はじめに ~ 21世紀の女性の選択

20世紀には、女性は自分のキャリアを選ぶことができなかった。男性が外で働き、女性は家を守るというロールは強固であり、女性が男性同様に出世するキャリアパスが用意されていたとは言い難い。

21世紀、その状況はどうなったであろうか。「『育休世代』のジレンマ」という本からそれを垣間見ることができる。この本に描写される女性たちは、はっきり言えば勝ち組だ。彼女たちは相応に高学歴で、経済的にも豊かで心から愛せるパートナーと恋愛結婚し、就職にも成功して出世コースに入り、子供も授かり育児の喜びを享受している。手に入れられるものはすべて手に入れているように見える。

しかし、彼女らにはジレンマがあるという――それをすべて抱え込むには彼女らの時間が足りない。育児をすれば仕事の時間が取れない。仕事を取れば育児は誰かに任せなければならない。自分の体は1つしかないため、それらをすべて抱え込むことができない。体が一つしかない問題に対しては、政府は手を差し伸べることは出来ない。この本に描かれるジレンマ、悩み、もやもや感は、{選べるけれども選ぶ決断ができない、選べなかった選択肢への未練が大きい}ことから来ていると、私には読める。

20世紀には、女性は社会進出における悩みは{そもそも選択肢がないこと}であった。そのために女性は戦った。その結果、男女雇用機会均等法や男女双方のための育休制度の整備が進んだ。その成果として選択肢は増えた。そして21世紀、{選択肢の中から選べない}という悩みが遂に登場するようになった。

もちろん、まだ選択肢が十分に用意されていない部分もあるだろう。そのような部分は、例えばイリス・ボネットの『WORK DESIGN』のような書籍が解決の一助となるだろう。

しかし、社会を変えるタイプの変革運動は、必ずしも{選択肢はあるが選ぶ決断ができない}という悩みを解決しない。場合によっては他のところにしわ寄せが行って不満が拡大することさえありうる。十分に選択肢がある状況では、誰かが悪い、社会が悪いと責めてみるより、まず自分自身の決心をつけるための判断材料を集めるほうが、建設的で、解決の早道になることも多いだろう。本書では、そのような21世紀に生きる我々に必要な、21世紀の女性の社会進出運動について考えてゆく。

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現在執筆中です。現在は第二章まで、いわゆる「上昇婚/下方婚忌避論争」のメイン部分まで来ています。第三章以降を書くとフルの新書サイズになるため、値上げするかもしれません(すでにご購入いただいている方には影響がないはずです)

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