NHK新人落語大賞

noteを始めることにした。
たまにやってる人いるけど、結構面倒くさいなぁと思ってて今まで手を出してなかった。

ただ、基本的にTwitter、InstagramのSNSしか使ってなかったので、自分の考えを書くには文字数が足りないかなとも思って、書くことが出来た今がいい機会だということで始めた。

だいたいが語弊を恐れすぎて回りくどく書いてしまう性質なので、こっちの方が向いてるかもしれない。(もしかしたら回りくど過ぎて読みにくくなるから向いてないかもしれない)


やっと本題。11/23、令和3年度のNHK新人落語大賞の模様が放送された。優勝は桂二葉。満点の圧勝だった。本当におめでとうございます。

この大会は公開収録で、11/1にNHK大阪ホールで収録が行われていた。俺は観覧に行った。放送では見たことがあったが、「落語の賞レースの現場はどんな雰囲気なのか」が気になったからである。

ちなみに、俺は素人の落語の賞レースにはあまり意義を見出だせていない(今度詳しく書くね)が、プロの賞レースは「それを仕事にしてる人が仕事をすることで、新しい仕事を取れる」という図式に魅力を感じるので、M-1もKOCもR-1もこれも興味を持って見ている。


今年の決勝のメンツは50音順に桂小鯛、桂二葉、春風亭好志朗、春風亭昇也、笑福亭生寿、林家つる子の6人。審査員のメンツは桂文珍、柳家権太楼、片岡鶴太郎、堀井憲一郎、広瀬和生。落語の審査として、上手いこと選ばれた審査員だと思う。

で、今年度から新しく、出番順を公開抽選で決めることになった。くじの結果決まった出番順は
好志朗→小鯛→生寿→昇也→つる子→二葉。

以下、各演者に対して俺が抱いた短い感想を、現場の雰囲気から感じたものも含めて書いていく。

好志朗「権助魚」
平凡。展開はスピーディーだが伝わってくるものがやや少なかった。編集が難しいところもあるし、意外にこの噺言葉数も要るんだなぁと思った。

小鯛「親子酒」
ボケのパターンが多いし、ウケがきちんと取れていた。前半を膨らませる上方の演出をさらに詰めたのが良い方向に出ているように見えて面白かった。少ししつこくも感じた。

生寿「近日息子」
編集が自然で、繋がりが非常に良く、噺の流れが最もよく伝わったと思う。笑いの量としても理想的な曲線だったように感じる。

昇也「壷算」
声が良く、スッキリと聞くことが出来た。後半につれ、どんどん面白く思えたので、壷算のからくりをきちんと理解させていたと思う。ただ前半の取っかかりが少なく、全体のバランスが悪くなってしまったのが惜しい。

つる子「お菊の皿」
編集の能力に長けていると感じた。見せ所、笑わせ所がハッキリしていた印象。そのポイントで大きな笑いが来なかったので、全体的に小ぢんまり見えた中で顔芸だけが無駄に浮いてしまった。ウケが想定を下回ったのが全て。

二葉「天狗さし」
間違いなくトップのウケ。面白さの残り方(余韻)が理想的。噺全体を聞いての満足感が高い。これぞニンに合っている、という内容だった。ややウケすぎな感もあったが、笑いが途切れなかったので爆笑に繋がった。

という感じ。見たところ二葉と生寿が抜けているかな、という風に思えた。
今年度は大阪での収録やからね、江戸勢のアウェイ感は思ったより強く、かなり厳しい戦いを強いられていた。


一人終わるごとに審査員の講評があるのだが、なるほどと思わされるような講評が続いた。概ね俺が抱いていた印象と重なっていたのもあるが…演じ分け、編集、ウケ、そして演者本人の魅力。バランスよく見られていたと思う。

採点は全員が演じ終えてからまとめて発表。1人10点の持ち点で50点満点。各審査員の採点は以下の通り。(順番は出番順)

桂文珍    9   9  10  9   9  10
柳家権太楼  9 10    9  9   8  10
片岡鶴太郎  9   9  10  9   9  10
堀井憲一郎  8   9  10  9   9  10
広瀬和生   7   8    9 10  8  10
合計      42 45 48 46 43 50

というわけで、二葉の完全優勝となったわけである。2位は生寿、3位は昇也。結果は順当だった。

演者の落語の出来は概ね良く、審査員の講評や審査も現場の空気感から言えば妥当で、それを身をもって感じられたので、現場で見られたのはよかった。


ただ、どうしても気になることが2つある。

1つ目は得点の付け方。
審査員の得点の付け方がおかしい、と言っているわけではない。むしろ妥当である。そこではなく、「10点満点」である。今どきそんな賞レースがあるか!??

当然ながら、予選を勝ち上がってきた人達の演る落語なのだから、レベルは高いところで推移していて、点差を付けにくい。そこを10点満点での評価は難しすぎる。

10点満点を100点満点に換算すると、決勝で7点、つまり70点台はなかなか出しづらい。となると事実上、100点満点だと80点から100点の21点の中で争うことになるわけだが、そこを8点から10点の3点で争うのである。6人が。

これは苦労する。同じ9点でも差があるはずである。92点なのか95点なのか98点なのか。95点以上は四捨五入したら満点になってしまうわけで、差を付けるためには完璧かどうかはさておき、二葉に10点満点を付けるより他にあの出来の落語を評価することは出来なかったはず。

結果的に、6人の合計点数に差が出たのはよかった。ほとんど完璧な審査であると言える。しかし、ここまで差が付けられない方法はやはり見直すべきだと思う。審査員が審査で差を付けにくいのだから。演者も正当な点数なのかを測りづらいだろう。 

「満点」が出ることは即ちその大会における「正解」を意味する。翌年度以降の指針になってしまう。そこまで考えた上で採点方法を決めてほしい、と強く思った。

やはり100点満点にするか、最も良かった演者への投票にすべきでは?それでも二葉の優勝は変わらなかっただろうし。


もう1つは、非常に言いにくいが、客層のアレ、である。
とある演者が、自分の出番が終わった後のインタビューで、「いつも応援してくれる人がたくさん来てくれて」と感謝を述べていた。

それは、どうなのか?
賞レースの観覧で「ある演者の客」がたくさん来られるのはさすがにどうなのか?

演者を批判しているわけではない。恐らくルールでこれは禁止されていない。勝つために当然やれることは全部やるわけで、その一環だとしたらむしろ褒められるべきことである。

良くないのは運営がそれを野放しにしていることに他ならない。落語の大会なんてそんなもん、と言われてしまえば実情は「そう」であるのだが、ここの所を是正しないと、テレビの向こうの人からしたら疑問も生まれてしまう。
せっかく勝ち負けを決めるのに、ミソが付くリスクは排除してやるべきだと個人的に思う。


とまあ、大真面目に長々と書いてしまった。落語の賞レースでここまでごちゃごちゃと言う奴は少ないと思うし、必要性があるのか、と問われれば全く無い。

ただ、せっかくのテレビなのよ。せっかく落語がテレビで流れる、しかも若手の落語が。
この機会をなるべく活かしてほしいなぁと思うのよね。だから、新人賞を決める、だけの意味合いならこんなに色々考える必要はないと思っていて、これをお笑い大賞と並行して開催する賞レースとするなら、テレビで流す番組にするなら、より盛り上がる方法ってあるんじゃない?って感覚かなぁと。

何度も書くけど、演者のレベルも審査の内容も良かったから、それなのに疑念として残ってしまう部分があるのは惜しいなぁって思っちゃったという話でした。長過ぎる観戦記。

                (文中敬称略)


以上、またお目にかかれますよう、さいなら。

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