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【アビスパ福岡】2019年J2第3節vs京都サンガF.C.:どれほどセンターフォワードが必要なのか

一流のアビスパ福岡サポーターは一晩にしてならず。

一か月後にいきなり琉球まで応援に来てくれと頼まれたはいいものの、その試合の日程は日曜日。そして土砂降り、日帰り組も少なからず。そんな中で相手チームの歴史的勝利を見せてくれる素晴らしいクラブ、アビスパ福岡。ユニフォームは開幕に間に合わず、相手チームの新品のユニフォームによだれが垂れる。同じサプライヤーの柏には開幕に間に合ったという情報も腹立たしい。

今日はそんな修行のようなサッカー観戦を続けられている皆さんをどうにか励まそうと、そしてどうにかファビオアビスパの面白さを伝えようと魔界からやってきました。佐世保から福岡まで原付で通ってサッカー観戦をしている大学生こときょんもりです。

今回は、地獄のような試合だった京都戦をしっかり振り返ってみようと思います。どうぞお付き合いよろしくお願いします。

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天気にも恵まれ、ユニフォームの下に長そでを着ていられないほどの気候の中で試合は行われました。対戦相手は去年のトラウマ、前半で2点リードをしておきながら後半に2点を取られてドローで終わった京都サンガFC

そして、今シーズンは開幕戦からゴールは一つのみ。勝ち点はスコアレスドローで得た「1」のみという中で勝利が待望されていた試合でした。

まずは両チームのスターティングメンバーを確認してみましょう。

【福岡】
GK:1セランテス
DF:3石原 5實藤 39篠原 22輪湖
MF:6ウォン 8鈴木 17松田 19田邉 16石津
FW:10城後

(SUB)杉山 吉村 前川 喜田 木戸 森本 ミコルタ
※敬称略

まずは福岡から、選手の並びは4-2-3-1のような形。攻撃や守備の時などにメンバーが入れ替わったり、位置が変わったりする局面も多々見られたもののベースはそう。特にサイドバックは勢いよく位置を動かしていました。その石原選手と輪湖選手の攻撃への積極性はファビオサッカーの見どころの一つということが見えてきそうです。

また、ベンチには登録されたばかりのフェリックス・ミコルタ選手吉村選手が名前を連ねました。得点不足が叫ばれる中でミコルタ選手の期待値はどんどんと膨れ上がる一方。

そして京都のスターティングメンバーを見てみましょう。

【京都】
GK:21清水
DF:16安藤 4田中 6本多 30石櫃 5黒木
MF:8重廣 10庄司 22小屋松 29中野
FW:13宮吉

(SUB)加藤 上夷 モッタ 仙頭 ジュニーニョ 福岡 エクスデロ
※敬称略

京都は単純に言えば5-4-1という形をベースに選手を動かしてきました。攻撃時には3バックになってウイングバックが縦に動いたり、偽SBといって被カウンター時に最も危険となる中央のスペースを潰すべく中央に動いたりと選手の位置を調整しながら各局面での優位性を保っていました。

福岡の今シーズンの特徴である「サイド攻撃」という要素を叩きのめすがごとく、サイドに枚数をかけて守ることで福岡の自慢のサイドバックの高いポジショニングを孤立させ攻撃を停滞させることに成功しました。それはまた後で解説を加えるとして、試合の分析に入ってみます。

【前半】福岡の強みをことごとく潰す京都

この試合には京都からも多くのサポーターが駆けつけてくださっており、会場の雰囲気もボルテージが高まる中で因縁の京都との対戦が幕を開けます。

ここまでの試合でのパスの平均数は京都が595本でリーグ一位福岡が590本でリーグ二位というボール保持を好むチーム同士の対決ということもあり、どれだけ相手チームのパス回しに対して効果的にプレッシャーをかけることができるかが見どころになってくる試合でありました。

福岡は琉球戦で披露してしまった被カウンター時の中盤のケアをするために守備的なミッドフィールダーであるウォン選手を投入して、そのウォン選手、田邉選手、そしてキャプテンの鈴木選手の3枚で中盤を担当していました。原則としては、3枚のうち1枚はディフェンスからのパスを受けるべく下がってくることが決められているようでした。福岡はサイドバックがかなり高いポジションを維持しているので、センターバックの選手がボールを持っている時にパスコースが無くなることが度々。そこに中盤が関わりにいくものですが、ボールを奪われてしまうとすぐに失点に直結してしまうので、福岡のセンターバックとしては安全中の安全策を取ることが多かったように感じました。そして、京都としてはそこの違和感に付け込んできました。

福岡のセンターバックがボールを持った瞬間に京都のサイドハーフの選手が狙ったように厳しいチェックを入れにいきます。そうするとDFとしては後ろに下げざるを得ない、後ろに下げたところにもプレスを継続してかけ続けることでGKのセランテス選手も前に蹴ることが最善策となります。大きく前に蹴りだしたボールに対してはいままでの試合でなかなか空中戦で勝利してボールを保持できていない攻撃陣と、空中戦には自信のある京都の闘莉王選手を中心としたディフェンス陣。簡単に京都にボールを回収されてしまうという流れが起きていました。

ここを改善するために、中盤の一枚がセンターバックの間に降りてきてゲームメイクに関わらせるというような策が有効なのではないかと考えることができます。中盤の位置では警戒されてなかなかボールを前向きに進めることができなかった鈴木選手も田邉選手もボールを持った時には最低限なボールロストをしないようなボールタッチができる上に高い精度のキックが出来ることは言わずもがなです。次の試合ではこのような一連の流れを断ち切るかを注目して見てみようと思います。

それでは次に京都の目線に立ってみましょう。京都としては福岡のいままでの試合でも主なアタッキングサードへの侵入コースとして使われていた「サイド攻撃」を抑えるために選手を配置していたようでした。輪湖選手の足元にボールが入ったとしても後ろに下げる選択しかないというような局面が幾度となく見られたのも、京都のサイドハーフがしっかりと狙っているからだったからでした。縦にパスを出そうにもウイングバックがばっちりとマークに付いている局面が多かったので、選択肢としては厳しかったと推察することができます。

福岡の唯一といっていいほどのサイドバックとサイドハーフが関わる形でクロスまで上げきる強力なサイド攻撃を防いでしまえば京都のペースになってしまったようなものです。サイドにリソースを割いてしまった挙句、クロスボールのセカンドボールに対して中央で福岡に回収されてしまうこともありましたが福岡は繋ぐ意識が非常に高いのでシュートまで至る前にパスやトラップのミスから簡単にボールを奪うことができました。

ボールを奪った後の展開は、いくつか見たパターンの中で再現性のある形は主に2つだったと記録しています。

1)サイドに張ったドリブルが得意なウイングの足元に入れる
2)CHに預けて大きく展開

1)

サイドに位置するドリブルの得意な左は小屋松選手と黒木選手、右には石櫃選手と中野選手のいずれかがサイドに張っておいた状態でボールを足元で受けてドリブルを開始するという形で攻撃に枚数を割いている福岡相手に、サイドで1vs1の場面を強制的に作り出します。

これによって簡単にアタッキングサードに侵入することが出来ます。クロスからでも脅威が作れることはもちろん、右利きの小屋松選手を左サイドに、左利きの中野選手を右サイドに入りしていることからカットイン(中央にドリブルをして)からシュートも狙えるという選択肢を持たせることで攻撃に豊富なバリエーションを持たせている可能性を多いに感じさせてくれました。配置されたサイドと逆の利き足を持つサイドハーフを後ろからのオーバーラップ、インナーラップでサイドと利き足を持つサイドバックがサポートするという形で効果的な攻撃を繰り返していました。

2)

京都には非常に優秀とされている高精度なロングパスが特徴的な庄司選手が中盤に位置しています。そして福岡としては相手のディフェンスラインでボールを奪い切ろうとなんとか前からのプレッシングを仕掛けますが、京都としてはボール保持者に対して後ろ、横、サイドとパスコースを多彩に用意してますので簡単に福岡のプレスを剥がしていきながらパスを回していきます。

選択肢が多いからこそ、京都の選手たちは余裕を持ったボール回しをできたのではないかと思います。そして後ろには強い精神力を持った闘莉王選手がいるという安心感もあったのかもしれません(なかったかもしれません)。そういった要素の絡まりあいによって、京都は福岡のプレスを簡単に剥がしていきつつセンターハーフのところからサイドに張った選手を目がけた大きな展開などを使いながら福岡のゴールに迫ろうと試みていました。

また、これに意図があったのは情報不足で定かではないのですが、京都の選手たちはドリブルを多用していたことが気になりました。

福岡は攻撃時に多くの人数を攻撃に送り込んでいるので、カウンターを浴びてしまうときにはドリブルでボールを持ちこまれると石原選手や輪湖選手が根性でディフェンスラインまで戻ってくるというシーンもこの試合でなんどもありました。もちろん、前に人数をかけているのは攻撃的には少なからず効果はあります。セカンドボールの回収率が上がることで井原監督の時代には見られなかったような二次、三次攻撃が出来ていることも事実です。

被カウンター時は天に願うしかないという、なんとも危険な綱渡りをしているような気分でアビスパ福岡の試合を観ましょう。

サイド攻撃も防がれてしまっている中でなんとかセンターバックからのロングボールやサイドからのアーリークロスでチャンスを作っていくものの、やはりディフェンスラインからの組み立てが安定しない以上、なかなか思うような攻撃が出来なかった前半です。

僕は決して、悪いサッカーだったと一概に言い切れるような内容ではないと思っています。

【後半】福岡に絶対的なセンターフォワードが必要な理由

結果的に京都は福岡に対していやらしい攻撃を繰り返す中で、サイドからドリブルで侵入してきたところを中央でケアしきれずにディフェンスから出足の鋭い實藤選手がケアリングに行ったところを見事なワンツーパスで抜け出されてしまい失点、それが決勝点となり京都に勝利を譲ってしまいました。

福岡が攻撃的になっていることをいいことにセンターバックの前のバイタルというスペースでボールを収められる京都のワントップを務めた宮吉選手も京都の攻撃を成立させる上で凄く重要な役割を果たしていました。

選手層はもちろん、それらの組み合わせが非常に上手かった京都。

それに対して、後半では鈴木選手がなんとか前方向にパスを出せるようになってきて大きな展開を作ったり、石原選手がサイドの足元でボールを受けたときにワンツーから抜け出すような形などから得点の可能性のあるような場面を作ってくれはしましたが、それでも「枠内シュートは0」という事実は深く突き刺さります。

このあたりの言い訳をしてみたいのですが、ファビオ・ペッキア監督が最も重要にしている視点はアビスパ福岡の1年後ではなく、5年後、10年後なのではないかと思っています。

開幕戦で課題の見えた三國選手を使い続けました。そして去年までベンチでくすぶり続けた木戸選手を辛抱強く使い続けています。喜田選手をベンチに置いているのも、吉村選手を登録後すぐにベンチに入れたのも、アビスパ福岡の未来を見てくれているからだと推察することができます。

いま目の前の試合にだけに勝とうと思えば、もっと違う答えが出ていたと思いますが、チームの中にどうしても「アビスパ福岡の未来を背負うもの」を加えてくれているのです。実力はまだまだな選手を信じ、期待し、そして活躍の場を与えてくれる監督は、正直いままでファビオ・ペッキア監督を超える人を見たことがありません。

もちろん、開幕から3連続で勝利がないという現状はあります。

しかし、ベンチから何度も指示を出し続ける姿、雁ノ巣で若手に対しての熱血指導をする姿。この人のことはまだまだ全然分からないことは多いけど、それでもチームの数年後を見てくれているということは少しずつ伝わってきます。ファビオ監督は選手を信じています。僕としてはファビオ監督を信じなければいけないと思うのです。

ということで本題の「福岡に絶対的なセンターフォワードが必要な理由」に移ってきましょう(完全に終わりのテンションだった)。

※ちなみに、この記事を書いている途中に実際にセンターフォワードが加入したので、こういうところが彼に求められているということを意識して読んでいただけるといいと思います。

絶対的なセンターフォワードが必要な場面が3つありますので、それを自分なりに考えてみました。

1)前線でのエアバトラー
2)セットプレー
3)得意のサイド攻撃の最後のピースとして

1)前線でのエアバトラー

まず必要な場面が前線のエアバトラーとしてです。つまりはクリアボールやゴールキーパーからの高いボールに対して競り合いをしてくれる対象ですね。いままではこの役割を城後選手に求められていましたが、彼の得意分野ではなくチームとしても城後選手としても苦しい展開が続いていました。

ここに強力なセンターフォワードが加わり、その役割を担当してくれることでチームが細かいパスで繋げないときや、相手チームのプレッシング時のはけ口として大きな役割を果たしてくれるだろうと考えることができます。

2)セットプレー

僕としてはここが実は一番効果が期待できるところだと思うのですが、実は福岡は去年からセットプレーからの直接フリーキック以外での得点がウェリントンがいた時に比べて大幅に減っているのです。2017年にはセットプレーからの得点が19点とその年の全体の3割を占めていました。しかし、ウェリントンが抜けた昨シーズンはセットプレーからの得点が9と全体に占める割合が1.5割という減り方をしています。その差10点分です。

やはりそこの穴はプレーオフ圏内に入れなかった一つの大きな要因だったと感じています。今年も相変わらず絶対的なフォワードはおらず、ここにセットプレーから得点ができる選手が加わるだけでも勝ち点0の試合を1に、勝ち点1の試合を3に変える可能性を手っ取り速く増すことができるのではないかと思います。

3)得意のサイド攻撃の最後のピースとして

これに関しては今年の福岡のストロングポイントであるサイド攻撃のフィニッシュを担当するという意味を込めて3つ目に書いてみました。今年のサイドバックはいままでとは訳が違うくらい攻撃的なポジションを取ります。

そしてその分、サイドからのクロスも多くなってきます。琉球戦でも長崎戦でも、あとは決めるだけというようなチャンスが幾度となくありました。その最後のピースとして、ヘディングでも、足元でもゴールをねじ込めるようなスーパーストライカーの到着を待ちます。いや、理想を言うなら木戸選手にその役割を担って欲しいところです。

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さていかがでしたか、今回は6,000字くらいのボリュームで読み応えがあった方ではないかと思います。まだまだ分かりやすく伝えるような技はないので、とにかく書いて世の中の反応をみながら改善をしていこうという次第です。

もっと分かりやすく、経験のある方のレビューが見たいときは、河治さんのレビューをご覧ください。



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