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あなたは今「書く人最強時代」に生きている

 最近、とあるネットメディアを運営する起業家と会ったときのこと。彼はこう言った。

「今ほどクリエイターが生きやすい時代はないと思う」

 実は自分も、ミュージシャンでも小説家でも、漫画家だろうと今ほど生きやすい、というか「生き残り」やすい時代はないと以前より感じていた。

 編集者という立場にいることもあるが、特に「書く人」にとって、これほど恵まれた状況はないと思う。

 言い換えれば、僕らはむしろ「書く人最強時代」に生きているんじゃないだろうか。だからもし、「書きたい」「書ける」と考えている人がいたなら、今こそ、狂ったように書いてほしい。

 以下にその理由を記したい。

1、書いたものを誰かが見てくれる

 ここまで「書く」話を進めてきたが、読者のみなさんのなかに「紙に書く」ことを思い浮かべた方はどれだけいただろう? 

 おそらく多くがキーボードを叩く、もしくはスマホでフリックした結果の「書く」を想像したのではないだろうか。

 でも今から半世紀前に「書く」と言った場合、多くは「紙に書く」ことを意味していたはずだ。

 半世紀前のそれと今を比べた場合との違いとして、「使う道具が変わった」ということがまずあるだろう。しかし鉛筆やペンを用いて「書く」のと、後者の「書く」には、もっともっと、それこそ次元を超えた違いがある。

 それは、書いた先に広がる「世界」だ。

 今自分はキーボードを叩き、noteに思いの丈をぶつけている。そしておそらくそれは、さほど遠くない時間を置いてあなたの目の前に届くはず。

 これはおそらく、「書く」において「革命」と呼んでよいくらいの変化だ。

 noteなら、誰かが見て、そこで感想を抱き、「スキ」といった形で反響がもらえるかもしれない。これは「書く人」という表現を志す者からすれば、これ以上ないモチベーションである。

 かつて紙だけに書いていた時、書きあげたその先で誰かにつながるには、多大な努力と運を必要としたに違いない。そして、それらのいずれかが足りなかったために、誰からも評価を得られず、途中で筆を折り、机から離れ、いつしか表現するのをやめた人も多くいたはずだ。

 でも今はそんなことは全くない。かつてほど多くの時間やコストも必要なく、それでいて別の誰かから活力をもらって書き続けることができる。「書く」ことに対して、失望する理由などまったくない。

 これだけでも、「僕たちはとても素晴らしい時代にいる」と言えないだろうか?

2、書けば書くほど賢くなる

 インターネット上に、書いて書いて、書きまくる。この過程で、おそらくあなたにとある変化が起こるはずだ。

 端的に言って、それは「賢くなる」ということ。

 書けば書くほど、あなたの頭の中で新しいアイデアが生成され、そしてそれをベストな形で吐き出そうとする。どう書けば、第三者に伝わりやすくなるか、彼らから反響を得られるか、試行錯誤することになる。

 それで得た結果を経て、あなたはまた新しいものを書く。

 そもそも、読む人より、書く人のほうが何倍も頭を使うことになるのは事実だし、前回「本を出すことの影響」にも記したが、その過程であなたの頭の中の引き出しは引っ張り出されて、整理されて、スマートになっていく。

 自分は脳科学の専門家などではないから確信を持って言えない。ただ、これはnoteやブログはもちろん、本や論文など、何かを書き続けている人の多くが実感していることだとおもう。

 おそらく、それ相当に頭を使って悩み、それで書きあげた内容について話すことになれば、あなたはきっとスマートに、そして自信を持って話せるはずだ。

 それは第三者から見れば、まぎれもなく「賢い」状況である。

 特に今の若い起業家は、SNSやメディアを通じて、もしくはcodeを通じて「書く」のに手慣れている人が多い。そして書くことに手慣れた彼らの思考は研ぎ澄まされているし、実際、スマートだ。

 そういった事情を考えても、書き続ければ、続けるほど人は賢くなる。

 実感を持ってそう思う。

3、ライティングスキル格差の存在

 若い著者さんやライターさんと仕事をして感じたことがある。

 もちろん全部ではないが、それは彼らが書いたりまとめたりした文章に、読み進めやすいものが多いということだ。

 あらためて読み直してみると、彼らは接続詞を多用し、ひらがなを多く使う。そして長いセンテンスやまわりくどい比喩をさほど使わない。無駄を排除して直球で、だからこそ読みやすい。

 あるとき、こうした文章が生まれる背景にピンと来た。twitterだ。

 実際、聞いてみれば彼らのほとんどが、それこそ中高生の頃からtwitterなどのSNSを利用していた。

 twitterはご存知の通り、140字に限定されたSNSである。彼らはそこで格闘し、それで見ず知らずの誰かから評価を受け、より表現を研ぎ澄ましていた。

 一方、自分が若かった頃を思い出せば、ようやく社会に出るギリギリになって自宅にインターネットが開通し、キーボードを恐る恐る叩き出したように思う。

 ネットの向こうには誰がいるかわからない。知らない人に対してメッセージを送るなんて、ラジオにハガキを出すか、ビンに手紙を入れて海に流すか、そんなイメージしかない。そしてそれが当たり前だった。

 でも今の若い子たちは、物心ついた時から、世界にメッセージを発信し、顔の見えない相手とコミュニケーションを重ねてきた。

 時には傷つけられる危険もあったかもしれないし、失敗したこともあっただろう。それでも多くの子達は、若いうちからそうした海を渡るすべを学び、模索し、ここまで進んで来た。

 だからこそ、彼らとの間に、絶対的なライティングのリテラシーやスキル格差が生じているのは当然だ。

 「今の若い世代は活字を読まない」

 年寄りたちから若者がそう言われるのが「当然」とされる時代が長くあった。若い人ほど本を読まないから、新聞を取らないから「活字離れ」だ、などと揶揄されたわけだ。

 でも今、とんとそういう話を聞かない。そして実際、違う。若い人ほどSNSやインターネットを通じて活字に触れているし、何より書いている。

 「書く」力は、書けば書くほど向上する。そこでは年齢も国語力も関係ない。だからこそ、今は若い人の方が、二歩も三歩も先を行く。

 そんなライティングスキル格差が存在する時代に、そして若い人でも力を持ちうる時代に僕らはいるのだ。

4、名声が手に入る

 今、twitterで何万というフォロワーを集める、いわゆる「人気ライター」が多く存在している。

 イベントを開催すれば瞬く間に集客するし、その力を借りようと考えた企業が彼らに殺到する。さらにはファンベースを組織し、そこを通じて多額の収入を獲得することも。

 そんな彼らを前に、人気ライターに憧れる若者が増えたように感じている。 

 歌手、モデル、お笑い芸人、アイドル、起業家、Youtuber。

 さまざまな職が時代の変遷とともに人気を集めて来たが、自分のまわりをみわたすかぎり、今はライターが群を抜いているように感じることが多い。

 あのひろゆき氏も言っていたが、実はライターは、成功すればとても強い職業だと思う。

 そもそもインターネットが浸透したために、活字へのニーズはまだまだあるし、何と言っても会社から渡される月給とは違い、書いたもので稼ぎ出した場合、得られる収入には上限が存在しない。

 わかりやすいのが印税だ。印税は本が売れれば売れただけ収入になる。「5万部に達したから打ち止め!」などということはない。出版社もどんどん売ろうとする。それであなたの手元に入る収入は売れただけ、また増えていく。

 つまり「書く」ことで得られる可能性はある意味で青天井なのだ。

 そう考えれば、書いたその先で名声が獲得でき、そしてマネタイズが狙える今、それでも書かない理由があるなら、逆に教えて欲しい。

 今が「書く人最強時代」と言った意味は、以上だ。

 ただし、忘れてはならない。

 人気ライターがいたとして、頭の中が洗練された起業家がいたとして、その裏にはやはり膨大な「書く」努力が隠されている、ということを。

 彼らはきっと、書いて書いて書きまくって、より反響を得られる表現やスマートな文章を産みだし、その結果として今の地位にたどり着いている。

 その段階を見誤って、「いきなり人気ライターになること」を願っても、そこにはきっとたどり着けない。

 書いて生み出されるもの、それ自体は平等だ。

 特に今では匿名だろうと、電車のなかで書こうと、価値あるものを書けば、それだけの評価が得られる可能性がある。

 逆に言えば、面白いものを、意義あるものを、誰かの心に残るものを書けなければ、いつまでも評価は得られないし、たくさんの表現の前にもれなく埋もれていく。

 だから書け。

 書いて、それでこの先も生きていきたいのなら、もっと書け。

 書くことがこんなに自由で、恵まれた時代にあることを自覚して、今すぐ書け。

 自分は帰宅してからの一時間でこの記事を書いた。そのこと自体を誇るつもりはまったくないが、この一時間、あなたは何をしていただろう?

「読んでもらいやすい文章の書き方」

「句読点の使い方」

「あなたの文章に足りないもの」

 んなものは今、どうでもいい。書いた先で気づき、それで学べばいい。

 書くことにまだ可能性が残された今、とにかく書け、書け、書いちまえ。

 きっとすべては、そこから始まる。


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