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シシに化けるということ

山、鹿、山岳信仰、狩猟、鹿踊りのことなら、うちの弟(蜂谷淳平)に詳しく聞いてもらいたい。彼は子供の頃から根っからの野生児(笑)。私とは違う豪快な男です。そんな彼を差し置いて山や獣や神様を語るのもどうかと思いますが、昨日藤原祭りで最年長の鹿として参加してきましたので、感想も含めて少しだけ語らせてね。

行山流舞川鹿子躍

まずは、皆さんに私たちが所属している行山流舞川鹿子躍とはどんな団体なのか知っていただきたいです。

岩手県の南端一関市の中心地から北東に眺める山並み、北上川と古都平泉に挟まれた舞川地区に伝わる太鼓踊系鹿踊(ししおどり)で「行山流(ぎょうざんりゅう)」の流派です。
腰に太鼓をさげ、頭に本物の鹿角を付けた太鼓踊系の鹿踊は宮城県北部から岩手県南部に広く伝わっており、自ら唄い、太鼓を打ち鳴らし、背負った「ササラ」を揺らしながら跳躍するのが特徴です。
舞川鹿子躍には、正保元年(1644)の『勘太郎之巻』、元禄13年(1700)の『行山鹿子躍之由来』及び寛政10年(1798)の『秘伝庭揃之式並荘厳歌』などの伝書が伝わっており、それによると本吉郡水戸邊(みとべ)村(現宮城県南三陸町)の行山流元祖伊藤伴内持遠の門人千葉平九郎より舞川(当時相川村)の吉田猪太郎が免許を受け、以来近隣市町村で隆盛を極め先の戦争で中断するまで42代の庭元(にわもと)制(鹿子躍に関する躍り手や伝書、装束など一切を司る)のもと伝えられてきた、行山流を代表する躍組の一つです。
戦争で一時中断した後、昭和32(1957)年に保存会を結成、昭和48年(1973)一関市無形民俗文化財第1号、平成9年(1997)岩手県無形民俗文化財指定の際に、正式名称を「舞川鹿子躍」に統一し現在に至っています。
躍りは中央にリーダー格の中立(なかだち)、角のない女鹿子(めじし)が後ろに従い、側鹿子(がわじし)6名の計8名で構成されています。
演目には「二人狂」「三人狂」「案山子躍(かかしおどり)」「女鹿子隠し」「墓躍」「土佐舞」「鹿島躍(かしまおどり)」「海の門中(となか)」などが伝えられています。
後継者育成のため、舞川小学校と舞川中学校において課外授業として鹿子躍の伝承を行っており、各種大会にも積極的に出演しています。
こうした活動は少しずつ実を結び、現在地元の若者たちも積極的に鹿子躍に参加するようになってきています。
平成5年(1993)には途絶えていた行山流の本家といわれる宮城県南三陸町の踊組・行山流水戸辺(みとべ)鹿子躍の復活に取り組み、舞川から泊りがけで師匠を派遣、躍りの里帰りを果たしました。したがって、水戸辺鹿子躍の演目や装束は舞川鹿子躍に準じていますが、この度の東日本大震災にて水戸辺鹿子躍も被災、水戸辺の弟子である佐沼鹿踊(宮城県登米市)や舞川から鹿子頭など装束や用具の支援を行い活動再開に至っています。

行山流舞川鹿子躍FBより

私たちは、歴史ある団体に快く加えさせて頂いています。本当にありがたいことです。そして今回の藤原まつりでは、三人狂の演目をやらせていただきました。ツケ(庄子)、右前鹿子(私)、左前鹿子(専務)。

昨日は、中尊寺金色堂前(私、専務、庄子、山田)と平泉駅前(山田)、毛越寺本堂前(私、専務、庄子)で披露させていただきました。
帰りの車の中で気づいたのですが、今回の踊り手の中で私が最年長でした(笑)。いつも20代、30代の皆さんにかまって頂いていたので、自分の年齢を気にせずいろんなことにチャレンジしていました。

この動画を見ながら、「もっと跳ばないとな。もっと大地を踏みしめないとな。体力作りしよう。」と振り返っています。
鹿踊り関係者の皆さん、次回はもっとレベル上げますので、温かい目で見守ってくださいませ。

シシ神様

シシというのは「山で獲れた獣の肉」という意味で、「鹿踊りししおどり」はその命を供養し感謝するためのものといわれていて、今は亡くなった人の供養で主に踊られています。

蝦夷エミシの文化であるカムイの考え方に通じるものがあります。

山岳信仰の中にも生と死の循環「死と再生」の考え方があります。

もののけ姫の中でも、シシ神様が踏みしめた大地から草木が芽吹き、そして枯れていくというシーンがあり、生と死の循環が象徴的に描かれています。

©︎スタジオジブリ

私たちが携わる鹿子躍には、自然への畏敬の念、恵みへの感謝、豊作への願い、鎮魂などが込められています。

©︎スタジオジブリ

鹿躍りは、大地を踏みしめて躍ります。そして、背中についている長いササラを地面に叩きつけます。

土地の邪を払い清め、死と再生の心地よい循環をもたらす。私自身、そんなことを思いながらシシに化ています。

シシの肉と皮を纏って人間の世界にやってくる神

これからも民俗芸能が生まれた文化や風景を伝えていきたいと思っています。




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