私が好きな漫画 ―人生で大切なことは、ほぼ漫画から教わった―(1)

自粛期間が延長されて、家にいる時間が増えましたね。いかがお過ごしですか?
「毎日、何して過ごしているの?」と聞かれますが、私は「漫画を読んでます」と答えてます。
反応は「へ〜(いい大人が漫画・・・)」「漫画は昔『ドラえもん』とか『美味しんぼ』は読んけどね〜」とか「若い頃はかなり読んでいたけど、最近は全然」など様々。「何が面白いの?」「どんな作品を読んでるの?」とよく聞かれます。
小学生から児童館に籠っては漫画を読み、文化、教養、雑学を漫画から得て、多くの時間を漫画と過ごしてきた私。もはや人生観にもかなりの影響を受けています。そんな私が、好きな作品を紹介。クセ強めなので、決して万人と良い子にはおすすめしないけど。良い大人にはおすすめ。STAY HOME  ENJOY MANGA !

まずは今、連載中の作品から

「ゴールデンカムイ」野田サトル (ヤングジャンプ)
日露戦争の帰還兵とアイヌの少女が、アイヌの埋蔵金を巡って土方歳三(死んでない設定)や北鎮部隊とバトルを繰り広げる和製ウェスタン。埋蔵金の隠し場所は、脱獄囚の刺青に隠されているから、網走監獄の脱獄王や、エド・ゲインが元ネタの歴史に残る犯罪者のオンパレード。アイヌや樺太の少数民族の文化を詳細に描いた漫画としても秀逸です。
さらにアイヌの少女が、行く先々で野生動物を狩っては食べる食べる!その描写がものすごくリアル。獣肉食べたくなるね。フルデジタルで描かれた絵も、すっきりとしていて見やすく、宗教画のような構図もあり。とはいえ、疾走感と予想を上回る変態度はハンパなく、ページをめくると「ヒッ!」と軽く声が出てしまうほど。娯楽としての漫画表現の到達点とも言える作品。主人公がアイヌの少女を「子供」ではなく、意思を持った一人の人間としてリスペクトしていることも好感が持てます。

「キングダム」原泰久(ヤングジャンプ)
紀元前の中国、春秋戦国時代に下僕の少年、信(シン)が後の始皇帝となる政(セイ)と出会い、大将軍を目指して駆け上がる熱量高めのストーリー。
司馬遷の「史記」をベースに描かれていますが、とんでもなくデカくて、キャラ濃いめの敵を仲間と共に倒してく、往年のジャンプ漫画的要素も濃いめ。信の決めゼリフが「天下の大将軍になる!」なら、少年王、政は「中華を統一する最初の王になる!」。最終目標は戦争のない世界。暴君として描かれがちな始皇帝を、新たな角度で描いていて新鮮です。

と、ここで、はて?「中華」とは?そもそも中華という概念って何んなん?と思ったら、「中華」とは古代王朝「夏(か)」を中心に、ほぼ現在と同じ規模の領土を世界の中心「中華」と考えられていたんですね。この頃、日本は弥生時代。「東夷」という何らや東の果ての野蛮な国と思われていたそう(本編には記述なし)。戸籍もこの頃には徴兵のための制度として存在していたことや、儒教も確立されていたのも驚きです。ファンタジーや、少年少女の成長物語でもあり。現在57巻。最新話では、下僕だった信が大きな屋敷を構えていて泣けます。あの子が、ここまで大きゅうなって!(おかん)

そして、不朽の名作。
「日出処の天子」山岸凉子
聖徳太子がホモセクシャルの超能力者。そして超絶美少年。あ、待って、待って、ここで引かないで!!まずは一話目を読んでください、緻密な線で描かれた耽美な世界に引き込まれます。神仏と恐れられるような異能者で、それゆえに母親からも疎まれていた厩戸皇子(聖徳太子)が、謀略渦巻く朝廷で実権を握り、仏教国家を目指すストーリー。ですが一人の人間として蘇我毛人という平凡な青年を愛し、報われない思いを抱え、時には手を汚すなど、孤独な青年としての苦悩を描いています。
本編の最後には「日出処の天子、書を日没する処の天子に致す、恙(つつ)が無しや」の名台詞も出てきます。当時の中国皇帝を怒らせたという書簡の書き出し。
中国から「東の果ての何やら野蛮な国」と思われていた日本が、返す刀で「こちとら日の出の国の王だけど、日没の国の王に宛てて書くよ!元気っすか?」というバッサーと切り替えしたセリフ。痛快。そしてキングダムの熱量高めな黒い描き込みの絵に比べ、余白を生かして宇宙を描く白い世界、交互に読むとハレーションで目眩しそうです。温度差で風邪ひきそう。枯淡な色彩で描かれたカラーイラストも、ため息の出るような美しさです。

とここまで書いていて気づいたのですが、この三作品に共通して描かれていることは戦争。「いかに戦争のない平和な世界をつくるか」「多民族が共存して平和に暮らすには」が根底のテーマだったりします。そのために殺し合う主人公たち。矛盾をはらんだ物語を、どこに「正義」の落とし所を持っていくか、それぞれの作者の見解も見どころです。

コミックを買うのはハードルが高い、小さい字が辛いかたは、まずはwebで一話目か一巻を読んでみるのがおすすめ。日出処の天子はweb配信がないので、こちらは古書店などで一巻を買ってみてください。「キングダム」や「ゴールデンカムイ 」はヤングジャンプのアプリからでも読めます。






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