わたしとそっと011

Sotto9周年企画「わたしとそっと」 第4回~デザイナー・數間幸二さん~

 私たちは、NPO法人京都自死・自殺相談センター Sottoです。
京都で「死にたいくらいつらい気持ちを持つ方の心の居場所づくり」をミッションとして掲げ活動しています。
この連載企画「わたしとそっと」は、Sottoの設立9周年を記念し、Sottoのことを深く知る人々にインタビューし、「わたし」の目線からSottoについて語ってもらう企画です。

 第4回のご相手は・・・Sottoの広報物のデザインをしてくださっている數間(かずま)幸二さん。
居場所づくり活動やシンポジウムのパンフレットなどのデザインを担当していただいています。
どういう経緯でSottoに関わるようになったのか、數間さんから見たSottoの印象とはどんなものか、Sottoの仕事をする上で、心がけていることは?
そんなあれこれを、実際に訊いてみました。

▲數間幸二さん

ー本日はよろしくお願いします。ではまず、来歴からざっくりお聞きできればと思います。 学生時代なんかはどのように過ごされていたのでしょうか。

福島県から、大学の進学で京都に出てきました。
大学時代はアホ学生をしておりました(笑)。
だらだら過ごしていまして、一年留年しちゃいました。専攻は国際関係学でした。

ー学生時代からデザインを専攻されていたわけではなかったんですね。

そうなんですよ。でも美術部に入っていました。元々ものを作りたい願望はありましたね。
留年した5回生の時にものを作るのがめちゃくちゃ楽しく感じて、このままものづくりでやっていこうっていう風に決めたんです。

ー大学卒業後はそういうお仕事をされていたんですか?

いえ、当時は好きではいたものの、絵のことをよく知らなかったので、もう一度改めてデッサンの勉強をしてみようと思って、美大の予備校に2年間通いました。
その後、京都芸術短期大学(現在は京都造形芸術大学に統合)に入りました。なので合計4年ほど絵の勉強をしていました。

今思えば、当時は全然後先考えてませんでしたね。
短大卒業後は就職して、大阪の印刷会社に入りました。
仕事では、コンピューターで印刷物を作っていました。

ー今は独立されて、「カズマキカク」としてフリーでお仕事されていますよね。

2014年に独立したので、もう5年経っていますね。
家の四畳半の狭い部屋で、一番奥の所に陣取って、そこで半ば引きこもり状態で仕事をしています(笑)。

作っているのはチラシやパンフレットが多いですが、関わっているプロジェクトのグッズを作ったりもします。
うちわやバッジ、 Tシャツなどです。

ーフリーで活動されていた數間さんがSottoに出会った経緯はどういう流れだったんでしょうか。

2017年に「左京朝カフェ」というまちづくりのプロジェクトに関わっていて、そこで集まりがあった際に、
あるまちづくりアドバイザーの方と出会ったんですね。
たまたまその方が、Sottoとも繋がりがある方だったんです。

それで、当時Sottoさんはデザイナーを探しているタイミングだったようで、「こういう団体のお仕事があるんですけど、どうですか?」っていう風にその方に紹介していただきました。
僕も元々根暗なところがあるので、自殺というテーマに合うところがあるかもしれないと思い、お仕事を受けました。

ーSottoで最初にやっていただいたのが、ごろごろシネマのパンフレットのデザインでしたね。
それからというもの、ごろごろシネマ以外にもSottoの他の活動でお仕事を頼ませていただいています。
そこで、初めてSottoの仕事をしたときのSottoの第一印象ってどんな感じでしたか?

ほわっとしてました。 ほわっとしてるんですよ。
スタッフの皆さんは聞き上手な方が多くて、すごく安心感がありました。

代表の竹本さんも、シンポジウムなどで自分の弱さをさらけ出していて、上から目線という感じがなくて、皆さん同じ目線を持っているんだなと思いました。

ーほわっと、ですか(笑)。なるほど。
これまで色々なお仕事を手がけていただいている數間さんが、Sottoの作品を作る上で心がけていることって何でしょうか?

Sottoさんのお仕事では、「人間臭さ」っていうのをまず出していこう、ということが自分の中のテーマとしてあります。
理路整然としたデザインからは離れて、あえて崩したり、手書きにしたりしてデザインを作っています。

機械的なデザインだと、「物」として扱われてしまうような印象を見た人に与えそうで。
会社で働くなどしていてもそうなんですけど、システムの中で「物」として扱われちゃう苦しみっていうのはすごく大きいと思うんです。

ー人間臭さっていうのは、まさにSottoが大事にするものと共通する部分があると思います。
「Sotto(そっと)」という名前も、どこか人間臭いと言えますね。

デザイナーという立場だと、死にたいという思いを抱えている方に直接会う機会はなかなかないんですが、その中でも僕に出来る事というのは、紙の媒体の中を通してSottoさんの存在感・人間の存在感を伝えることなのかなと思います。

それが成功か失敗か、ちゃんと人に届いているのか、ということは直接は分からないんですけどね。
マンネリなデザインにならないように頑張っています。

ーでも、心地良いマンネリ感というか、デザインが毎回コロコロと変わらないことの安心感もある気がします。
そういう意味で、ごろごろシネマのパンフレットは毎年マイナーチェンジしつつも安定感があってほっとします。
話は打って変わりますが、趣味はどういうものがありますか?

趣味ですか、趣味は・・・・う、うーーーーーーーーん。何だろう。

ー仕事が趣味という感じでしょうか?

そうなっちゃっいましたね。
もし時間があったら読書でもしたいんですけど、どうしても仕事のことばかり考えてしまうんです。
ただ最近は子供が釣りをやりたいと言い出して、一緒にやってみたりしています。

どちらかと言えばインドア派なのですが、外に出るのは嫌いじゃないです。外でぼーっとするのが好きです。

ー趣味が仕事になるというのは、多くの人が理想としているところではないかと思います。同時にそれゆえの苦労もあるかと思いますが。

プライベートと仕事を切り替えられないですからね。土日に「やったぁ!」って思えないですもん。
定年退職もないし。

僕はデビューが遅かったので、元を取ってやろうと思って、90歳くらいまで現役だった、やなせたかしさんを目標に頑張ろうと思っています(笑)。

▲葛飾北斎の画集について熱く語る數間さん

ーすごく高い目標ですね(笑)。では、仕事で行き詰まった時の気分転換は何がありますか?

最近、メンタルの調整の一環で、毎朝必ず散歩するようにしているんです。
ひと通り朝の家事が終わったら、近所の公園を一周して、その後小さな丘に登って京都の街を眺める儀式をしています。

ーちょっと散歩するだけでも、気持ちは大分リラックスできますよね。

そうですね。
また疲れた時には銭湯に行きます。僕は銭湯に行ったら治るタイプなので。

ー銭湯って特殊な空間で、銭湯が好きな人は、たくさん人がいるけど皆がそれぞれの世界に浸っている、っていう空気が心地いいのかもしれませんね。

吉本隆明さんの『ひきこもれ』という本があって、その中でひきもりの大事さを唱えていて、銭湯を勧めていました。
直接のコミュニケーションではないけど、お祭りとか雑踏の中に一人で入って他の人に囲まれるように、人との関係性はそれくらいの感覚でもいいのではないかと、そんなことを書いていました。

ーSottoの居場所づくり活動もある意味では銭湯に似ているかもしれません。そっとそばにいる活動ですから。

ほどよい距離感の中で時間を共有する、それがちょうどいいのかもしれませんね。

ー学校なんかだと、皆仲良くしたり、友達を多く作ったりするのが大事なように教えられますよね。
ちょっと人間関係でミスをしたら、学校ではそれが何年も続いたりします。
ときに、ものすごくきつい環境になってしまいます。

子供の頃は自然に囲まれた田舎でのびのびと過ごしていましたが、中学と高校は今思えばガチガチの環境でしたね。
十二指腸潰瘍になったりして、当時自覚はなくても色々とストレスを抱えていたと思います。
学校のような環境で無意識に死にたいと思う人が出てくるのは、ある種当然なことかなと思います。

ー学校特有の、あるいは思春期特有の苦しみがありますよね。
最後に、これまでのSottoとの関わりの中で印象的だったことを何か教えてください。

去年度のシンポジウムの打ち上げに参加させていただいたんですけど、その時に僕の近くに座っていた、普段は電話相談員をされている方が、酔っぱらって堀ごたつの中に入っちゃったんですよ。

何だかそれがよかったです。
Sottoさんの活動の最前線で頑張っている方が、そういうふざけたこともするんだというのが衝撃的でしたね(笑)。
どこか皆さん天然なところがある気がします(笑)。

ーそういうちょっと抜けたところがSottoの空気感を作っているんでしょうか。
銭湯についても、良い話ができました。銭湯とSottoとは似ているかもしれないという。
本日はありがとうございました。ついついたくさん話してしまいましたね。
數間さんのお茶目な面が今回の記事で伝わればと思います(笑)。

趣味のことをうまく答えられなかったのが残念だなぁ・・・。
うまく記事になればいいです。
こちらこそありがとうございました!

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 いかがだったでしょうか。楽しんで読んでいただけたならば幸いです。
「わたしとそっと」は今回が最終回となります。
Sottoをすでに知っていたという方には、これまで見たことのない角度からSottoについて知っていただく機会になったのではないでしょうか。
「わたしとそっと」を通じてSottoを知ったという方は、今後ともnoteの更新は続けていきますのでぜひフォローなどよろしくお願いします。

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