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第8回ちば映画祭上映作品 河の恋人

先日、朝ごはんを食べながら、『河の恋人』の塩見三省さん出演シーンの撮影のときのことを思い出していた。テレビをつけたら、復帰されたお姿が写っていた。塩見さんは、自分の出番でないときもそばにいてくれた。ちょっと姿が見えなくなったら、屋台の花屋でチューリップを買っていた。お土産にすると言っていた。

主役をお願いした桐子には、彼女が中学2年生のときに出会った。指輪ホテル主宰の羊屋白玉さんと、演劇百貨店代表の柏木陽さんがリーダーを務める中学生対象の演劇ワークショップに参加していたひとりが桐子だった。私はそのころ映画の現場にスタッフとして出始めたころだったけれど、志願して、空いている日には記録映像を撮りに行った。

そのワークショップは、14日間を使って演劇をみんなで作り、三軒茶屋のシアタートラムで発表するという企画だった。脚本より前に、衣裳作りから始まった。どんなお話になるのか誰も知らないけれど、やりたい役のデザインをしようという流れだった。桐子は、頭から角が2本生えたキャラクターのようなものを描いた。絵の横に、やじるしマンと書いてある。角の先が三角で、アンパンマンに出てきそうなやさしい顔をしていた。三つ編みにした髪を針金で固定し、真っ赤な衣裳をまとったやじるしマンの桐子は、本番の舞台で、「あなたは本当に武器を持っているの?」と紙にゆっくり書いて、折って、飛行機にして飛ばした。そのとき、桐子と同じチームで、一緒に紙飛行機を飛ばしたのが、『河の恋人』で親友役をお願いした夏実だった。

映画に出てほしいとお願いしたときは高校生だった。親御さんの了解も得て、下校の途中で待ち合わせをして話したら、断られた。主役じゃなかったらいい、主役はやりたくないとのことだった。出演を快諾してくれた夏実にも協力してもらって、一緒にボーリングに行ったり、焼肉を食べたりした。根負けして出てくれることになった。現場が始まると、スタッフや共演者たちのことを気に入ったみたいで、たのしそうだった。みんなに会うことのたのしみで、やってくれていたのかもしれない。

ラスト近くの場面で、桐子のト書きとして書いた言葉は、劇作家の如月小春さんの戯曲『家、世の果ての……』に書かれたト書きだった。亡くなるすこし前の立教大学の授業で、ここ、ちょっと前に出てやってみてと言われ、みんなの前で演じたことがある。むずかしいでしょうって言われた。本番で、桐子はそれを10分以上つづけた。


第8回ちば映画祭 杉田協士監督特集① “出会いと別れと再会の可能性をめぐる歌“

上映作品 『カモメ』、『河の恋人』、『遠くの水』

3月20日(日)13時50分から 当日料金1000円

千葉市生涯学習センターにて(千葉市中央区弁天3丁目7−7 JR千葉駅から徒歩8分)

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