飾らない言葉だからこその説得力

YOU

JIROが作詞もしている楽曲だ。基本、彼は作曲はしても作詞はTAKUROに任せることが多い。JIRO楽曲の味わい深さや、ライブでの盛り上がりの一端を担っているのは、TAKUROの歌詞だったりもすると思うが、JIROが描く詞も楽曲の世界観にどっぷり浸れる。
JIROの詞が世に出る時は、デモの段階での仮詞がハマっている時のようだ。
TAKUROが別のストーリーを創るより、JIROが生み出した詞の世界がベストだと判断された時なのだろうと想像する。

JIROの生み出す楽曲には、特徴を持ったいくつかのジャンルというかパターンがあるが、この「YOU」は中でも、結構心の奥の方に踏み込んでくるタイプの楽曲だ。純粋なマイナー調ではないし、だいたい最後に明るさの要素が加わるのだが、決してTERUが声を張り上げるような明確な緩急はないし、展開が豊富にあるわけでもなく、ともすれば淡々と楽曲が進んでいくようにも思える。だからと言って、薄いのかと問われればもちろんNOという回答になるし、バイブルのような楽曲もなりうるかと言われれば、そうでもない。

でも、芯に迫ってくるような、軸をじわじわと攻めてくるようなそんな奥深さがある。だからといってまとわりつくようなジトッとする感じでもなく、心の奥の方にスッと入ってきて、たまにチクっとするような感覚。
それは楽曲としてのパワーもそうだし、歌詞が描く世界も関係している。
JIROの詞は難しい言葉をつかったり、たとえ表現が高度だったりすることはない。ストレートで、わかりやすくあるがままを伝えてくれる感じ。
TERUもストレートであるが、スーパーポジティブな歌詞を気持ちよいメロディに乗せるTERUの世界観とはまた別の、当たり前にあるちょっとしたネガティブな感情も捉え方次第で、ポジティブにだってなれるということを冷静に教えてくれる。そういうストレートさ故、伝わるものがある。

少し脱線するが、JIROが不定期にやっているもう一つのバンド「THE PREDATORS」の楽曲に「ISLAND」という暗めの楽曲があるのだが、その曲がとにかく好きだ。山中さわお氏が詞を描いているが、この楽曲のもつ説得力のようなものをより強固にしてくれている。この「YOU」が作り出す世界観にも似ているような気がする。

メンバー全員がそれぞれの個性を持って楽曲が作ることができる。本当にバンドのお手本のようなバンドだと思わずにはいられない。




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