きよし

街暮らし

12月の雨

場に満ちている色にあわせて、
気がついたら私のからだ、色が変わっているし、
好感度と実用性に服を着せられて、
顔やかたちまで輪郭がぼやけてしまったみたい。
足の爪の真っ赤だけやけにくっきり見える。
私の内にあるかたちないものだけがはっきりと
私のかたちを保っている。

買えない値段の服や靴を、
見たって仕方がないと思っていたけど
手の届かないきらきらがあること、
そしてそれがちょっと背伸びをすれば

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海と花

去り際がこんなにはっきり分かる季節は夏だけだ。
夏の存在に気づくのはいつも突然で、いなくなったことを知るのも思いがけないタイミングだから、
肝心の夏がいた時間、夏の中にいた時間、というのは現在進行形ではなくて過去のものになっている。

それは、ある日突然いなくなってしまったあの人を思い出すのに似ている。

私たちが語る夏、というものは決して夏そのものではなくて、思い出された夏、永遠に思われるよう

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四角のまち

四角のまちひとりぶんのへや
つみかさねたうえにたって
四角のまちできょうもわたし
まんいんでんしゃにのりきれない
四角のまちつみかさねるひび
タイルの数、かぞえたりして
四角のまちでわたし、あなたを
おもいだしてはわすれようとする

四角のまちじゃみんな
人身事故になれちゃって
四角のまちで四角になれない
あなたのことあいしている
四角のまち蛍光灯をつける
朝の儀式、型どおりの
四角のまちつみかさ

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私の知らないところで

ちょっと前に書いたもの。

1年ぶりに祖母に会いに行った。
北陸の空気は冷たく、湿度が高い。瑞々しく澄んだ空気でみちていて、電車から降りホームに立った瞬間からこの土地を囲んでいる山や川の気配を感じた。

祖母は相変わらずしゃきしゃきと動き、思ったことをなんでも口にし、黒目がちでつぶらな瞳で、よく笑い、愛らしい。今日も愛用の軽自動車をトコトコと走らせ、駅に着いた私を迎えに来てくれた。免許は取ったのに

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私を見つけてよ

勝手にふるえてろを観た。
綿矢りささんの原作の時からすきで、ヨシカは、イチは、二はどうしているだろうか、と古い友人の姿を見に行くような気持ちで映画館へと向かった。

中学時代からねじくれた自意識や自己肯定感を、なんとか自分なりの方法で飼い慣らし(それを成長と呼んだりするんだろうけど本当だろうか)、東京の片隅でひっそりと、現実と妄想の間を行ったり来たりしながらなんとか毎日を送るヨシカ。
頭のなかだけ

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