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今日も気づけば漁港釣り 4振り目

 アジやイカ、キス、カサゴ、メバルー。魚種が豊富な丹後半島の日本海は、堤防からの釣りでもさまざまな獲物が狙えて面白い。一方、お目当ての魚が釣れず、やきもきすることも多々あります。2021年秋に宮津市へ赴任した直後に海釣りを始め、現在はルアーでアジを狙う「アジング」を極めるべく足しげく漁港に通う記者が、釣果や景色、釣った魚で作る料理を紹介します。さて、今日は何が釣れるのやら…。

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釣果はなくとも竿は振る

 昨冬は2月下旬まで宮津市街地でも積雪が続くほどの大雪だったが、今年は「10年に1度」と言われた最強寒波が襲った1月下旬にぼちぼち積もったくらいで、暖冬のようだ。2月に入ると降雪より降雨が多くなった。春遠からじ-。と、言いたいところだが、釣りをするにはまだちょっと肌寒い。前回、海洋センター所長にも「冬は無理だよ」と言われたばかりだし。

 そうは言っても、本当に春まで待とうものなら、ただでさえ釣り下手なのに、さらに鈍ってしまう。そもそも、釣りをする習慣が薄れ、おっくうになってしまう点も懸念。ここは一つ、練習のつもりで竿を振っていこう。

宮津市長江 長江漁港/2月9日午後8時~午後9時半/曇り 
気温4度 月齢18.3 中潮(タイドグラフBI調べ)

 夕方の取材を終え、そのまま宮津市北部の漁港へ直行した。アジングなど海のルアー釣りを通称「ライトゲーム」といい、細く短い竿とリール、ルアーで釣りができる手軽さで、仕事帰りでも楽しめるのが魅力の一つだ。

長江漁港。小規模ながら2基の常夜灯が心強い。

アジが釣れぬのでメバルに絞る

 そして、今回はターゲットをアジではなくメバルに絞った。寒くてアジが釣れなかった昨冬、時々20センチ台のメバルが釣れて、風前のともしび状態だった釣り魂に再び火を付けてくれたのだ。

 以来、アジ用の針やワームのほか、メバル用も購入するようになった。ちなみに、メバルのルアー釣りは「メバリング」と呼ぶ。狙っている魚のルアー釣りは、おしなべて「○○ing」と称される。ガシラ(カサゴ)は「ガシリング」、チヌは「チニング」。いや、本当に。

【今日の釣り具】
ロッド・鰺道5G AD5-S682M/AJI (メジャークラフト)
リール・SOARE(シマノ) C2000S
ジグヘッド・メバスタ!M2.0㌘(TICT)
ワーム・熟成アクア 活メバルミノー1.6 (エコギア)

 専用の竿はないものの、針とワームは対メバル仕様に。見比べてみると、アジ用の針よりも軸が長く太め。

 そもそも、アジとメバルで釣り方がどう変わるのか。アジ狙いでアジ以外釣れているものだから、そんなに関係のないものだという先入観があった。これを機にインターネットで調べて違いについて押さえてみよう。

 まずジグヘッド。アジ用は「ゲイブ」と呼ばれるフックの部分が外に開いている。アジはエサを口に含んでもすぐにはき出す習性があるため、瞬時に引っかけるのに特化させているようだ。また、口の左右が柔らかく針が刺さっても抜けやすいため、上あごに刺さりやすくなるように、デザインされている。

 一方、メバル用はゲイブが真っすぐ。開いているよりも針が魚の口の中に入りやすく、深く引っかかりやすいデザインになっている。

左がメバル用ジグヘッドで右がアジ用ジグヘッド

 さらに、調べを進める中で、釣法も違うと知った。アジングは、一定の海中の層(レンジ)からルアーを上昇させては沈め、たわんだ糸をリールで回収する「リフトアンドフォール」がオーソドックスな手法だ。一方、メバリングは単純に糸を巻く「リトリーブ」ないしルアーを左右に跳ねさせる「ダート」が主流らしい。

備えがないので、憂うばかりなり

 いやー、リフトアンドフォールしかやっていない。そもそも、ダートって釣法は初耳だ。調べてみると発見が多い一方「先んじて知っておけよ」と自省してしまう。仕事でも、この手の反省は多い。取材前にもっと下調べしておけば、もっと突っ込んだ質問もできただろうに。

 釣りと仕事は重なり合うことが多く、考え方や心構えが役立つ時もある、と思っている。そんな教訓じみたことも紹介していければ。

 前置きが相当長くなったが、いざ釣行。風は弱いが空気が冷たい。ただ、この漁港は常夜灯が2基付いており、足元がかなり明るくて助かる。

幸先良い1投目のヒット

 今日は最初から海底をぐんぐんと攻めるスタイルで臨む。と、1投目からヒット。15センチ足らずのガシラか。リリースしたが、幸先良し。もう少し大きいのを釣れたら持って帰ろう。

1投目に釣れたガシラ

 堤防の周りをぐるぐるしながらメバルを狙う。今夜は満月のようで、だいだい色の月が周囲を怪しく照らしていた。

だいだい色に怪しく光る月

 リールを巻き、糸を張った状態を保とうとしていると、数回ほどぬるりと引っ張られるような手応えがあった。海藻に引っかかっている感触のようだが、魚が引いているような気もする。

 針が大きすぎで口に入っていない? ここで、迷いが生じていつものアジ用のジグヘッドに戻してしまった。この判断が良かったのかは定かではないが、仕事でも判断の有無で失敗することよくあるよなぁ。釣りに集中しよう。

今回、最も大きかったガシラ。20㌢前後か

いや、アジはいつ釣れるんだよ(編集者の感想)

 幸い、今回はヒットが続いた。ただ、釣れども釣れどもガシラ、ガシラ、ガシラ。大小7、8匹全てガシラだ。15センチより小さいものはリリースした。お目当てのメバルは釣れず。ダート釣法を知らなかったからかなぁ。しかし、これは次回に試せるということで、楽しみとして取っておこう。

【本日の釣果】
ガシラ 5匹 15~20㌢

今回の釣果。メバル狙いだったが全てガシラだった

あなたが私にくれたもの 伊根の魚のレシピ本

 今回、料理をする上で強い味方ができたので、少し紹介したい。

 先日、仕事を終えて帰宅しようとしていたところ、京都新聞宮津支局の後輩記者(26)が、やおら冊子を手渡してきた。表紙には伊根町のマスコットキャラクター「ふなやん」のかわいらしいイラスト。伊根の家庭に伝わる料理をまとめたレシピ本だ。そういえば、この前この冊子の記事を書いていたな。

後輩記者が譲ってくれた魚料理本

後輩記者が書いた記事はこちら

 「これで、美味い魚釣って、美味い料理作って、美味い酒飲んでください」。

 とは、言われなかったが、後輩もこの釣り連載を知っており、一助になると思い冊子を譲ってくれたのだろう。

 早速、レシピを参考に煮付けを作った。身は小さいが味はしっかり甘じょっぱく仕上がっており、ふわふわ食感だが、かみ続けると身が締まる。ご飯がほしくなる味付けだ。帰宅途中に立ち寄ったコンビニで買った白杉酒造(京丹後市)の「丹後のヒカリ」で一杯。煮付けにも、別にさばいた刺身にも合う。

ガシラの煮付けと刺身

 ガシラはヒレが鋭利で調理には注意を要する。実際、調理中にヒレが中指に刺さって血が出てしまった。だが、煮付けても刺身でも美味い。今度釣れたときには、唐揚げやみそ汁にも挑戦したい。


能美 孝啓