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オープンカーのジャガーに乗りながら

1番の友人とオープンカーのジャガーに乗っている。僕は助手席だ。運転しているのは僕の中学からの友達で大の車好き、現在は就活中で大忙し、毎日面接や説明会に行き、心も身体も疲弊している。大手グループ会社を志望している。
僕は去年の9月から大学を休学していて就職活動はしていない。両親の離婚で実家が無くなり、元地元から二駅ほど離れた所に住んでいる。起業しようと店舗を準備している最中だがまだまだ課題が多い。今までは同じ環境で生きていたので毎日遊んで同じゲームをして同じ酒を呑んでいた。今はジャガーでドライブしている。仲良しに見えるかもしれないが、実は数ヶ月間あまり連絡を取らず、少し疎遠になっていた。

きっかけは最近、久しぶりに僕から連絡して地元のコメダ珈琲で待ち合わせした。友人はリクルートスーツ、僕はたるんだパーカーを着ていた。企業のことは何一つわからない僕には就職活動のリアルな話は新鮮な話だった。働き方改革と岩れている時代に圧迫面接が本当にあることや、薄っぺらい内容のグループディスカッションの話などを聞いて自分は絶対出来ないと思った。僕は学校にも馴染めた事が無くて、会社に入っても続かないと小さい頃から思っていたので就活の時期になっても微塵も企業に入るなんて考えなかった。そんな僕なので、就活期間に入った友人の気持ちを分かっていなかったし、どこか就職するのを否定的に思わせるような言動や態度があったのかもしれない。疎遠になったのは僕に原因があると思った。僕も一時的に企業に勉強に行くことになり、少し友人の心の疲弊を理解した気がした。その辺りから不思議と会って話すようになった。

そんな関係の友人が、夜にオープンカーのジャガーに乗って突然僕の家に来た。友人はリクルートスーツを着ていた。就活帰りなんだなぁと思いながら「どうしたん?これ」と言うと「シェアサービスで借りた!」と言っていた。まだまだ寒いのにオープンカーで琵琶湖沿いを走った。マックのドライブスルーでコーヒーを買って飲んだ。友人は好きな車をぱっと買えるようになりたいらしい。僕は車に全く興味はないけど、いつも好きなことをしたいと強く思う。好きなことをして、ただ楽しんでいた所から欲が出はじめた。欲がでたら努力するしかない。背伸びしてオープンカーなんて乗ったけど、なんだか頑張らないとなぁと思った夜だった。