見出し画像

ホホホ座だらけマルシェ&ホホホ座談会に行きました

祇園祭シーズン真っ只中の京都、皆様いかがお過ごしでしょうか。四条河原町が鬼畜のような人口密度になるこの時期ですが、チェーン店は意外とすいてるんですね。河原町駅直結のサンマルクで塩はちみつチョコクロをかじりながらこれを書いています。吉田です。

noteには初めて書くので自己紹介しますが、昨年ki-ftからアンテナ編集部に合流した音楽ライターです。最近では御影ロマンスのライブレポートなどを書きました。もともとは岡村詩野氏が数年前からやっている音楽ライター講座の受講生で、氏が主宰する音楽メディア・TURNにもぽつぽつ寄稿しています。

ですが今回は音楽の話ではありません。日曜日、ホホホ座浄土寺店にて行われた〈ホホホ座談会〉に行ってきました。

京都の個人書店やセレクトショップに明るい方からすれば、ホホホ座といえばまず浄土寺店、かつてガケ書房を営んでおられた山下賢二さんのお店というイメージが強いでしょう。ですが知られている通り、ホホホ座は全国に複数お店があります。いずれも系列店ではなく“店名を共有しているだけ”というゆるやかなつながりで、各々独立して運営されているのです。その最初のお店が浄土寺店。
かくいう私も、浄土寺店がオープンする少し前まで岡山にいたからか、京都で最初にホホホ座の名前を聞いた時は「尾道のお店じゃなかったっけ?」と思った記憶があります。この日はその尾道店(ホホホ座尾道店コウガメ)を含め、全国各地のホホホ座の店主が集うトークショーなのでした。

このイベントは浄土寺店店主である山下賢二さんと松本伸哉さんの共著『ホホホ座の反省文』の刊行記念イベント。好きなものを扱うだけではまかり通らない小商いの実情が綴られているのですが、決して波乱万丈の暴露本というわけではなく、ただただ“テトリスの最後の上のほうの忙しいのをずっとやってる感じ”(本文より)という肌感覚がストレートに落とし込まれた一冊です。ゆえにトークショーも、山下賢二さんと加地猛さん(山福×ホホホ座三条大橋店の主にして100000tアローントコの店主です)が醸すゆるやかな空気の中にもお金や売上の話がスルスル飛び交う率直な話し合いの場となっていました。トーク“ショー”という表現は正確ではないですね。掲げられている通り“座談会”、ともすれば“ミーティング”とも呼べそうな面白さでした。特に近畿外のお店はほぼ初対面同士だったそうで、「今後こういうことやってみましょうよ」という話も出ていたり。

小商い、特にカルチャー関連のお店となるとついセレクトショップ的なものを想像しますが、それぞれのホホホ座の運営形態は私が思っていた以上に様々でした。意外にも、お店ひとつでやりくりしているのは浄土寺店と交野店((本)ぽんぽんぽん ホホホ座交野店)のみなんだそうです。ホホホ座西田辺は主婦業との兼業、ホホホ座金沢はデザイン会社TONE.Incの店舗部門で、今治ホホホ座はチーム数人のカンパで運営しているとのこと(アンテナもカンパに近い感覚なので一方的に親近感を覚えました)。そして先述の尾道店は今は実店舗がなく、イベント企画とフェス等への出店を中心に活動されています。それぞれ仕事も立場も扱う商品も異なるので、いわゆるブランドイメージとしてのホホホ座って、実はかなりあいまいなんですね。“ホホホ座”という一度見たらまず忘れない字面があるのみ。あとのイメージは全て、各店のやり方とお客さんの解釈に委ねられている。だからこそ各地のホホホ座は、それぞれの拠点に根ざした個人店であり続けているのかもしれません。
ホホホ座同士のつながりの良さについて、座談会では尾道店の髙亀さんが「干渉はしないけど恩恵がある」と表現されていました(うろ覚えなので間違っていたらすみません)。その恩恵は、印象を制限せず記憶にだけ残る屋号と、運営にはほぼタッチしない山下さん・松本さんのスタンスだからこそもたらされているのでしょう。

ホホホ座の襲名申し入れも含め、山下さん・松本さんはお店の運営や企画に関してさほど厳密なルールを設けてきたわけではないようです。基本的に来る話拒まず。とはいえ譲れないラインも決して無いわけではなく、そのあたりのお話を各店ごとに伺えたのも嬉しかったです(各店の方々、私の拙い質問に正面から応えてくださり大変ありがたかったです…)。それぞれの状況があるなか概ね共通していたのは、友人やお客さん、関わってくれる人たちに対してまず誠実であること、という線引きでした。

決して利便性が高いとは限らない個人店でなにかを買うとき、私達は同時に、彼らが各々抱いているその誠実さにもベットしているのだと思います。その“誠実さ”はお金どうこうを越えたところにあることが多いと思うのですが、かといって、儲けを追求しないことそれ自体を美徳とするわけにはいきません。一人の客として好きなお店の存続を願うということは、(ほんの少額ながらも)自分で選んで賭けたその誠実さが、誠実以外の何かに負けてしまわないことを願うということなのかもな……と、お店を選ぶ意味について改めてかみしめた夜でした。

日中のマルシェでは尾道のレモンソーダや金沢のボーロを買ったほか、浄土寺店でもふつうに買いもん堪能してました。CDは湯浅湾とWATER WATER CAMELを購入。特にWATER WATER CAMELはサブスクにも最高の大貫妙子カバーがあるのでぜひ。

ライター:吉田紗柚季

#ホホホ座 #古本屋 #雑貨店 #小商い

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?