愛国心、愛国心、とくり返す人には共感できない。
その言葉の後ろに込められた意味は何だろう？そう思うと怖くなる。

朝鮮学校に通っていた頃の話だ。とある先生の発言に、強い違和感を覚えた。
「もし自分が死んで南北朝鮮が統一できるなら、自分は喜んで死ぬよ」彼はそう言った。理解できなかった。ゲッソリした俺がおかしいのかもしれない。聞く人が聞けば「立派！」ってなるのかもしれない。でも自分は、心底イヤだと思った。っていうか先生、あなた養ってる家族いるでしょ、とも思った。

戦争映画なんかにありがちな話だけど、もし「お国のために！そして家族のために！」とか言って死ぬ人を見たら、いやいやいやいや国を蹴ってでも生き延びてくれよ、家族のために。と思う。絶対にそっちの方がいいから。家族のために。

そういえば以前Twitterで俺に「帰化しろ」と言ってきた人が、同じ口で、「帰化するってことは、日本のために死ねるということだ」と言った。
『日本のために死ねることが、日本人になる条件なんですね？』と確認すると、迷わず「そうだ」との答え。わざわざ三段論法で「日本のために死ね」と言われたような気分がして、クラッときた。ふわぁ～お♥ こいつ何を言っちゃってんだろうMA☆JI☆で。

「お国のために」という言葉は、「お」が付くところが特に怖いなあ、と思う。お国は民より尊い。民はお国のために理不尽に耐え、お国のために命を投げ出してこその愛国者である。でも世界のどこかに民を国のための道具みたいに考える国があったとして、それのどこが尊いのかはよくわからない。正直、全然わからない。

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日本に生まれたんだから、日本への愛国心があって当然、無い方がおかしい！
と言う人もいる。

『日本にたまたま朝鮮／韓国籍を持って生まれたら見知らぬ人からボロカスに言われて、それが空気的に（一部で）許されてるから、日本をいまいち好きになれない』という俺のような人間からすれば、「当たり前に愛国心を持てる」というのも、ある意味で恵まれているのだと思う。

自分の場合、生まれた土地や人々に愛着はあっても、なんだか「愛国心」という感じはしていない。韓国についても、暮らしたことも無いし、何も感じない。せいぜいが親近感どまりだ。これがくだらない妄想なのはわかっているが、もし俺が「愛国心」を持ったら、在日である自分の家族や仲間たちを攻撃したり、逆に日本人の友人たちを責め始めたり、するんだろうか？

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「愛国心」は、排他的だ。

「日本を好きじゃないなら出て行けよ」と言われた経験は、数えきれない。
朝鮮学校でも、愛国心を感じないことについて「売国奴か」と言われた覚えがある。（冗談でも、そんな事を言われたくはなかった。）

その度に、『ありがとうございます。あなたの言葉を聞いた今この瞬間にまた、国が嫌いになりました』と思いながら、年を重ねてきた。

俺は「愛国心」が、怖い。

ただそこに生まれたというだけで、
その為に尽くさなければならないと考える発想が、怖い。

口先だけだとしても、個人に命を捨てさせるものが、怖い。
無実の他人を攻撃させるものが、怖い。
それを他人に押し付けさせるものが、怖い。

そして何より、それがお国のために「正しい」のだと、
思い込ませるものが怖いんだ。

内閣府世論調査　７５％が「愛国心を育てる必要あり」…否定的な回答を大きく上回る（産経新聞）
http://www.sankei.com/politics/news/150321/plt1503210016-n1.html

ふだん目にする「愛国心」のサンプルが怖すぎて、まったくピンとこない。
国民に愛国心を求める人は、他人に愛国心を持たせて一体、何をさせようって言うんだろう。残念ながら愛国心は暴走しやすく、すべてがポジティブなものではない。「国を愛する心を育てる」なら同時に、「愛国心」に苦しめられる人が出ないよう、対策も考えてもらいたいと思う。

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