Magazine Study vol.2

【今号の目次】
1.特別企画 対談(身体障害領域とOBP)
2.4月11日のらいすた概要
3.4月11日のらいすたQ&A
4.その他のQ&A
5.研究論文紹介
6.時事ニュース
7.研究アイデアをシェアしちゃいます
8.プレゼントコーナー
9.近況報告
10.質問送り先案内
11.署名

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1.特別企画 対談(身体障害領域とOBP)
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1)急性期の整形外科領域とOBP

京極:寺岡さんの現場は急性期の整形外科領域なので、特にOBP(作業に根ざした実践、Occupation Based Practice)が困難だと言われるところだと思うけども、寺岡さんの臨床感覚的にはどうですか?

寺岡:急性期領域でOBPを行うポイントは、身体機能も作業機能も状況と目的に応じて同時に評価、介入していくことですね。

京極:それってまさにOBP2.0。

寺岡:そうです。OBPに関心があるからといって、作業にばかりこだわっていたら仕事にならないので、私の場合は自然にOBP2.0になります。

京極:なるほど。

寺岡:通常のOBPは魅力的ですけども、「作業で評価して作業で介入する」ということを重要視するじゃないですか。そうなると急性期でのOBPは難しいなと感じますよ。

京極:具体的に何がどう難しい?

寺岡:うーん、状況に方法がうまくあっていないと感じる出来事がいろいろありました。

京極:例えば?

寺岡:多くの作業療法士が体験している苦労だと思いますが、例えば、私も最初はOBPを行ってたんですが、他職種や同職種からも「何やってるの?」と不思議がられたり、笑われたりしました。

京極:あるあるやね(笑)。

寺岡:はい(笑)。あと、急性期なので病院スタッフはもちろん、クライエントや家族も、身体機能の回復を期待するんですよね。その中で作業に着目することは特殊に見られたり、異端に感じられたりしてました。

京極:OBPは構造上の縛りがきついから、急性期という状況にあわないところがある、と。

寺岡:そうなんです。あとは設備の問題で、施設基準に必要なものはあるんですが、それ以上のOBPを行うために必要な設備はそろってないので「ちょっと試しにやってみましょう」ができなかったです。入職したときに「ここで作業療法できるよ」と言われた場所には机と椅子しかなかったという(笑)。

京極:寺岡さんがかつて体験した問題は、国内外の先行研究でも同様に指摘されています。そう考えると、これは寺岡さん個人の問題というよりも、OBPという理論の問題と考える必要がありますね。

寺岡:私もそう思います。従来のそれは理想的には素晴らしいと思うのですが、そのぶん現実にフィットする条件がなかなか厳しい。すると、現実を変えるか、理論を変えるか、という話になるわけですが、私はその両方が必要だろうと考えたわけです。

京極:その発想は素晴らしいと思いますし、信念対立解明アプローチらしいやり方です(笑)。で、その点、OBP2.0は目的と状況に応じて実践すれば良いという理論構造なので、急性期の整形外科領域でも対応しやすいという感じですか?

寺岡:そうです。術後1日とかの場合ではもちろん身体機能の回復を行いますし、状態が落ち着いてきたら作業の視点を取り入れて話を聞いてったりします。

京極:それって、当たり前の話だと思うんだけど、理論と実践をつなぐときに、理論の制約がきついと実践で不具合が起こるものです。OBP2.0は理論の制約を極力取り除いた構造になっているので、それにダイレクトに依拠しても不具合が起こりにくいのかもしれませんね。

寺岡:そうですね。OBPは行いにくいけど、OBP2.0は気楽にできる感じがします。

京極:OBP2.0の柔軟な理論構造という特徴を活かすことで、急性期の整形外科領域というシチュエーションで機能も作業もケアしているんですね。

2)OCP、OFP、OBPとは?

京極:ところで、OBP2.0の特徴を理解するには、前提として、OCP、OFP、OBPについて知っておくと良いと思うので、それらと比較しながら話していきましょうか?

寺岡:はい。そもそもOCP、OFP、OBPという枠組みはAMPSを開発したFisher先生の研究論文(※)に依拠していますが、作業療法界で広く共有されているわけではなく、私としては単にそれを使うと説明しやすいからという理由で使わせていただいています。
※Occupation-centred, occupation-based, occupation-focused: same, same or different?
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23311311

京極:それでいいと思います。

寺岡:はい。この前提で解説していくと、OCPは作業中心の実践(Occupation Centered Practice)です。これは、作業療法士が持つ世界観のことで、作業療法士は全ての物事を「作業」に引きつけて解釈することをします。

京極:OCPは作業療法士の認識論だよね。

寺岡:そうです。作業を通して世界のあらゆる出来事を解釈するのが、OCPです。

京極:具体的に言うと?

寺岡:例えば、私の健康を考えるときに、単に心身の調子がよいと考えるのではなく、実際に自分がしていることとの関連で理解するわけです。運動という作業をしてないからあまり良くないなとか、食事はきちんと取るという作業をしているからまだマシかなとか、というように。OCPはあらゆる出来事を「作業」という視点からとらえるわけです。

京極:昨今の政治不信も作業を通してみるとよく理解できるよね。

寺岡:そうですね(笑)。公文書を修正するという作業をやっているから、行政全体の信頼が落ちる(笑)。

京極:人間ならば誰でも作業しているので、作業で世界のあらゆる出来事を解釈するのは自然な思考法かもしれませんね。

寺岡:そう思います。

京極:急性期の整形外科領域の例だとどうなりますか?

寺岡:急性期の整形外科領域だと、すごく単純にいうと、骨折しているから仕事をするという作業ができないな、とかって考えます。あと、肩関節周囲炎になってしまったクライエントでは、原因は複数あると思いますが、長年の仕事や家事などの影響が今になって出てきて炎症を起こした可能性もありますね、とかって話したりします。疾病や障害を持ってしまった原因に作業があるという解釈です。

京極:なるほど。いろんな出来事を作業に引きつけて考えるところに、OCPの特徴があるんですね。では、OFPはなんですか?

寺岡:OFPは作業に焦点化した実践(Occupation Focused Practice)です。これはFocusという表現に表れているように、作業療法士が評価と介入を行う際に作業に最初からしっかり注意を向けることを特徴とします。けれど、注意を向けた後に心身機能や環境が必要だと判断されれば、そこに介入することもできます。

京極:最初に作業へとしっかり紐づけた後は、心身機能、環境などの評価、介入を行うこともあり、必ずしも作業で評価し、作業で介入するというわけじゃない。

寺岡:そうです。整形外科領域では、例えば、クライエントの作業遂行を評価したたうえで、作業遂行を改善するために心身機能へ介入したり、環境調整したりすることもあります。

京極:OCPとOFPの違いってなんでしょうね?

寺岡:OCPは作業療法士の世界観で、OFPはOCPを行うための方法だと解釈しています。

京極:OBPはどうでしょうか?

寺岡:さっきから私ばかり説明しているので、次は先生がお願いしますよ!

京極:あぁ確かにそうだね(笑)。OBPの最大の特徴は、作業で評価し、作業で介入するところにあります。

寺岡:どういうことですか?

京極:例えば、何らかの理由で家事ができないという人がいれば、その人にとって必要な家事を、実際の環境で行って評価し、リアルな環境における作業遂行上の問題を見つけて、それを改善するためにその人と密接につながった作業を実際に行う、というのがオーソドックスなOBPになりますね。

寺岡:OFPとOBPの違いは実際に作業で評価し、作業で介入するか否かですね。

京極:そうなりますね。単純に言えば、OFPは作業療法士が作業にしっかり注意を当て続けていればよいので、評価と介入でリアルな作業を使わなくてもよいです。

寺岡:確かに。OFPは作業から心身機能、環境というプロセスで注意を当てることに重点を置いていますから、作業で評価し、作業で介入すOBPとはその点で異なりますね。

3)OBP2.0とOCP、OFP、OBPの関係

京極:では、OBP2.0とそれらはどう関係するでしょうか?

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