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佐世保駅からレベスタまで約100キロを35時間くらいかけて歩いてみた話

まず初めに、僕が佐世保駅から福岡まで雨が降っている中で歩いて向かうという無謀な挑戦をしたことに対して心配をしてくださった皆さん、勇気づけてくださった皆さん、ツイッターやラインなどでメッセージを送ってくださった皆さん。

ご心配おかけした事にお詫びを申し上げると共に、応援してくれて本当にありがとうございました。全部のメッセージを読みながら歩いてました。後でも書くつもりですが、しょうもない企画だと思っていたので、これほど沢山の方からのメッセージをいただいたことに驚きを隠せなかったことと同時にサッカーを好きな人に悪い人はいないと改めて感じさせられました。


それでは、この歩いた話をいろんな切り口から見ていこうと思います。


【なんで歩いたのか?】

まずは僕がなんで歩いたのかをご説明しようと思います。この要因はいくつかあるのですが、大きく分けて3つの視点からの理由がありました。

①スポンサーロゴを多くの人の目に触れてもらいたかった(一人のサポーターとしての視点)

ツイッター上でも書いたのですが、僕は大好きなアビスパ福岡のために援助をしてくれるスポンサー企業を強くリスペクトしています。

このクラブをスポンサードすることで得られる金銭的なメリットはわずかなものという前提にすると、社会貢献や地域へのスポーツ文化浸透などに対する意識がなければできないことだからです。

僕にはサッカークラブのために億のお金を用意することも支払うこともできませんので、そういった「僕にはできないことをしている」という面から感謝はもちろん、こういう金銭的以外の利益を見ることができる企業に対しては強く尊敬をしています。そこで「クラブに対して何か自分にしかできないことはあるか」と考えた時に、この自分には持っていない「金銭的」な資本を持っているスポンサー企業の広告を「時間的」な資本を持っている僕が広告でも出来ないかと思い、ユニフォームを着用して歩くことでより多くの人の目にスポンサーロゴを触れてもらうことができるのではないかと考えて歩こうと考えました。

また歩く場所を佐世保にした理由は「佐世保に住みながらアビスパ福岡を応援している」という一見アドバンテージに見えそうな部分を逆に「自分にしかできないこと」に変えていこうという考えがありました。

②大学生としてチャレンジしたかった(一人の大学生としての視点)

大学に行くという選択をしたということは「高校卒業で就職するよりもよい就職先や賃金を得ることができる」ということに尽きます。

商業高校を卒業した自分としては、周りの友達が就職をすることに対して非常に意欲的だった傾向にあり、その中で「大学進学」という進路を選んだということは、より多くのものを得なければなりません。それというのも大学に行くのはタダではない訳で、僕の場合は奨学金をウン百万円借りているので、ただ大卒という資格を得るためだけではなく、大学生という肩書きを使ってできる最大限の部分の利点を享受したいという思いで、何か挑戦をしてみたかったという思いが強かったです。

いままでもクラブのために何かできないかと何かしらの活動を行ってきた気になっていましたが、就活を目前するに当たって「客観的評価」を意識した時に、自分は何も成し遂げることができていないことに焦りを感じていたことも事実でした。

だからこそ、誰もが聞いて驚くようなことをしたかったというチャレンジ精神に溢れる大学生という視点から、さらには自分はサッカーという切り口で将来を歩いていきたいと思う気持ちが非常に強くなったことも歩こうと決めた要因の一つでした。

また、大学の講義内で耳にした「イノベーションとは既存の物事の組み合わせで起きる」という話から、「歩く」という行為、そして「佐世保から福岡まで行く」という至って普通な行為(歩いたといって驚く人もいなければ、佐世保から福岡まで行ったといって驚く人もいないはず)を掛け合わせることで何かを生み出せるのではないかという理論もあったものの、これはこじつけのようなものです(笑)

③アビウォークという存在をより多くの人に知ってもらいたかった(アクションを起こす人を支援する視点)

僕が考えるに僕たちサポーターは「サポーター」なのであって、クラブの意思決定や経営判断に対して文句を言うのが仕事ではないのではないと信じていて、それをするのは株主の仕事であり、クラブに対して評価を下すのは実際にお金を出している人たちであると考えています。

僕たちサポーターができるのはチームがどんな状況であろうと、クラブに対して何かを「ギブする」ことしかないと思っているので、その形は人それぞれ立場やスキルに違いがあることからギブする形は変わってくると思います。

僕の場合は面白い企画を思いつき、それを実行に移すという行動力を持ち合わせていなかった中で、この「アビウォーク」というイベントを知り、スポンサーさまとの交流やそのイベントの目的などを見て「サポーターとして出来るクラブに対する大きな貢献」だと感じ、それを実行している人たちを少しでも支援する気持ちがありました。僕が実際にやったのは「イベントの存在の周知」と「参加の呼びかけ」です。

結果としては、「佐世保から福岡に行く」「歩く」という誰にでもできる二つの行為を組み合わせるだけのつまらない企画だったのも関わらず、多くの人からの応援をいただけたこともあって、スタート地点でのインプレッションは大体5万くらい、到着時のインプレッションは2万と動画の再生数が7千回ぐらいと、この企画の存在を知らせるには十分な結果になったのではないかと思います。

【歩くための準備】

歩くと決まってしまえば非常にスムーズに事は決まっていきました。

まずはどの日程で歩くかを定めてバイトの休みを入れます。金曜日まで授業があったので、そこから出発すると決まっており金曜日から日曜日までを開けられる日程はこの柏戦ということなので、すぐに調整を入れて日付は決定です。そして、「歩く」ということに対してのアドバイスを得るために、周囲の大人の方々に「佐世保から歩こうと思っているのですがアドバイスをくれませんか?」と聞きまわっていきました。

大体の方が「若いね!」という言葉と共に、自分のエピソードを教えてくださいました。以外にも歩いたや走ったというエピソードを持っている方が多く、それらを元に着々と準備を進めていましたし、1か月前ほどからウォーキングやランニングで身体を作ることを心掛けていました。

いま考えると感謝しているのが「危ないからダメだよ!」という人が誰もいなかったということで、心配だけど何かあったらいつでも言ってくれと僕の挑戦に対してポジティブに受け止めてくれた方が非常に多かったということです。僕の性格からして何を言われても歩くという行為を止めることはできなかったと思いますし、「どうやってするか」という部分で多くのアドバイスをいただけたことが、スタジアムまで元気に辿り着けた要因だと思っています(ギブしたけど)。

【実際に歩いてみて】

ご存知の方もいらっしゃると思いますが、33時間時点で僕は福岡県に突入した筑紫野まで入ったところでギブアップをしました。

その距離にしてスタートの佐世保駅から約90キロぐらいだったと思いますが、最後の方には10分歩けば10分休憩しなければいけないほど身体が弱っていて、なんとかレベスタまで残りの4時間かけて到着したとしても次の日の試合に多大なる影響を及ぼすと考えてギブアップすることに決めました。

ギブアップするにあたっていくつかの要因が考えられたので、それを言い訳がましいですが、次の教訓として書き残しておきます。

①ルート選定ミス

佐世保から福岡まで行くルートは大きく分けて2つ、伊万里を経由して糸島を経由して行くルートと有田を経由して鳥栖から行くルートがあります。

いつも原付で行くときは明るいという理由に加えて、一本道だからという理由もあって後者のルートで行くことが多いのですが、実は忘れていたのですが圧倒的に後者の方が遠回りになってしまうのです。

バイクで行くときにはその差は1時間もないくらいですが、歩くとなるとその差は数時間ぐらいとなってしまう訳ですね。それに途中で気付いて近道をしようと多久という土地に迷い込んでからが最悪でした。ルートの選定は明確にすべきだったという反省点です。

②荷物の選定ミス

雨が降るということもあって、途中で温泉に入ろうとウキウキしながら着替えを3着ずつ用意したのが最悪の判断でした。この荷物が33時間歩いた僕の精神を少しずつ蝕んでいきました。

いま一番どこが痛いかと言われると実は足よりも肩です。リュックにすれば背にあるスポンサー企業名が見えないということを考慮して肩掛けのバッグを用いましたが、もうトラウマになってしまってトートバックを使うのが怖くなるくらい失敗したと思いました。

それから持っていた傘もとてつもなく邪魔で両手をふさぎ続ける傘と途中で濡れたスニーカーを手に持っていることがきつくてきつくてたまりませんでした。次に歩くときは財布と携帯だけにしようと強く思いました。最悪途中で買えばなんとかなる便利な世の中になっていました。

③サンダル問題

24時間以上、僕はサンダルで歩いたのですが、これが本当に失敗でした。

とにかく疲れが溜まる、しかしスニーカーはびしょびしょ。どうしようもなくなってしまい、最後の最後に再びスニーカーを濡れたまま履いたのですが、足に対する疲労はこれが一番大きかったと思います。

サンダルを持ってきていたことはGOOD JOBでしたが、途中にあったスニーカーを乾せるコインランドリーで相当悩んだ挙句で通り過ぎてしまったことを今でも悔やんでいます。

スタジアムに着いたら「これがあのサンダル・・・」と皆さんから悲鳴のような声を聞いたときは、サンダルくんも嬉しかったと思います。

ちなみにこのサンダルは大学一年生になった時に「減価償却した4,000円ぐらいのサンダルも1年1,000円や~」と思って購入したのですが、もう原価取り返してるよ君。最高だよ相棒(もうボロボロ)

【想定と実際】

僕がこの歩くという行為をしてみて一番驚いたのが、「多くの人から応援された」ということでした。

馬鹿な大学生が馬鹿なことをやるだけだから・・・と思っていましたが、気付いてみるとインプレッションの数が想定の150倍ぐらいあって驚きました。それに加えて、その中の応援をしてくれた方の中の大体3割ぐらいがサガン鳥栖やV・ファーレン長崎のサポーターの方々とプロフィールに書いてある方からのメッセージでした。

やはり「佐世保と福岡」という距離が具体的に分かる人にとっては、その無謀さを知っている分、応援してみたくなるのだろうかと思いながら歩いていたことを覚えています。こういう方程式が分かれば次は東京まで原付で行けばもっと応援してくれる方が増えるのではないかと、次なる計画に身体が疼くので寝袋を買いたいと思います。

それから、「100キロ」という長さを足で歩くと改めて実感しますが、物凄い距離です。24時間という括りの儚さと同時に、その距離の先の見えなさに絶望をし、時には歓喜をしました。

また、この企画を終えて佐世保まで改めて帰る時になって思ったのが、

「この100キロの道のりを寝てたら勝手に佐世保まで連れて行ってくれるのに2,000円でいいの!?」

ということでした。文明の利器に頼りすぎていたことを実感しましたし、世の中のサービスというものの価値を改めて実感することができました。

本当にバス会社に対して感謝する気持ちが強くなったという変化が自分の中にありました。

【一番きつかったこと】

これはよく聞かれたので最後に書き起こしてみると、ギブアップしたときが精神的にめちゃくちゃキツかったです。

足の痛さや荷物の重さもキツかったのはもちろんでしたが、あれだけ多くの方からメッセージが来ている中で、「もう無理」と言い出すのも凄く勇気が必要でしたし、正直言うなら最後はもう泣いてました。

もう泣きながら母親に電話をすると

夜遅くにも関わらずバカな息子を爆速で迎えに来てくれて、お風呂を沸かしてくれていて、着ているユニフォームをすぐさま洗濯して乾かして次の日の試合に着られるようにしてくれていました。

僕はパパからお父さんに言うタイミングを逃して、父親の事をパパと呼んでいるのですが、パパは歩いてきた事を笑いながら「バカやね」と笑ってくれて、怒ったり、ギブアップした事に残念がることはせず、ただいつも通りいてくれました。

僕はいままで沢山のバカなことをやってきましたが、息子のやってきた事に対してケツを拭いてくれる親の元に生まれてきてよかったです。大学まで通わせていただいていることにさらに感謝して、絶対に初任給で温泉旅行をプレゼントします。僕もこの両親みたいな親になりたいです。

こんなことを打ち込みながらいまも泣いちゃったりしてる僕です。

佐世保に一人暮らしをすることになったときも親と離れる時が一番泣いたと思います。子供の立場として、本当に自由にさせてくれたことに感謝しかありません。

ギブアップした時に皆さんから頂いた労いの言葉には正直目を向けることができなかったのですが、もうその悔しさを晴らすために天神に向かいました。顔はギリギリ笑えていたと思いますが、身体はもう限界中の限界で、スタジアムで話したこともほとんど覚えてないです(笑)

でも、最後に言えるのは、

歩いてよかったです。

多くの応援ありがとうございました。良かったところも反省点もありました。すべてを噛みしめて次に進もうと思います。

本当にありがとうございました!


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