漢字に意味はありません。

通り慣れた道に見慣れない提灯がかかっているのが見えた。
ん?立ち止まって目をこらす。

『焼肉』。

?!

うわー、焼肉屋さんなんてできたんだー。
思わず近づいてみると今まで通りのヴェトナム料理の店。

あ、そっか。だよねだよねそーだよね。
ひとりつっこみをしつつ苦笑いしつつ通り過ぎる。

漢字は漢字を読めない者にとったら
それは意味のない記号なのだ。
あるいは『絵』。

わたしにとってのハングル語やアラビア語がそうであるように。

ヴェトナム料理のお店の人が赤い提灯を見つけて
「あらすてき。店頭に下げたらいいかも」
そう思っただけの話だ。
そこに『焼肉』と書かれていることは目に入りもしない。

よくもそこまで無邪気に漢字を取り入れられるわね。
そう思うことは少なくない。

むかーし、『Fuck me』と胸に書かれたTシャツを着た女の子が
原宿あたりを歩いていたことがあったっけ。それと同じことだ。

例えばTシャツ。

数年前になるけれど全面に大きく筆書きで
『痔』。

十歳くらいの男の子だった。
痔なの?大丈夫?宣言しちゃう?

お。なんかかっけーなこの字。
作った人はそう思ったのだろうか。

背面に
『師匠は出来の悪い弟子こそかわいい』
そう書いてあるTシャツを見たこともある。

意味わかってる?
あなたは師匠?それとも弟子の方?

例えばタトゥー。

今まで見た中で一番強烈だったのは
ピンヒールを履いてセクシーなワンピースを着た
マダムの足首に彫ってあるタトゥー。

『色情』。

これはまさにマダムにピッタリすぎて笑った。
最後に『魔』があれば完璧だったのにな。

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