情報サイトPatently Appleは5月4日、アップルが提出したバイノーラル録音技術に関する特許出願書類を掲載した。「資料に記載されたバイノーラル録音技術は、フル3Dのサウンドを実現するものだ。アップルはHRTFと呼ばれる音声の空間レンダリング処理技術を用い、音の方向を認識可能にする」と、Patently Appleは解説している。


音声配信においては、ASMR的な没入感というコンテンツリッチの方向性と、情報密度を低くすることで「ながら聞き」や「ずっと聞いてる」というコンテンツプアの方向性が混在した進展を見せている。

「24時間友達とおしゃべりしながら」「友達同士の会話を聞きながら」自分の時間を過ごす という、新時代のコミュニケーションインフラとしての可能性が見える。これは生活様式の変化を意味する。生活様式が変化する可能性、それは付随するサービスの価値が反転する可能性を持つ。
友達と遊びたいから都心に住む ⇒ 音声でつながっているから郊外に住むとか、お店で買わずに友達から買うとか、雑誌を買わずに友達からの紹介で買うとか、購買に関わる既存のルールが反転する。既存ルールのサービスが崩壊し、新ルール合わせたサービス台頭する。

嗅覚と味覚にアプローチするサービスもあるが、ここでは触れない。ちなみにこの二つに対するアプローチも コンテンツリッチ の方向性にある。

5.まとめ

インターネットの普及により、コンテンツの個人最適化が進み、個人最適化された広告が普及する。2019年「動画×SNS」というコンテンツが隆盛を誇り、多くのインフルエンサーが現れ、「コンテンツリッチ」と「数の正義」が横行する。しかし、2020年コロナの影響で市場のルールに変化の兆しが表れた。「コンテンツプア」で「非常に狭く非常に深い」影響力を持つマイクロインフルエンサーの台頭だ。この変化は音声配信市場から始まり拡大傾向がみられる。人々の生活様式が大きく変化する兆しだ。今住んでいる場所も、今働いている職場も、今いるリアルな友達も、全てを変化させてしまう可能性。

6.終わりに

自らがマイクロインフルエンサーを目指しても良い、彼らにコンサルしても良い、社会変容をいち早く取り入れたサービスを作っても良い、

大きな視点で考え、時代の大きな変わり目だと強く意識して欲しい

個人としても大きな影響力を獲得できる可能性があります
産業的にも大きな事業を生み出せる可能性があります。

スピード感をもって取り組んでほしい、よく勉強して欲しい、自ら積極的に動いて欲しい
よく考え、よく調べ、手を動かす。そしてまた考え、調べ、手を動かす。
これを高速に回して欲しい。

私はそんな若者たちにベットして、寄生虫のように彼らの体液を吸い尽くし、私腹を肥やし、巨億の富を築きたい。

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