まるでドラえもんみたいだ。①

今までよりかは長くなります。ので。


皆さんは、レコードというものを知っていますか?

数年前からアナログ盤のセールスが増えた。
なんて話を聞いた気がするので、
触った事はないが知っている。
なんて人も結構多いと思う。

スマホとイヤホンをBluetoothで繋ぎ、
世界中のありとあらゆる音楽が聴けるご時世だが、
未だにレコードを買う人は結構いる。

CDより3回りほど大きい円盤に針を落として聴くレコード。
少しばかり知っていた方が、この後の話もわかりやすいので、レコードの原理を簡単に説明しておく。


「わーーーっ!!とかジャーーン!」って音鳴らす

頑張ってその空気の振動を針に伝える

頑張って振動が伝わっている針で何かに溝を刻む

頑張って刻まれた溝をまた針でなぞる

頑張って針がなぞった振動を大きくする

また「わーーーっ!!とかジャーーン!」
って音が鳴る

原理的にはこれだけ。
今、世の中に出回っているレコードもこれ。

溝をなぞれば音が出るので、
レコードは聴こうと思えばレシートで聴けるし、
(YouTubeでレコード レシートで検索)
振動を刻めれば何でもいいので蝋や鉄や、チョコレートなんかでもレコードは作れる。

実際、開発期のレコードは蝋で出来ていたそうだが、柔らかすぎて何度も再生すると削れてしまって聴けなくなるらしい。

もちろんそんな物の音がクリアで鮮明なわけがなく、より良い音を目指して塩化ビニールになり、電気信号に変わりアンプが出来たりやがてデジタルに置き換わっていく。

そんなレコードだが、実は最初に発明したのは
誰もが知るあの発明家、エジソンだ。

といってもエジソンが発明したレコードは、
我々がイメージする円盤型ではなく、
トイレットペーパーの芯のような円筒型だった。
本人も音楽鑑賞用というわけではなかったらしい。

現代でも聴かれているレコードは、
ベルリナーという人が発明したんだけれど、
詳しい話はまたの機会に。


と、まあここまではほぼ受け売り。

金沢に金沢蓄音器館という所がある。
常時150台近くもの蓄音機を展示していて、
中にはレコードを自由に聴けるスペースもあったり、
1日に何度か古い蓄音機を再生してみたり、
ホントに素晴らしい所なので機会があれば
是非行ってみてほしい場所なんだけど、
そこの館長の話だった。

今日は俺がそんな音の博物館に行き、
100年前の音に確かに触れた話。



________「では、当館で1番古いタイプの蓄音機の音を聴いてみましょう。」

そう言って館長が蓄音機のセッティングを始めた。
洗面台よりもやや高さがあるその蓄音機は、
現代に生きる我々からすると
音楽を聴くには大きすぎる木箱で、
『Edison』と誰もが知る大発明家の
今まで1度も見た事がないロゴが刻まれていた。

1914年から発売されたものなので、
およそ100年近くも前の物らしいが、
そう感じさせないくらいに物凄く綺麗に手入れが
行き届いている。

100年前、というと何故か武士や江戸時代を想像してとても昔に思えてしまうのだが、
ゲームキューブが発売されて20年以上経っているのを考えると、そんなに昔でもない気もする。

そんな事を考えていると
蓄音機のセッティングが終わり、
館長がかけたのはタンゴの名曲
『ラ・クンパルシータ』

・・・だったような。笑

青いトイレットペーパーの芯みたいなレコードが回転し、ザザッ、と何度か大きなノイズが流れた後、ラッパのようなホーン部分から音が鳴る。

________ノイズだらけな上ロー感はスカスカで、
何人がどれくらいの広さの場所で演奏しているのか
全く見当もつかない音。
とても現代で聴けるクリアでレンジが広い音とはかけ離れているが、その音には何故か異常なまでのリアリティを感じた。

「この蓄音機から流れた音を初めて聴いた当時の人達は、箱の裏に回ったり、中を覗き込んだりしたそうです。」

と言っていたが、俺がその当時の人だったら
きっと同じような事をしていただろうと思う。
あるいは、魔法だ何だと騒いでいたかもしれない。

実際、匂いはせずとも確かにその当時と同じ空気の振動が現代の空気を揺らし、
微かにだが木箱の向こう側に紛れもない演者の鼓動を感じ、少しだけ体温が上がったような気がした。

館長が途中で再生を止め、
張り巡らせていた感覚が100年前の音の中から帰って来た時、ふと思った。

『これってもうタイムマシンかもしれないな。』

続く

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