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認知症との付き合い方③ 丹野智文さんのお話


 認知症との付き合い方についてお届けしてきた3回シリーズの最終回は、丹野智文さん(47)=仙台市=のお話をお届けします。
 丹野さんは、認知症の人自らが認知症の診断を受けた人の相談に応じる「おれんじドア」を2015年に全国に先駆けて始めました。昨年出版された「認知症の私から見える社会」(講談社+α新書)も話題の書籍となりました。
 昨秋、京都市で行われたオンラインフォーラム「認知症とともに」(市長寿すこやかセンターなど主催)の講演内容をお届けします。
(まとめ・鈴木雅人)

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 安心して相談できる人がいれば、認知症の不安は軽減できるし、工夫したり、ほんの数分を助けてもらったりするだけで困らなくなる。周りに子ども扱いされることが最も困り、嫌だという人が多い。

 1人で出掛けることや財布を持つことを禁止、常に失敗を指摘され、行動の制限や監視があって大変という声が多い。周りは悪気があるわけでなく良かれと思っているので、なかなか分かってもらえない。大変だな、先回りして何でもやってあげよう、道に迷ったらかわいそうだ、って。優しさから勘違いしちゃう人が多い気がする。

 自分で選んだり、決めたりすること(の持つ意味の大きさ)を、もっともっと知ってほしい。そうでないと本人があきらめてしまう。あきらめると、しゃべらなくなり無表情になっていく。

 この間、仙台であった認知症の人の集まりで、11人中8人は1人で地下鉄とバスを乗り継いで来た。みんな道に迷い、みんな人に聞いて来た。初めて聞くときは不安でも、成功すると、また聞こうと思える。成功体験を積み重ねるから、1人で来られるようになる。周りの人は「迷ったなら私が連れて行く」などと失敗のまま終わりにさせず、成功体験で終われるように挑戦させてほしい。

 認知症の人は、「できること」「できなくなったこと」「やりたいこと」、この三つを周りに伝えた方がいい。私は人の顔を認識しづらく、会社の仲間たちにスキーを誘われたが、はぐれたら困ると思った。でも、自分が見つけようとするのは大変だが、見つけてもらえばいい。仲間たちが一緒に考えてくれて、いつもパンダの着ぐるみの帽子をかぶって滑っている。

 8年間で400人近くの認知症の本人と話してきたが、(周りへの気持ちを)口に出すことができない人がいっぱいいた。認知症になったときに同じ思いをしないよう、みんなが少しでも気付き、変わってくれたらうれしいね。

自らの体験を語る丹野智文さん(2017年4月、京都市左京区)


 たんの・ともふみ 39歳で若年性認知症と診断される。診断後も自動車販売会社で勤務を続け、厚生労働省の「希望大使」として前を向いて暮らす姿を発信している。



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