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やるせない

月曜日、定期テストが始まった。
少なくなったテスト科目とにらめっこしながら、ノートを書いていた。

火曜日、1教科テストがあった。
テスト前、がんばってねという言葉と共にテスト後にカフェに行こうと友人に誘われた。
うまくいったテストの解答用紙を提出してキャンパスを後にした。

風が強い、寒い。
そんな当たり前のことを思いながら駅に着き、電車に乗り込んで約束の駅へ向かった。
降り口にいた友人と静かな雰囲気のカフェに行った。

深煎りの苦味の強い、スッキリとした後味のコーヒー。
甘みのないコーヒーゼリーの上に乗ったラム酒のきいたラムレーズンアイス。ほんのり塩味のするサブレに、カリカリと食感の良いグラノーラ。
見た目のかわいさと大人な味に微笑みがもれる。

食べながら話をする友人は木曜日に再々履修している科目のテストがあるという。毎年真面目に勉強しているのに落としてしまうから今年こそはと意気込んでいた。

すると、テーブルの上のスマートフォンが大学からの連絡を知らせる。
木曜日に行われる再試験者の公開処刑の書類が添付されており、僕の番号はなかったものの友人の番号があり微妙な空気になった。本人も分かっていたっぽい。

二科目、同じ日なんだね。
そう言った僕に、再々履修の科目は落とせないからと言った友人はもう一つの科目をどうしようかと唸った。

同じ科目の①が前期にあった。テスト週間にテストを行い、テスト期間に再試験を行う。再試験の問題は本試験と同じである。後期に開講している②も同様。
本試験と同じだから大丈夫でしょう?
そう聞いた僕に友人は問題を覚えていないと言った。それならと僕は覚えている分だけをピックアップしようかと提案をした。
本当!?ありがとう!
そう言った彼女の声に迷惑でなかったことを理解して安堵する。
家に帰ったらまとめるね。

元々、覚えるのが苦手な友人のことだから説明も書き加えて見せるのが良い気がすると水曜日の夜中まで作業して寝た。

そして水曜日の夜にインスタのストーリーズに友人は
私の恋は終わりました
と載せていた。画像を渡すだけではあの子のメンタルが心配と感じて木曜日何もないのに1時間半かけて大学に行くことを決意した。

木曜日朝の5時にぼんやりと目覚め、インスタを見ると
仲直りしましたの文字。
よかったと安堵する一方、ボロボロだろうなと思う。喧嘩は体力を使う。僕も大学に行くから空き時間に出た部分分かる範囲で書き出したものを見せるねという旨を友人に伝えありがとね〜と返信をもらった。

せっせとお弁当を詰め、遅延している電車に乗り込み、二限が始まる手前に大学に着く。疲れたと思いつつも歩いて運動をしたことにより頭は案外スッキリしている。
自分の勉強を進めつつ、友人の再々履修の科目が終わるのを待つ。

そして、二限が終わり「なんか微妙だった、多分できたと思う」と言う友人が次に放った言葉に泣きそうになった。

「再試の科目の問題出回ってたから送ってもらった!
すごいよねあの席でテスト回収中に問題撮るの。」

え、それじゃあ僕いらなくね?
「あ、そうだよね、言うの忘れてた、ごめんね〜来てくれたのに」

「あと、〇〇ちゃんも来るみたいで、お昼ご飯近くのお店で食べようって言われているから行ってくるね!」
あの子も再試だからね、あの子からもらったのか

「そうそう、はるちゃんはお昼どうするのー?」
あるから大丈夫、あの子がいるなら過去問だし答えも書いてあるよねきっと。

「うん、そうだと思う」

嵐のように去っていった友人を見送って、なぜだか味のしないお弁当を腹に詰め込んだ。
あ、キャロットラペがかなりすっぱい。これはもう少し砂糖だったな。
そのあとはどうしただろう。
大学の最寄りから一駅歩いて、電車に乗り込み、人肉を食べる小説に不快感を覚えつつ無意識のうちに乗り換えをして、今家にいる。

✼••┈┈••✼••┈┈••✼••┈┈••✼••┈┈••✼

不正行為が普通に行われていること。
自力で勉強しようとせず不正で得られた問題に頼ること。
不正で撮られた問題をばら撒くこと。
大学に来ることがしんどいと考える友人からの軽いごめんねの言葉。
友人のために作ったノート。
昨夜の2時間。
昨夜お弁当のおかずを作った1時間。
朝お弁当を詰めた時間。
教えに行くからノートを作っているのだと話をしていた昨日の自分。

あぁ、やるせない。
あぁ、どうして間違いが正されない世の中なのだろう。
あぁ、やるせない。
あぁ、こんなこと気にしている自分が消えてしまえばいいのに。

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