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「プログレッシブ・ロック」の変人たち

クイーンの映画「ボヘミアン・ラプソディ」GWもやってるんですね。
興収130億円突破で、実写映画の歴代9位だそうです。

クイーンのCDの方も順調に売れているそうです。
クイーンって初期はハードロック、その後、プログレッシブ・ロック、ポップなど時代に応じて音楽を変えてます。

さて、初期の「クイーンII」は「プログレッシブ・ロック」と言われることがあります。略して「プログレ」です。

今日はおそらく99.9パーセントの人が興味ないでしょうが、この「プログレ」についてです。奇人変人が大集合してて、私大好きなんです。

プログレは「ルールのないロック」

「プログレッシブ・ロック」(プログレ)とは、一言で言うと「ルールのないロック」。要するに好き放題できるロックです。

どれくらい自由か。

まず、8ビートにこだわらず、変拍子や転調は当たり前です。
プログレでは踊れません(たまに強引に踊る人がいて尊敬されてます)。
メンバーは演奏マニアの楽器オタクが多く、クイーンとは異なり大体衣装も髪型もパッとしません。

楽器もなんでもありです。
メンバーにフルートやヴァイオリン、ひどいとファゴットやオーボエが出てきます。
「レイヨヨレイヨオ」とヨーデルを歌うボーカルもいます。

ジャズの即興演奏風があるかと思えば、4楽章構成80分の曲でリスナーが寝てしまうバンドもあります。ムソルグスキーとかブラームスのクラシックをそのままやる人もいます。
かと思えば、演劇風の舞台を見せたり、お経のような詩を書いてるところもあります。

70年代のリスナーって寛容です。
こんなむちゃくちゃな音楽がチャートに入ったりしたんですから。
「クイーンII」のブラックサイドが、お行儀よく見えるほど、めちゃくちゃです。

プログレには5大バンドと言われる大御所がいますが、揃いも揃って変な人が集合しています。私はこういうルールのない人たちが大好きです。

プログレ5大バンドとは

プログレの面白いところは、世界中にバンドがいることです。
ただし「プログレ5大バンド」と呼ばれる大御所は皆イギリスです。
ホントに変な人が多いです。紹介します。

ELP(エマーソン・レイク・アンド・パーマー)
クイーンに一番近い気がします。
キーボード中心の3人編成バンドで、昔は女性にも人気がありました。

キーボードのキース・エマーソンは、一見真面目な好青年ですが、オルガンを倒したり、シンセサイザーに日本刀やナイフを突き付けたり過激なパフォーマンスで有名です。先日、インタビューを聞いてたら、「観客が喧嘩を始めたから、気をそらせようとオルガンを引き倒したんだよ! みんな唖然としてたな!(ニヤリ)」と言ってました。亡くなってしまい、残念です。

「タルカス」なる不思議な生物を考え出して、アルバムのタイトルになってたりしてます。こんなのです→

口の悪い人たちは「偏差値の低いバンド」「体育会系」とか言いたい放題でした。パンクの人たちは「エマーソン、レイク&パーマーって法律事務所かよ」と悪口言ってます。

ジャズとクラシックの影響が強く、「展覧会の絵」をロックで演奏したりしてます。聴きやすく、耳に馴染みます。


キング・クリムゾン
元祖プログレ。他のバンドに多大な影響を与えました。

中心人物のロバート・フリップ、相当の変人です。生真面目な人のようです。ロックのギタリストのくせに眼鏡をかけていて、椅子に座らないと弾けません自分のことを話すのに「ギタリストはこう思ってるらしいよ」とか三人称を使うそうです。

ロバート以外のメンバーは毎回入れ替わってます。例えば、最初の成功の後、ロバートと作詞家!以外全員辞めてます。その後も、ロバートの個人プロジェクトみたいです。編成も変です。1つのバンドにドラムが3台いたこともあります。

初期の音は「重く暗くかっこいい」です。ゴリゴリと結構ハードです。80年代になるとガラッと音が変わります。最近も、ヘビメタやRadioheadとか好きな方は、結構イケると思います。まだ現役です。

オススメはREDです。


ジェネシス
80年代にポップグループとして一斉を風靡しました。が、プログレファンは偏屈なので、70年代のジェネシスしか認めない人が多いです。

70年代初期のフロントマンのピーター・ゲイブリエルという人もすごく変わってて、変人オブ変人、って感じです。

まず、髪型とか衣装とかがいっちゃってる……。踊りも変です。ロックのコンサートなのに、お通夜のようにみんなが棒立ちしてたりします。

ただし、独特の叙情性がある音楽で、メロディが美しく、聴きやすく、親しみやすいです。
これとか、ほんと綺麗な曲だと思います。

途中でこのピーターが辞め、ドラマーのフィルがボーカルを引き継ぐのですが、声がそっくりでファンを驚かせます。メンバーの多くが引退してしまいました。

イエス
アニメの「ジョジョの奇妙な冒険」の「ラウンドアバウト」で有名です。

ボーカルのジョン・アンダーソンは、少年のような大変変わった声をしてます。

バンド名通り、ポジティブです。以前はバンドが2つに分裂して裁判沙汰にまでなったのですが、能天気なジョンが「一緒にやろう」と2つのバンドを無理やり合体し、8人編成でツアーやったりしてました。

音はハード。3声ハーモニーと各楽器の不協和音が魅力ですが、ボーカルが明るいので、暗くなりません(名前もイエスだしね)。プログレの中では一番クラシックを意識しています。クイーンは当初「イエスに似ている」と言われて「似てるのはコーラスだけだ」と憤慨してましたが。

割と真面目で、メンバー全員菜食主義だったりしますが、キーボードのリック・ウェイクマンは大酒飲みでステージでカレーを食べたり、ベースが遅刻魔で昼15時以降にしかリハできないとか、ツッコミどころ満載です。リックはその後本当にコメディアンになり、ロックの殿堂の授賞式で下ネタを連発して顰蹙を買いました

ピンク・フロイド
セールスではダントツです。

全盛期の中心人物、ロジャー・ウォーターズという人も相当変わった人だったようです。ギターのデビット・ギルモアと仲が悪く、バンドが二つに分裂したりしてます。

聴きやすく、メロディは親しみやすく、時に初期の音はフォークっぽい。私の好きなのは「炎」「アニマルズ」です。他の4つのバンドとはちょっと毛色というか、音楽性が違います。Youtubeを見てると、「ピンク・フロイドは実はプログレではないのでは」という議論もありますね。メンバー同士の交流も、他のバンドほどはなかったようです。


プログレバンドの引き抜き合戦の内情

面白いのは、お互いのバンド同士で、引き抜き合戦をやってることです。あっちとくっついたりこっちとくっついたりしています。

以下は私がYoutubeのインタビューを見続けて知った、彼らの赤裸々な人間関係です。

ELPのキース・エマーソンは、ELP結成前、イエスのスティーブ・ハウとクリス・スクワイアをこっそり勧誘してます。逆に、70年代後半、イエスのマネジャーから「イエスに入らない?」と誘いを受け「人気絶頂のバンドの俺が、なんでイエスに入るの?」と憤慨してました。(それに対し、マネジャーのブライアン・レーンは「聞いても害はないだろ?」と答えたそうです)
キング・クリムゾンのボーカル、グレッグ・レイクはクリムゾンを裏切り、ELPに行ってしまいます(多分、キースがリクルートしたんでしょうね)。
イエスのジョン・アンダーソンは、キング・クリムゾンのロバート・フリップに「イエスに入らない?」と声をかけて、逆に「お前こそキングクリムゾンに入れ」と言われて1曲ゲストで歌ってます。ジョンは、ジェネシスのフィル・コリンズも誘ったそうですが、断られてます。
ビル・ブラッフォードは人気ドラマーです。学生時代にイエスに入り、その後キング・クリムゾンに誘われ、その後ジェネシスにも誘われて、またイエスに戻ったりもしています。
キング・クリムゾンに入ったジョン・ウェットンはその後イエスのスティーブ・ハウとELPのカール・パーマーとエイジアを結成します。スーパーグループとの触れ込みでしたが、音はびっくりのポップ調で、プログレ・ファンをがっかりさせました。

おまけですが、クイーンのロジャー・テイラーもジェネシスに誘われてたみたいですね。

もっと変な人たちもいます

5大バンドはまだ良いのですが、周辺のバンドはもっと変です。
プログレは残念ながら70年台後半にやってきたパンクに目の敵にされ、今ではアンダーグラウンドに潜るかポップバンドになってしまいました。しかし今でも変態的な音楽、ひっそりやっている人たちが世界中にいるようです。

99.9パーセントの人に興味がないであろうことを書いてみました。

果たして、ここまで完読できた人はいますでしょうか。
調子に乗ってすみません。

ではまた。


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