花の迎え

私は神様へ嫁入りする為、二十歳の誕生日に死んでしまうらしい。

その話が出たのは私が幼い頃、神主さんが家に来て「光栄な事だ」と話されたそうだ。

10歳でそれを聞き、話ながら両親は泣いていたが、私はなんとなく納得していた。


気が付いたのは私が5歳の頃。

誕生日になると必ず、真夏にどこから採ってくるのか不思議だが、私の部屋の窓際に梅の花が一輪置いてあるのだ。

そして寂しい時には桜を一輪

怒った時には椿を一輪

そっと、まるで私を慰めるかのように窓際に置かれている。

そして私はいつまでたっても枯れないその花々を、

まるで恋人からの手紙のように大切に宝箱へ仕舞っていた。


とうとう私が死ぬという歳になった。

私は神社で化粧をし、白無垢へ着替える。

「祝ったり、慰めたりしてくれる人に悪い人はいないはずだ。

向こうでも、元気に。」

泣きはらした目で父が言う。


結納の式は順調に流れ、ついに三三九度の儀式に差し掛かった時。

ふわり、と花の匂いがしだした。

周りを見渡すと床一面、紅と白の梅の花で埋め尽くされている。

『ごめんね』

目の前に、いつか一緒に遊んだ少年の姿があった。

「あなただったのね」

一緒に花冠を作った

『これを』

シロツメグサの指輪

私の指にピッタリと嵌った


「ううぅ・・・・」

花にまみれた娘の亡骸に覆いかぶさる父と母

しかしそれとは反対に、娘の顔はまるで恋叶った乙女のようだった。


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