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【MTG】青黒ライブラリーアウト変遷記【モダン】

「現在に存在する全てにとって、過去は基盤である。
我々は先祖がすでに見つけたものを再構築するに過ぎぬ。」
――― 記憶の賢者、サチミール.

現役随一の青黒LOプレイヤーである赤ティボさんのTwitter経由で「青黒LOって結構長い事歴史のあるデッキなのでは? 進化の過程を紐解いていけば面白いのでは?(要約)」といったやりとりを見かけ、せっかく自分も同じデッキを長いこと使い続けているのだから痕跡くらいは寄与できるかな、と記録を残す事に致しました。

あくまで青黒LOのイチ使用者からの目線のため、ちょくちょく当時のディティールや環境に差異があるかもしれませんがご容赦ください。
またMOに関して私はデッキリストを追いかけてるだけなため、赤ティボさんところの同記事も併せて読むことでより正確になるかと思われます。
あとなんか11000文字くらいあります。

それでは青黒LOこと青黒LOライブラリーアウトの成立から現代に至るまでの変遷をご覧ください。

■青黒ライブラリーアウトの変遷

【2011~2012】 モダン制定

エクステンデッドとレガシーの中間のような立ち位置でスタンダード後の受け皿を目指して作られたモダンですが、誕生当初は溶岩の吹き荒れる原初の地球の如き大荒れ環境でした。
12Postや双子に猛火の群れ+感染コンボが上げた地獄の産声に始まり、親和、出産の殻、青赤ストーム、デルバーにジャンドにZooに…バラエティ豊かな殺意を凝縮したデッキが立ち並びます。
モダン…制定当初から変わってないな…。

青黒LOはそんな中で産声を上げる…事は無く、この頃はまだ影も形もありません。大半のパーツは制定当初に揃っては居たものの環境速度にまだ追いつけなかった、或いは広大なプールの中からまだデッキが見出されてなかったものと思われます。


【2013】 最古のリスト確認

・2013年2月1日 ギルド門侵犯
・2013年5月3日 ドラゴンの迷路
・2013年7月19日 基本セット2014
・2013年9月27日 テーロス

モダン制定後、存在が確認できる最古の青黒LOリストは2013-07-16のもの。
https://www.mtggoldfish.com/deck/195623#paper

デッキ誕生時から屋台骨を支えるレジェンドたち

面晶体のカニ不可思の一瞥書庫の罠彼方の映像外科的摘出墓所への乱入催眠の宝珠など骨子となるスペルはこの時点で固まっています。
また幽霊街による「探しますか?」という書庫罠2択迫りや、最後の一押しとなる殻船着の島、カニの上陸をサポートできる雲の宮殿、朧宮等も既に搭載済でデッキコンセプトの強度が伺えます。
他にもボーラスの占い師、思考掃き、強行/突入、精神の葬送などの懐かしき面々も居り、今見ると感慨深いものがありますね。
また、サイドの虚空の力線4に今に至るまで連綿と続くエムラクールへの憎悪を感じ取れます。

ライブラリーアウトのカラーとして青黒が選ばれた理由は何より不可思の一瞥でしょう。2マナで10枚削るという効果はシンプルながら現在でもこの効率を超えるものはなく、ここから長きに渡って青黒LOの屋台骨を支えてくれます。

10年近くエースで有り続け、よく変換を間違える呪文

デッキの成立時期からして、デッキとしての形を纏めたのは実質2種目の不可思の一瞥となる強行(突入)、及び大量のライフゲインをもたらし生物デッキに地獄を見せる墓所への乱入ではないかと思います。
他では当時類似デッキも何もないまっさらな状態から催眠の宝珠を見つけ出してきたビルダーは頭がどうかしてます(褒め言葉)。

なお完全に私事ですが、私が青黒LOを組もうとした切欠はまつがん(__matsugan)さんこと伊藤敦氏のMOCS 6-2リストであった様に記憶しています。
>UBR by __matsugan
>Event: Modern MOCS #5831913, 6-2(Deck Date: Aug 18, 2013)
https://www.mtggoldfish.com/deck/198916#paper
中学生頃にミルストーリーでライブラリー破壊戦略の魅力を知り、サイカトグを回して青黒カラーに取り憑かれた男が社会人になってMTGに復帰した折にこのリストを発見し、今のギャザにはこんなデッキがあるのか…と丸砥石を撃たれたような衝撃を受けたのを覚えています。

ウギャアアアアア!!!!!(衝撃)

…実のところ確認できる最古のリストはスゥルタイカラーだったりするのは内緒。死儀礼のシャーマンがいたからね…
https://www.hareruyamtg.com/ja/deck/125642/show/ 


【2014】 汚染された三角州獲得

・2014年2月7日 神々の軍勢
・2014年5月2日 ニクスへの旅
・2014年7月18日 基本セット2015
・2014年9月26日 タルキール覇王譚

2014年9月、ヤフーニュースにもなった友好色フェッチランドの再録によりやっとモダンのマナ基盤が全色均等に近づきます。

くさそう

カニの上陸がキーとなる青黒LOも大きく飛躍する…ことはなく、まだ弱めでマイナーな地雷デッキの立ち位置です。リストも大きな変化はなし。
それもその筈で、同時に収録されたブッ壊れ能力「探査」によりライブラリー破壊戦略は根本的に立ち位置が悪くなっていました。
宝船の巡航および時を越えた探索は翌年1月に禁止されるものの、強大化、わめき騒ぐマンドリル、グルマグのアンコウに黄金牙タシグル…と、これから宿敵となるカードが大量に収録されます。
書庫の罠2発撃った返しでぎらつかせのエルフが強大化2枚つけて殴ってきたなんて笑えない話もありました。

とはいえ長らく使われる万能生物除去の残忍な切断、いぶし銀のサイドとしてPWや力線対策に存在感を発揮する漂流などもここで収録されており、催眠の宝珠で自然と墓地の貯まる青黒LOには強い味方の出現でもありました。

シンプルなテキストは強い


【2015】待機の年

・2015年1月23日 運命再編
・2015年3月27日 タルキール龍紀伝
・2015年7月17日 マジック・オリジン
・2015年10月2日 戦乱のゼンディカー

ローテーション体制の変更となる節目の年ですが、得られたものはマジックオリジンのヴリンの神童、ジェイス程度。
グリクシスデルバーや感染、ジャンドやカンパニーにアミュレットが闊歩する魔境でリスト掲載数も伸び悩み、不遇の時代と言っていいかも知れません。ゼンディカーに再訪しておいて罠の追加も新しいカニも来ないことある?

強いて言えば絶え間ない飢餓、ウラモグの登場によりトロンがフィニッシャーを変更したため、メインで旧エルドラージ三神に怯える必要が減ったくらいですかね。

参考リストはエスパーカラー。
>WUB by salvagers
>Event: Modern Festival Prelim #8418407, 4-1
https://www.mtggoldfish.com/deck/301844#paper 
白をタッチして書庫の罠と相性の良い流刑への道で除去の少なさを補っているほか、神聖の力線や痕跡消し等でサイドの厚みも増しています。

この頃には自分も青黒LOを組み終えて身内と遊んでたんですが、「日本に青黒LO使ってる人間3人くらいしかいない(推定)」等と冗談と自虐混じりに語られていた記憶があります。
ただその当時確認した限り、高田馬場だけで2人、関西に1人フルフォイラーが居ました。何で?


【2016】 躁の書記官獲得

・2016年1月22日 ゲートウォッチの誓い
・2016年4月8日 イニストラードを覆う影
・2016年7月22日 異界月
・2016年9月30日 カラデシュ

年明け早々エルドラージの冬に加えて双子と花盛りの夏禁止というウィザーズが露骨にパック売りに来た寒々しい開幕。
紙は休んでソシャゲやろうぜとモダン熱が急速に冷めて行く中、約3ヶ月後の4月にウギンの眼が禁止となります。

その後、イニストラードを覆う影にて躁の書記官を獲得。ブロッカー兼恒久削り手段を得た事で安定感が増しリスト掲載数も徐々に上がっていきます。

ガイドを止められるタフ3の強さ

また、この頃より罠の橋搭載のリストが増え、ビートダウンへの耐性を高めていきます。カンパニー系の部族デッキが増えたことで不敬な遺品や罠橋と相性の良い集団的蛮行が搭載された結果、苦手としていたバーンへの耐性も多少向上しました。

参考リストは罠の橋メインの青黒LO。
>UB by salvagers
>Event: Competitive Modern League 2016-06-24, 5-0
https://www.mtggoldfish.com/deck/435275#paper  
地上をがっちり固めつつ罠橋でフタをしてその間に削りきる戦略。
暗黒破が当時のウイニー生物への警戒を表すかのようですね。

しかし環境全体でいうと前年解禁されたゴルガリの墓トロールに加えて傲慢な新生子、秘蔵の縫合体追加で強化されたドレッジが勢力を増し、天敵がまた一つ増えます。
それ以外にも先駆けるもの、ナヒリの登場によりエムラシュートが成立。裂け目の突破などの例外を除いて見ることは無くなっていたエムラクールがカムバックし、改めてヘイトを溜め込むこととなります。

公式記事にデッキタイプが認知されたのもこのあたりからですね。
「実際は結構カツカツ、ギリギリのデッキなので本当に好きな人にしかオススメはできないかなぁ」とのこと。ぐうの音も出ない。


【2017】 致命的な一押し、廃墟の地獲得

・2017年1月20日 霊気紛争
・2017年4月28日 アモンケット
・2017年7月14日 破滅の刻
・2017年9月29日 イクサラン

カラデシュは凄い!本当に凄いんだ!の(翌)年。
何といっても致命的な一押しの加入によって白に後塵を拝していた除去性能が格段に向上。アグロに対して罠橋や幻で止める、速度をひたすら上げて削り切る以外の能動的な対応手段を得ます。

当世最高の生物除去

また、1月の禁止改訂でギタクシア派の調査を失った感染、墓トロールを失ったドレッジがそれぞれ弱体化するなどの追い風もありました。

続けてアモンケットにて献身のドルイド+療治の侍臣コンボが成立するもライフを意に介さない青黒LOへの影響は低く、相変わらず立ち位置は悪くありません。むしろ試練に臨むギデオンの紋章が突破出来ずにもんどり打ってました。

破滅の刻では正気減らしが追加され、ピーキーさと引き換えに爆発力も得ます。

さらに9月のイクサランでは廃墟の地を獲得。
"強制的"にライブラリーを探させるようになった事で書庫の罠のカードパワーが大幅に上昇。幽霊街で迫っていた「探しますか?」が「探して下さい(威圧)」になる革命が起きます。

探しましたね?(強要)

罠師の引き込みにより書庫罠を引き入れ、高速で複数枚撃ち込む等の飛び道具も使えるようになりコンボ性も上昇。明らかにデッキとして1つ上のステップに手を掛けました。

ToyBird氏によるモダンチャレンジ全勝等もあり、この頃から明確に「モダンで戦えるデッキ」として使用者も増えた印象です。
>UBR by ToyBird
>Event: Modern Challenge #10942631, 7-0(Deck Date: Oct 21, 2017)
https://www.mtggoldfish.com/deck/802210#paper  
書庫の罠を任意のタイミングで打てるようになった事で正気減らし設置から一気に瞬殺まで持っていく事も可能に。また罠師の引き込みでのサーチがあるためサイドには貪欲な罠が取られています。


【2018】 マイナーチェンジの年

・2018年1月19日 イクサランの相克
・2018年4月27日 ドミナリア
・2018年7月13日 基本セット2019
・2018年10月5日 ラヴニカのギルド

強いて言えばアズカンタの探索獲得くらい。
メタに合わせたマイナーチェンジを繰り返す地味な年。

彼方の映像以外のアドバンテージ源を常に求めている

MOのリスト掲載形式が変わり(毎日5リスト掲載→週2で20枚以上違うリストを並べて掲載)、色々なリストにアクセスしやすくなります。結果として細かな調整の差が見られるようになり、バーン型、コントロール型、ビートダウン型など個性豊かな青黒LOが確認できます。

ラヴニカのギルドでは任務説明を得たことで瞬唱には出来ない書庫罠0マナでの使い回しが可能になったものの、必須パーツとしての定着までには至りませんでした。

強力ながら定着できない系パーツ。偶に思い出したようにリストインする。

環境的には這い寄る恐怖を得て実質こちらのライフを8点スタートにしやがったドレッジ、弧光のフェニックスで成立した青赤フェニックス、MTG2.0と称されたホロウワン等と殴り合うことになり、サイド足りねえ~とみんな嘆いてた年。

参考リストはこの時期のLO強豪プレイヤーBuur氏の7-0リスト。
>UB by Buur
>Event: Modern Challenge #11515717, 7-0(Deck Date: Jul 28, 2018)
https://www.mtggoldfish.com/deck/1241929#paper  
置物の恒常的な削り手段が多め。集団的蛮行+罠の橋パッケージに加えてアカデミーの廃墟で破壊されてもリカバリーが効くようになっています。
サイドのヤヘンニの巧技は生物をまとめてなぎ倒した上で墓所への乱入につながった時の爽快感が物凄かった思い出。

公式記事でまた取り上げられますが、評価は「シブめのデッキ」。シブい顔はよくされますが…。


【2019】 湖での水難獲得

・2019年1月25日 ラヴニカの献身
・2019年5月3日 灯争大戦
・2019年6月14日 モダンホライゾン
・2019年7月12日 基本セット2020
・2019年10月4日 エルドレインの王権

怒涛の一年。
M20にて対象な対応を得てトリッキーなスタイルチェンジが施行されるも、思ったようにデッキパワーは上げられらず。

灯争大戦では夢を引き裂くもの、アショクを得た事で墓地対策とサーチを咎められるようになりますが、同時に収録された時を解すもの、テフェリーでコントロールと押し付けコンボが強化。更に大いなる創造者、カーンによりマイコカーンが成立しトロンも力を付けます。

そしてモダンホライゾン登場。
蘇る死滅都市、ホガークに狂気の祭壇経由でライブラリーアウトのお株を奪われ、「Hedron crab」でリストを検索してもホガークヴァインしか引っかからないNTR気分を味わったほか、氷雪デッキやヨーグモス、ウルザソプターほかの新たなパワーアーキタイプも生まれます。
青黒LOはパワーカード供給の波に乗ることは出来ませんが、虹色の眺望真冬、サイドの否定の力疫病を仕組むものなどの幾つかの採用候補は見つかりました。

最終的に信仰無き物あさりを巻き込んでホガークは禁止となりますが、販売中パックを避けるような露骨で場当たり的な禁止によりモダンというフォーマットへの信頼感は大いに揺らぎました。

ホガーク騒動の落ち着いた頃の10月、エルドレインの王権プレビューにてコメントからして青黒LOへの贈り物となる湖での水難を得ます。

対抗呪文兼殺害とかいうヤバいやつ、便利過ぎてたまに墓地足りないの忘れてしまう。

これまでコンボに対し切削からの外科的摘出or根絶するか漂流自我等で抜くかだった青黒LOに打ち消しという選択肢が生まれ、対応力が爆発的に向上。更に強く立ち回れるようになります。
翌年以降に青単色で使える強力な切削カードが追加され青白LOも成立している中、未だに青黒を選択する理由は「湖での水難を一番強く使えるデッキだから」と言えます。

エルドレインでは他にも物語への没入神秘の論争ヴァントレス城などのカードも供給され控えの層が厚くなりました。
同じセットにカニや罠の橋を鹿に変える馬鹿野郎がいた気がしますが、気づいたら監獄送りされてたのでよく覚えてないです。

参考リストはエルドレインリリース後の青黒LO。
>UB by Brener
>Event: Modern Challenge #11995301, 6-1(Deck Date: Oct 19, 2019)
https://www.mtggoldfish.com/deck/2394184#paper  
湖での水難、ヴァントレス城などでコントロール色を強めにしたタイプ。
スペルが強いので瞬唱の魔道士で使い回す形を取っています。
サイドの白力線のヤケクソ感がすごい。

公式記事では水難登場前の任務説明搭載型を紹介。ノリが変。


【2020】 相棒到来~ルールスの猛威、遺跡ガニの革命

・2020年1月24日 テーロス還魂記
・2020年4月17日 イコリア:巨獣の棲処
・2020年7月3日 基本セット2021
・2020年9月25日 ゼンディカーの夜明け

年始早々にウルザくんの代わりに詰め腹を切らされたオパモくん収監で親和壊滅という開幕。

テーロス還魂記では自然の怒りのタイタンウーロや死の国からの脱出等のLOに辛い脱出ギミックが登場するも、魂標ランタン塵へのしがみつきという新たな墓地対策を得たことで収支はトントンといえます。
真の悪夢はその先に控えて居ました。

イコリア発売。そう、相棒到来です。
そのヤバさに皆が気づいたときには既に全ての環境が相棒に支配され、相棒を搭載できるデッキ以外がほぼ駆逐されます。
サイドの罠橋以外に3マナパーマネントを持たない青黒LOはモロにルールスの恩恵を受けられた側ですが、80枚デッキである天敵ヨーリオンが生まれてしまいました。相棒ルール改定後も(青黒LO視点では)このルールスvsヨーリオンの関係は暫く続いていきます。

永遠のライバルのままどちらも2022年に収監。残念でもないし当然。

同年7月、基本セット2021の発売にともなって「切削/Mill」がキーワード処理化され聞き慣れない言葉に戸惑うも、「ここでキーワード化するって事は次のセットで切削ギミック推してくるんじゃない?」という淡い期待を青黒LOプレイヤー達は抱く事になります。

そして9月1日、ゼンディカーの夜明けプレビューにて想定以上の激震が走る。何だこのゴツいカニはーーーっ!!!

なんかちいさくてかわいくない量を削るやつ

まさかの面晶体のカニのほぼ上位互換である遺跡ガニが登場。
タフネス3でパワー2までを柔らかくキャッチし、しかも対象を取っていないので白力線にかかりません。
面晶体のカニと躁の書記官の良いところを足して割らない異常強化海産物により8crab体制が整い、カニが複数並ぶブン周りの再現性が向上。ルールスの恩恵もあり劇的にデッキ確度が上がりました。

その上キッカーで心の傷跡と化す荒れ狂う騒音までも収録され、もはや切削カードの取捨選択に迷う始末。昨期のエルドレインと併せて嬉しい悲鳴が上がります。
1年に1枚追加パーツ来たら僥倖ってレベルで今まで供給よこさなかったくせに…。こちとら大真面目に驚恐の目覚めとか高まる混乱を試してたんだぞ…。
デッキ掲載数もこの年から鰻登りで、2020年からの掲載数は青黒LO全体の3分の2以上になります。掲載形式の変更等を鑑みても明らかに使用者がハネ上がってますね。

またモダン青黒LOとは別件ですが、スタンダードで「削る」と「殴る」を同時に成立させるディミーア・ローグが成立したちょっと嬉しい年でもありました。

両要素は殆どの場合で噛み合っておらず、公式がライブラリー破壊ギミックを推そうとする度にそのライフを攻めるもデッキを削るにも中途半端なチグハグさが目立っていました(ディミーア家とか)。
ドラフトですら戦略として浮いていたこのギミックを、ついにトーナメントの舞台で日の目を見るほどに昇華出来た事には「やったのか…ウィザーズ!」という感慨深いものがありました。
その解決策は「削る」と「殴る」と「削りボーナスを同じカードに詰め込む」という令和のカードパワーならではのやり方なんですが。

一年を通していうとMTG3.0こと相棒の登場。MTG4.0ことマナレスデッキの登場などで昨年の禁止乱発とは別の意味でマジックが終わりかけた年と言えます。
また御存知の通り某疫病の大流行によりテーブルトップが休止に追い込まれ、MOをやらずに店舗大会で3-0してリスト乗せるのを目標にしている自分のような零細モダンプレイヤーは暫く紙マジックから離れる事を余儀なくされました…。「好きなデッキを使い続けて偶に勝ちたい」な趣味プレイヤーも多かったモダンは余計にこの紙マジック停止が痛手となり、徐々に公式との意識差が広まっていったように思えます。

紹介リストはモダンチャレンジ2位のルールス型青黒LO。
>Dimir Mill by Rulleboren
>Event: Modern Challenge #12233116, 2nd Place, 6-1
>Deck Date: Nov 29, 2020
https://www.mtggoldfish.com/deck/3592135#paper  
不可思の一瞥が抜け、荒れ狂う騒音が代わりを務めています。
また、メイン外科的摘出4、サイド根絶2とルールス等を墓地利用を見越した対策が厚め。

公式記事はカニ8枚体制についてがメイン。公式でのデッキ紹介としてはこれが一番まとまってるように見えます。


【2021】 正気破砕、ターシャズ・ヒディアス・ラフターの獲得

・2021年2月5日 カルドハイム
・2021年4月23日 ストリクスヘイヴン:魔法学院
・2021年6月11日 モダンホライゾン2
・2021年7月23日 フォーゴトン・レルム探訪
・2021年9月24日 イニストラード:真夜中の狩り
・2021年11月19日 イニストラード:真紅の契り
…パック出しすぎ!

カルドハイムで追加されたティボルトの計略による地獄のガチャデッキや星界の騙し屋、ティボルトを続唱で踏み倒すティボルトフィーバーな開幕。
モダンは暗黒のティボルトの冬が訪れ── ることは特に無く、2/15にティボルトの計略は死者の原野、猿人の指導霊、神秘の聖域、ウーロ共とまとめて懲役送り+続唱ルールの改訂により速攻で潰されます。相変わらず打ち上げ花火のような男だったなティボルト…

トピックとしては何よりモダンホライゾン2到来の年。あまりのカードパワーの上昇についていけなかった多数のローグデッキが廃業を余儀なくされる中、青黒LOは運良く正気破砕を獲得します。

対象取らないのが偉い。サイクリング誘発も渋い。

14枚と額面の切削枚数では過去最高で、対象を取っておらず、なおかつサイクリング誘発型能力でデッキの潤滑剤になりつつも打ち消されずテフェリーも無視できる…と令和のカードパワーには恐れ慄きますね。
それ以外にもエムラ強奪を期待されるダウスィーの虚空歩き、往年の名カードにして水難と併せて打ち消しを厚くする対抗呪文も収録されており得るものはそこそこ多かったと言えます。

但し同時にアンコウどころではない打点を誇り致命的な一押しで除去できない濁浪の執政、エムラクールに変わる令和の天敵忍耐との戦いが始まります。あとモダンが猿とサーガとインカーネーションの国になります

絶対に許さない。顔も見たくない。

気を取り直し翌7月のフォーゴトン・レルムにて新たなエース、ターシャズ・ヒディアス・ラフターを獲得。

相手を傷つけず笑い転がす呪文とのこと。本当に傷つけて無い?

3マナソーサリーかつ外科的摘出や彼方の映像とシナジーしないこともあって当初は採用候補程度でしたが、夢の巣のルールスでマナコストが低めの環境だったのも味方につけ瞬く間に不可思の一瞥を押し退けて青黒LOのエースの座へと駆け上りました。
墓地シナジーの薄さは逆に言えば最初から墓地対策を備えているという事でもあり、特定デッキ相手では打てば勝ちという程の相性差を作り出してくれます。
また、こちらも正気破砕に続いて対象指定なし。令和の切削呪文が対象を取らない事が多いのはアリーナのクリック数低減(とセルフミル安全弁)のためではないかと思われますが、お陰で夏の帳や白力線への耐性もグッと向上しています。

この遺跡ガニ、正気破砕、ターシャズ・ヒディアス・ラフターの新世代三本柱は青黒LOをモダンのメタの一角(中心とは言わない)まで押し上げました。

参考リストは赤ティボさんのモダチャレ2位。俗にいう赤ティボ型。
>Dimir Mill by tibalt_of_red_sub
>Event: Modern Challenge #12347367, 2nd Place, 6-1
>Deck Date: Oct 16, 2021
https://www.mtggoldfish.com/deck/4368879#paper  
ラフター、正気破砕の新パッケージに加えてサイド幽霊街2からメイン64枚にする変則的なリスト。また悪意の熟達等による強制ドローなど、多様なテクニックが含まれています。詳細は御本人の記事を参照。

公式記事でも「モダンの門番」扱い。出世したなぁ。


【2022】~現在。

・2022年2月18日 神河:輝ける世界
・2022年4月29日 ニューカペナの街角
・2022年9月9日 団結のドミナリア
・2022年11月18日 兄弟戦争

ネオ神河では天上都市、大田原を獲得。置物への対処手段を増やします。
団結のドミナリアでは第三の道の創設を得たことによりサードパス型と呼ばれるタイプも生まれます。
>Dimir Mill by xerioc
>Event: Modern League 2022-11-01, 5-0
https://www.mtggoldfish.com/deck/5198653#paper

一年を通した環境変化としては3月には夢の巣のルールスが禁止されたことで青黒LOも相棒の恩恵を失いました。相手にルールスを使われる事こそ無くなったものの、縛りが消えたことで環境の総マナコストが上昇してラフターの使用感にも少なくない影響がありました。
しかし10月に今度はヨーリオンが禁止されたことにより環境的にはまた少し良い風が吹いてきています。
勢力を伸ばす赤黒想起に対して余りにも相性が劣悪ではあるものの、まだまだモダンの一線に立ち向かえる立ち位置は確保できていると思われます。

高い完成度を誇る青黒LO
>Dimir Mill by Anonymous
>Event: Modern Preliminary 2022-11-16, 6th Place, 3-1
https://www.mtggoldfish.com/deck/5230462#paper  

浄化の野火から土地を攻め、サイドから帝像に切り替えられる青赤LO
>Grixis Mill by Razdan08
>Event: Modern Preliminary 2022-11-14 (1), 1st Place, 4-0
https://www.mtggoldfish.com/deck/5226368#paper  

虹色の終焉などの各種強力除去にカニを軸にしたコンボで攻める青白LO
>Azorius Mill by ShzockChan
>Event: Modern League 2022-10-14, 5-0
https://www.mtggoldfish.com/deck/5160607#paper

上記のように今も多様なライブラリーアウトデッキが生まれています。

12月現在、未だに某疫病の驚異は続いているものの、店舗大会が開けるようになり、先日には旧グランプリに相当するプレイヤーズコンベンション名古屋も開催されました。青黒LOの活躍が見られる場もこれからまた増えて行くのでは無いでしょうか。

来年は青黒LOのデッキ成立から10周年。
10年間も一つのデッキが愛され、憎まれ、遊ばれ続けているのはとても貴重な事です。できればこれから先も青黒LO、それを育んだモダン環境、そしてMTG全体が平和に発展し続けて行くことを願ってやみません。

まだ見ぬ新たなパーツを求めて

これからも貴方のデッキが削ったり削られたり出来ますように!

以上、お読み頂きありがとうございました。


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