クランチ文体でバイオハザードre4 その10
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chapter4-4 決着
レオンが達成感から深く呼吸をした。ゲートは壊せなかったが何とか撃破。
出口を開ける方法を探すかと南のゲートに向かう──すると背後で何かが噴き出す音──聴き覚え=触手野郎。振り返ったレオンの見たもの=巨人の背中を喰い破って出てきた白い生物──アルビノのウツボのような見た目/所々から生える根を思わせる細い触手──威嚇する猫に似た鳴き声。
せむし男の背中に本当に虫がいやがった。
さらに白い生物に呼応するように巨人がもがきだす──ガラガラと背中の瓦礫が崩れ始める。レオンの直感=背中の生物の息の根を止めれば巨人も死ぬはず。
散弾銃を構え、白い生物に近づきながら撃った──引き金を引いたままフォアエンドを何度も前後=雷鳴に負けぬ轟音/豪雨に負けぬ散弾の雨。白い生物がズタボロに──それでも動き出す巨人=瓦礫から這い出る/立ち上がる。
レオンに向かって覚束ない足取りで近づく──撃ちきった散弾銃を投げ捨ててハンドガンを取り出すレオン=撃ちながら後退。
巨人の足取りは重く、やがて止まりレオンに向かって倒れ始めた──すがるように右手を伸ばす。泥と水の飛沫を上げて巨人が突っ伏した──レオンの眼前に落ちてきた巨人の頭。
巨人の伸ばした右手がゲートに直撃/破壊。巨人の背中には辛うじて原型をとどめる白い生物──まだ動いている。それを見たレオンは倒れた巨人の腕から駆け上がった──背中に到着=白い生物の目の前。
ナイフを抜いて滅多斬りに──白い生物が鳴く/足元で巨人が叫ぶ──数回の往復で白い生物が千切れ、背中から落ちていった。果たしてレオンの直感は当たったようでもはや巨人はピクリとも動かなくなった。
「まったく……パンケーキになるとこだった」
レオンはこの数分で何回ぺしゃんこにされそうになったことかと思い返す。巨人の背中から降り、投げ捨てた散弾銃を拾う。切れた負紐を結んで繋いだ。
「ワンッ」と離れたところから狼の声。そちらを見れば、泥にまみれた狼が誇らしげにこちらを見ていた。共に巨人殺しをやってのけた相棒に「ありがとうな」と感謝と別れ告げる。
巨人のお陰でゲートが壊れており通過可能に──赤ローブの男もいつのまにか去っていた。巨人に破壊された小屋まで行くと円盤状の鍵が雨晒しになっていた。拾い上げ何度が振って水を切る──壊れてはいなさそう。
「まあ、結果オーライだな。よし、教会へ急ごう」
ゲートを越えながらそう呟きながら教会を目指す。天気は相変わらず荒れたままだった。
chapter4-5 黒犬再び
雨が降りしきる中、レオンが教会付近まで戻ると前回来たときには閉まっていた木製の門が開いていた。レオンが去った後に誰かが来た証拠──慎重に進む。
すると雨音に紛れて唸り声/足音=門の先、墓場方面から──立ち止まるレオン。門の向こうから現れた存在──暗闇に浮かぶ赤い目/剥き出しの白い牙=黒犬──濡れた毛が雷光を反射、うっすら輪郭が浮かぶ。
レオンを見るなり黒犬の唸り声が一層強くなる──尋常ではない敵意を感じる。レオンは鐘塔が倒壊した時のことを思い出す──襲ってきた三匹の黒犬=倒したのは二匹だけ──逃した一匹。まさか仇討ちか──レオンがハンドガンを向けながら円盤状の鍵を地面にゆっくりと置く。
銃口を向けられた黒犬がガタガタと痙攣を始める/ボコボコと背中が不規則に膨らむ──さすがにレオンも予想がつく=触手の化け物。
予想通り触手が黒犬の背中を突き破る=首の付け根から尻尾の根本まで裂ける──村人から出た奴より太く、量も多い触手。墓場守の妖精犬というより漂う鎖を纏った悪霊犬──どちらにしろ不吉を告げる黒犬。村人が花瓶に生けた触手だとすると黒犬は花壇に植えた触手だな──三度目の触手登場にさすがに慣れたレオンがどこか冷静に思う。
触手を見上げ、銃を構えたままのレオンに黒犬が助走無しで飛びかかる──レオンの迎撃=踏ん張りの効かない空中で銃弾を受ける黒犬──体勢を崩しそのままレオンの横へ頭から落下。
レオンに腹を向け地面に横たわる黒犬──ナイフを抜きながらレオンが素早く近寄る。黒犬の前足と後ろ足の付け根に体重を掛けるように両膝を乗せ押さえ付ける。一際太い触手を掴む/引き寄せる──その触手を刈り取った。
足元でバタバタと黒犬が足掻く──追い討ちとばかりにナイフを触手の根本、首側に突き立てる──横一線=尻尾側までナイフで引き裂く──胴体と触手束が分断される。数回の痙攣の後、黒犬は動かなくなった。
chapter4-END ターゲット確保
再びやってきた教会の正門。鉄格子の丸い窪みにれおんが円盤状の鍵を嵌める=ぴったり──鍵の表面の細工が回りだす。ひとしきり回った後、ガチャリと音がして鉄格子が上がった。
鉄格子の先の扉を開けて中へ──人影は無し。祭壇へ伸びる赤絨毯/左右にいくつも長椅子がならぶ聖堂──奥の壁には十字架の代わりに巨大なステンドグラス=広場の集会場の鍵と同じ紋章。聖堂を囲むように二階にギャラリー。聖堂の中央辺りまで来るも人の気配無し。
「アシュリー・グラハム! 助けに来た!」
ターゲットを安心させるため/敵を誘き出すにレオンが叫ぶも反響以外に反応無し──聖堂を調べるも人質が居そうな告解部屋や香部屋などは見当たらず──聖堂の端にあった梯子で二階へ。
「アシュリー、居ないのか?」
呻き声や物音でも返って来ればと思い再度呼び掛けるも反応無し。ギャラリーを外周に沿って移動すると扉を発見──前にはランプや本が置かれたテーブルと椅子=恐らく見張り用。レオンが扉に手を掛ける──なぜか施錠がされていない。ゆっくり「アシュリー?」と呼び掛けながら扉を押す。誰も居ない。
「アシュリー・グラハム、居るのか?」
部屋へ入ると焦りからレオンがさらに呼び掛ける──相当の時間を奪われた──既に別の場所に移送された可能性。そもそも墓守の部屋の痕跡が偽の情報だった可能性──してやられた。
心の中で舌打ちするレオンの耳が拾った音=扉の死角から衣擦れ──素早く一歩前に移動したレオンの背中を何かかが掠める。レオンが振り返ると銀の燭台を振り回し叫ぶ女性の姿。
さらさら揺れるショートボブの金髪──くっきりとした目鼻立ちが恐怖で歪んでいる。首に巻かれた上品な赤のストール/濃い柑子色で統一されたニットにジャケット/黒と緑の格子柄の織物のラップスカートにも見えるショートパンツ──タイツを履いた足がすらりとの伸び、膝下まであるブーツに収まっている=誘拐当時と同じ服装のアシュリー・グラハム。
「来ないで!」
振り上げた燭台をレオンがすかさず掴む/奪い取る──投げ捨てる=「落ち着け……」と宥める。だがアシュリーは壁まで逃げる──顔と目線が左右へキョロキョロ=収まらぬ動揺。
「俺はレオン。大統領の命で君を……」
レオンが言い終わる前にアシュリーがダッシュ──部屋の外へ。一人で取り残されるレオン。
「作戦通りだな」
肩を落としてかぶりを振るレオン。捜索開始後、何一つ上手く行かない自分を励ます/皮肉る。部屋から出て早足でアシュリーを追いかける。とにかく落ち着かせて無ければと声を掛け続ける。
「一人は危険だ。俺の言うことを聞いて……」
窓の前でアシュリーが立ち止まる──そしてゆっくりと窓へ近づいて外を見る。状況を理解して落ち着いたのか、追い付いたレオンが横に立つも逃げることはせず──助けに来たと言ったレオンなら答えを知っているかもと疑問を口にする。
「なんなの……あれは?」
雨の中、遠くでゆらゆら炎が揺れている──アシュリーは来たばかりのレオンに教えるように「あそこ」と墓地の入り口を指差す。墓地へなだれ込む人・人・人。全員が松明やら凶器やらを持参。教会に向かって歩いて来ている。
突如到来した耳鳴り/頭痛──アシュリーは反射的に両手で頭を抑えた。脳内に浮かぶ映像=蒼いローブの男。脳内に響く声=鮮明かつ抗いがたく。
『奴らを追え』
本能的な理解──これは私に対しての命令じゃない。
『迷い子が逃げる。哀れな子らに……救いを』
直感的な理解──捕まったらまずい。
脳内の声が遠退く──アシュリーが顔を上げると隣でレオンも同じように頭を抑えていた。少し遅れて顔を上げたレオンと目が合う──表情で察する=彼にも同じものが視えていた/聴こえていたのだ。
頭痛から解放された二人が揃って窓から墓地を見下ろす。村人たちは既に教会の入口付近まで迫っていた。
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