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『折れたポール』(外環篇)Vol.2 外環の真実in埼玉 1round


"和光インター線っていうんなら、外環横真っ直ぐ抜けろよ❗"
それがそうもいかない事情があったはず。
外環の開通にどれ程の苦労があったのか、一度走ってみれば分かる。歴史を辿れば、既に開通した高谷・和光間(専用部は大泉)は計画期を入れればもう60年選手なのだ。

開通を報じる朝日新聞の記事から

三郷JCT~和光ICは、1992年11月27日に開通。
一般部となる国道298号も同時に供用開始となった。
その前日、11月26日の朝日新聞では次に様に報じられた。

「外環道」があす開通 埼玉県内部分26.7キロ

首都圏の交通渋滞解消の切り札と期待される東京外郭環状道路(外環道)の埼玉県内部分二十六・七キロが二十七日、開通する。関越道への直通は間に合わなかったが、都心へ向かう東北縦貫自動車道と首都高速川口線、常磐自動車道と首都高速6号三郷線を横につなぐ新路線になる。
開通する区間は三郷JCT(ジャンクション)から和光IC(インターチェンジ)まで。高架下に併設された国道298号も、三郷ー和光間二十一・二キロが新たに開通する。
和光ICから東京練馬区内までの区間二・七キロでは工事が遅れ、関越道との接続は来年度中に持ち越した。

朝日新聞[縮刷版]1992年11月26日 1,271頁より引用

特筆すべきは、最後の"和光ICから東京都練馬区内までの区間二・七キロでは工事が遅れ"の記述。

和光北ICを過ぎると半地下となる
(埼玉県和光市 2023年5月28日撮影)
外環上部駅(駅=和光市駅)北C広場
埼玉県道・和光インター線が走る
(埼玉県和光市 2023年5月28日撮影)
和光市道区間
ポールで区切られているのは、自動運転バスレーン

半地下構造は和光北ICで一旦終わり、埼玉の高架区間を経て、千葉県松戸市の松戸IC付近から高谷JCTまでが再び地下に潜る。
外環事業の歴史の中で松戸、市川といった住宅街を貫く区間の工事は難航したことは周知の事実。だが、開通から20年以上が経ち、薄れてしまった埼玉区間の記録があるのではないか。

与野図書館へ

さいたま市立与野図書館
(さいたま市中央区 2023年7月2日撮影)

埼玉新聞の縮刷版の蔵書があると言うことで、さいたま市中央区の与野図書館に足を運んだ。
2001年5月に浦和、大宮、与野の3市が合併してさいたま市が誕生した。浦和は浦和区、大宮は大宮区として地名が残ったが、与野は地名としては完全に消滅している。
何せ、JR与野駅は浦和区、与野本町駅は中央区、首都高速埼玉線の与野出入口も中央区になるのだ。ただこれで分かるように、駅名や高速の出入口の名前ではしっかりと生きていた。

話が脱線したが、悲願の外環開通1発目となったのは三郷・和光間の埼玉区間だった。圏央道が後から誕生した東京環状道路の国道16号とは違い、一般道の国道298号と高速道の東京外環自動車道の一体建設のビッグプロジェクトである。

以前発見した朝日新聞の記事は大分隅にあったが、外環道の直接の当事者である埼玉県の地元紙である埼玉新聞ではそれはないと信じた。
三郷・和光間開通前日の1992年11月26日と、関越道まで延伸開通前日の1994年3月29日の記事。期待通り、大きく特集が組まれていた。

高速終点の重み

和光市新倉の松ノ木島交差点からスタートする国道298号は外環道を時に見上げ、時に見下ろすように市川市高谷まで延びる。

"道路空間を有効利用" 軽部氏
新たに新倉パーキングエリアのすぐ隣に和光北インターチェンジを設置して朝霞方面への利便性を確保します。今回の開通区間の特色は、地域分断を極力避け、環境保全のため全区間半地下構造になっております。また将来のまちづくりに役立つように、道路空間の有効利用を目的として延長の半分以上の区間が蓋がけ構造になっております。
特に和光市の西大和地区では新しく制度化された立体道路制度を適用した施設ができております。

1994年3月29日埼玉新聞6面「広がる高速道路ネットワーク」より引用

1年半前に既に開通していた和光・三郷間だが、練馬区の関越道へ接続した際、和光ICの隣に和光北ICが設置されたとある。
朝霞市は和光市の隣に位置し、現在は国道254号和光富士見バイパスが繋がっている。ただ、1994年の段階ではバイパスは外環下、国道298号起点となる「松ノ木島」交差点から600m区間のみが供用されていた。

254号朝霞方面から見た松ノ木島交差点
(埼玉県和光市 2023年5月28日撮影)

ただ、先程の記事を読み進めて行くと気になる記述があった。

高速道路網が"連結"柵木氏
一昨年十一月に三郷から和光まで開通しましたとき、和光インターチェンジが端末インターチェンジとなる期間を極力少なくしてほしいという和光市からの要望もございまして、平成五年度内にという約束を守るために、当然のことながら工事期間の短縮を図るしか残された道はなく、その一番のポイントが半地下部で発生する掘削土(約八十万立方メートル)をいかに早く外に搬出して構造物を作っていくかということでした。

1994年3月29日埼玉新聞6面「広がる高速道路ネットワーク」より引用

和光ICは県道「和光インター線」に出る。この和光インター線の番号は「88」、外環側道としての機能を果たしつつ、途中で住宅街へと進路を変える。

外環側道としての区間
(埼玉県和光市 2023年5月28日撮影)
柱の設置、管理は埼玉県
番号は「88」とある
(埼玉県和光市 2023年5月28日撮影)
途中で外環から外れ、住宅街へと向かう
(埼玉県和光市 2023年5月28日撮影)

ここまで考えてみると、埼玉県区間のなかでも和光市については住民の意向が強く反映された形で事業が進められていたよう。ただ、30年近く終点であり続ける大泉ICが主要大通りにあることで、今度はその問題が隠れてしまっているのか。

時を遡れば30年、川越街道に対するバイパスはたったの600mのみ。国道254号が東京・群馬間の主要幹線道路だったのは今も昔も変わりはないよう。

[質問]
まず、一般国道二五四号和光川越間バイパスの東京外かく環状道路より先の延伸ルートの実現について伺います。  通称水道道路とも重なる県道和光インター線を東京方面から走ると、途中、和光市道三七八号線を経て、国道二五四号和光富士見バイパスへとつながります。この和光インター線は、名前のとおり、県道練馬川口線と国道二五四号を和光インターチェンジに接続させるための道路となっております。しかし、実際の車の流れは、和光インター線から市道三七八号線を直進し、和光北インターチェンジもしくは国道二五四号和光富士見バイパスへと流れている状況です。このため私は、通過車両の多い市道三七八号線を県道として管理すべきではないかと考えています。  一方、国道二五四号和光富士見バイパスの整備を鋭意進めていただいております。このことを考え合わせますと、バイパスが外環より先まで延伸されれば、この問題も解消されると考えています。都内に延伸することについては、東京都との調整が課題であると伺っております。私の地元和光市からも、その実現に向けて県に尽力していただくよう要望しております。そこで、一般国道二五四号和光川越間バイパスの東京外かく環状道路より先の延伸ルートの実現について、県の取組状況をお伺いします。
[回答]
(一)一般国道二五四号和光川越間バイパスの東京外かく環状道路より先の延伸ルートの実現についてでございます。  国道二五四号は、現在、富士見市内の国道四六三号から和光市内の外環までのバイパス整備を進めております。お尋ねの外環から先のルートにつきましては、これまでにルートの比較検討などを実施しており、検討結果に基づき、東京都と都内側への延伸について調整を進めてまいりました。しかしながら東京都からは、延伸ルートの都内側は既に土地区画整理事業などにより市街地が形成されており、新たな道路空間の確保は困難である旨の回答を受けております。このバイパスの延伸につきましては、本県と東京都を結ぶ都県境道路の大きな課題の一つと考えております。今後は、地元和光市とも連携し、延伸部の受入れについて引き続き粘り強く東京都に働き掛けてまいります。

埼玉県議会平成23年12月定例会資料より抜粋
[質問][回答]の2語は著者書き入れ
県道→和光市道で298号にまっすぐ接続する
(埼玉県和光市 2023年5月28日撮影)

和光市内の外環側道は和光インター線が北東にルートを変えると、その先は和光市道が松ノ木島まで延びる。

本線と直接ぶつからないバイパスは、どこかの道路が必ずアクセス道路として機能している。その例は数多く見受けられるが、和光市のこの問題は歴史的経緯から見て明らかに矛盾が生じる。
そして引用資料の補足として、直接一般道がつながらない大泉IC・和光IC間は高速があるから、外環の無料verの国道298号ユーザーが和光で降りて三郷方面へ向かう流れが大きい可能性がある。

前述の議会でのやり取りから5年、和光富士見バイパスの延伸計画について動きがあったようである。

埼玉県では、都県を結ぶ重要な幹線道路である国道254号の混雑緩和や外環道へのアクセス強化等を目的として、国道254号和光富士見バイパスの整備を進めていますが、和光富士見バイパスが外環道までの計画となっているため、外環道以南の延伸について従来より検討を進めてきました。
また、東京都では、関係区市町とともに「東京における都市計画道路の整備方針」を平成28年に策定し、埼玉県(和光市方面)との連携強化を図るため、東京都区部と埼玉県南西部における都県境周辺の都市計画道路網の充実に向けた検討を進めることとしました。
そのため、県及び都では、この地域の都県境付近の道路網について、都県境を跨ぐ交通の円滑化や広域的な防災機能の強化等の観点から、連携して検討を進めてきました。
このたび、これまでの検討結果を踏まえ、早期の広域道路網の形成や沿線開発による地域活性化等を目的として、埼玉県が外環道以南の区間(区間1)の都市計画手続に着手いたします。また、都県境を越えた道路網の充実に向けて、接続先となる路線(区間2)についても、引き続き、都県が将来的な機能強化を図るため連携して検討を進めていきます。

埼玉県HP「国道254号バイパスの外環道以南の延伸に向けた取り組みについて」より

東京都区部とは俗に言う東京23区のこと。
関越道は「E17」を名乗るが、その17番の国道は都県境を越えるとさいたま、上尾、熊谷、深谷と関越道が通るルートからは逸れる。
今回問題になっている和光市は17号ではなく、北西へ延びる国道254号沿い。

17号には新大宮バイパスがあるし、将来的には首都高の「与野JCT」から上尾道路を経由して熊谷バイパスまで高規格道路でつなぐ「新大宮上尾道路」計画が進行中。
南北の道路網は強化されつつあるが、その影で254号の扱いは一体どうなるか。

外環以南の都市計画検討資料

和光富士見バイパスの朝霞以西が開通して国道463号とつながれば、現在以上に東京方面からのアクセスが重要になる。
外環側道で練馬区と和光市は往き来できないが、国道254号本線とバイパスの間はむしろ信号の少ない道路。それに上下線が外環道を挟んで分かれているので、逆走にさえ注意すれば問題ない。

ただ、幹線道路となるには貧弱すぎる。
外環で終わる計画だと、国道298号として整備されなかった区間が本線と直接往き来できる道路と言うことで再び問題が起きる。

そこで、バイパス延伸計画が埼玉県によって発表され、上の概要図はPDF資料に掲載されている。
注目するべきは青点で示された区間②で、国道17号新大宮バイパスと接続する笹目通りへの言及。
現状、首都高から高速のみで外環へ抜けようとすれば、美女木JCTまで新大宮バイパス上を北上することになる。

ただ、外環道が東名まで繋がると状況は変わる。
首都高池袋線から15km超えの長大トンネルである中央環状線の山手トンネルを抜けることで、「外環(美女木)⇔中央道(西新宿)⇔東名(大橋)」のネットワークは補完されるが、渋滞が激しい。

中央環状線・西池袋入口
中央道13km、東名17kmとある
(東京都豊島区 2023年7月8日撮影)
山手トンネルの地上を走る都道・山手通り
(東京都新宿区 2023年7月8日撮影)
豊島区要町付近からトンネルはスタートする
熊野町方面側入口
(東京都豊島区 2023年7月8日撮影)

京葉道路から東名までが一本で繋がる、首都圏道路の革命である。
環八に高速がないから止む終えず下道、あるいは中央環状線を選択していたユーザーの中でも、和光市や練馬区近辺からだと外環利用一択になると思う。

ただ、三郷方面からだと美女木JCTで池袋線に乗り換えていた利用者の多くが、動きを変える可能性が高い。
そして、埼玉県と隣り合わせの板橋区からは池袋線まら美女木JCTで外環へ…。
そこで板橋区⇔和光市間を短絡する幹線道路整備員が進めば、国道254号川越方面や首都高方面とのアクセスが良好になり、更には短絡によって「中央環状線⇔(熊野町)⇔池袋線⇔(美女木)⇔外環」の高速道路の交通量減少が見込まれるのではないか。

とは言え、それなりの規格で整備されるのが条件だが…。

松ノ木島終点は当然のことだった

川越街道を踏襲する254号は旧道になり、通過交通は新大宮バイパスから和光富士見バイパスへ。
将来を見越せば和光北ICが事実上の埼玉県側最後のICとなり、開通当初の終点和光ICは尻切れトンボ状態の関越道と和光市内を往き来する利便性向上の役割を担っていると思う。

バイパス整備が完了すれば、松ノ木島以南の側道には国道でなければならない程の機能は必要なくなるのだ。

続く
















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