アフリカの感染者はもっと多いと考えている理由

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最近、アフリカは年齢層が若いため新型コロナウイルスの健康上の影響が少なく、そのためにウイルスの広がりを過少に見積もっているのではないか、という話をツイッター上でした。そのことについて、もう少し根拠となる数字を挙げて自己検証したいと思う。


新型コロナウイルスの確認感染者あたり死者数(CFR)は、高齢者と非高齢者で大きな差があり、比較する年齢にもよるが10~100倍ほど異なる。このことから、同じように感染が広がって同じように検査している場合、CFRは高齢化率に比例に近い関係(比例線より最大10%程度高い程度の関係)になるだろうことが予想される。

高齢化率(65歳以上の人口比率)は、日本27%に対して、アフリカ諸国は低いほうでケニア2.7%やナイジェリア2.8%、高いほうでエジプト5.2%、南ア5.3%と、日本の1~2割にとどまる。 

以上の年齢別CFRと各国の人口ピラミッドを合わせると、アフリカのCFRは日本の1/10~1/5程度であることが予想される。しかし、実際のCFRは日本と大差ない国が多い。例えばケニアは、人口当たり感染者数や死者数が(アフリカ諸国の中では)日本に近く、当然CFRも日本とほぼ同じである。高齢化率が1桁違う(27% vs 2.7%)ことを考えれば、予想に比べ遥かに高い数字である。

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ケニアについてもう少し深堀りするため、ケニア保健省発表の年齢層別感染者数データと、日本の年齢層別感染者数データ、およびケニアの人口ピラミッド日本の人口ピラミッドから、両国で「感染者が全年齢に均等に分布していたと仮定した数字に対する確認感染者の年齢層比率の倍率」を計算した。それが以下の表である。

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ケニアは確認感染者が日本に対して高年齢層に偏り、30歳以上で特に高くなっている。一方で、下膨れの人口ピラミッドのボリュームゾーンに当たる20歳以下では極めて少なくなっている。

この数字は、その年代で実際に感染者が少ない場合と、単に感染者を捕捉できていない場合の両方が考えられる。

日本の場合10代と20代の間で大きな断絶があるのは、宴会での感染の多さを考えれば、飲酒可能年齢で分かれていると考えてよいだろう。

ケニアの場合には、両方の可能性を考慮する必要がある。ケニアは都市化率が低く、経済力のない若者は街に出られないため最初からソーシャルディスタンスしている可能性が高い。前掲のケニア保健省の資料8枚目のTable 3でも、最大都市ナイロビとその郊外、第二都市モンバサは(人口が多いが都市化されていない)他州に比べ人口当たり感染者数が1~2桁ほど高いが、ナイロビはケニアの中では20歳未満の人口比が相対的に半分程度で20~60歳が比較的多い。

ただ、それを考慮してもなおケニアの10代の感染率は低いが、ケニアの検査ポリシーは基本的に有症状者のみのため、発症しにくい若年層は検査の手が及んでいない可能性を考慮できる。ケニアの年齢階級別CFRは
20代 0.2%
30代 0.5%
40代 1.5%
50代 3.1%
60+ 10.8%
で、他国の数字に比べやや高い。例えば日本では(少々古いデータだが)
20代 0.0%
30代 0.1%
40代 0.4%
50代 1.0%
60+ 15.4%
という程度で(60+のCFRが日本のほうが高いのは、特に死亡率の高い80代以上が多いため)、IFRは等しいと仮定してCFRから患者捕捉率を逆算する方法を使えば、ケニアの感染者の捕捉率は日本の1/3程度である可能性がある(が、医療レベルが異なるのでIFR自体が違うことも考慮の必要はある)。

以上の数字から言える蓋然性の高いシナリオは、ケニアの感染者は日本同様の基準で検査した場合、若年層の見逃しを中心に今の2~3倍程度となり、CFRは日本が1.4%に対して、ケニアの公表数値1.7%に対して真の値は0.7%程度ではないかと思われる。

これでもヨーロッパや北米・南米に比べれば感染は広がっていない。これについては、対策はできている分は素直に褒めるべきだろう。また、すでに書いた通りアフリカの都市人口率は低く、日本92%にや英83%仏82%米83%ブラジル88%に対してケニアは28%しかない。このため、アフリカ諸国は特段手をうたずとも最初からソーシャルディスタンスがされている、という影響はある程度あるだろう。



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