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ユーリ・ビップスのF2参戦は吉か凶か

わたしの「推し」ドライバー、ユーリ・ビップスがFIA-F2(以下F2)に参戦することが決まりました。



エストニア人のビップスはいよいよF1進級を視野に入れました。彼をサポートするレッドブルの意向で、今季(2020年)はF2ではなく、F2に準ずる車格である日本のカテゴリー「スーパーフォーミュラ」(以下SF)に参戦する予定でした(「意向」については後述)。
しかし今般のウイルスの影響で、日本のモータースポーツも始動が遅れました。春に開幕するはずだったSFは8月の最終週にようやく開幕します。

レースができなかった間、ビップスはヨーロッパに戻っていました。ヨーロッパでのウイルスの流行を受けて、日本でレースをするにあたり、入国が叶うのか懸念が出ました。

スーパーライセンスさらっと解説

F1に参戦するには、スーパーライセンスという免許が必要です。様々な条項があり、この中で曲者な条項が「スーパーライセンスポイント」です。
世界各地のレースカテゴリーが格付けされ、例えばこのカテゴリーで年間優勝すれば20ポイント、年間2位なら10ポイント、というふうな割り振りをされます。
3年分のポイントが有効とされ、今季終了時点で2018年のポイントまでさかのぼって、合計40ポイント持っていればポイント条項はクリアとなります。

そして現在、ビップスは25ポイント持っています。

https://motorsports-regulations.com/f1_regulations/f1_license

本命はF2によこさない

レッドブルはサポートするドライバーがF1へリーチをかけた際、参戦するカテゴリーを精査している節があります。
F2はF1開催時の前座レースです。もし良い結果を残せばポイントを多くもらえる反面、チームの当たり外れなどの外的要因も浮沈の鍵を握る理不尽な面もあります。
レッドブルは2007年に、進級間近のドライバーをF1の前座レースのカテゴリーに派遣しましたが、彼はレース中に手首を骨折するアクシデントに遭って調子を落とし、F1へのキャリアを断たれました。それ以来、F2になってもこのカテゴリーにドライバーを派遣する事にどこか消極的です。理由はそれだけではないのですが。

現在レッドブルはホンダからF1用のパワーユニット(エンジン)を供給してもらっている関係上、サポートするドライバーを日本のSFでホンダエンジンを使用するチームに派遣しています。現在F1のレッドブルの二軍チーム「アルファタウリ」で走るピエール・ガスリーは、2017年にレッドブルのサポートドライバーとして来日し、SFで総合2位に入りライセンスポイントを集めてF1に進級しました。

方針転換

ビップスもその例にならって来日するはずでしたが、ヨーロッパで行われるレースカテゴリーである「フォーミュラ・リージョナル・ユーロカップ」(以下FREC)の開幕が7月に決まり、それを踏まえての合同テストにビップスが参加した、というニュースが6月下旬に入りました。

この知らせを受けてビップスがどう考えたのか推測してみると

・SFはいつ始まる?決まったとして入国できる?
・ヨーロッパにいるうちにどっかで走れないかな
・あわよくば年間ポイントもらえたらいいな

という意図をくみ取りました。

SFとFRECは、車両のパフォーマンスはSFの方が上(速い)ですが、上のリンクを参照すると、もらえるライセンスポイントは同じです。つまり今季ビップスとしては、総合優勝を狙うならどちらに参戦しても変わらないという事になります。

計算外

しかし一転、FRECで思うような結果が出ず、前述のSFの開幕戦が8月末に開催されることが決まるも、隔離期間も含めたら、8月の上旬には来日していないと時間切れですが、入国への手続きはなかなか進展しません。来季どうにかF1に進級できるように動いたはずが完全に裏目に出てしまいました。
その頃F1と同時に開幕したF2では、ホンダのサポートを受けてレッドブル傘下のドライバーとなった角田裕毅が好走をみせ、彼が40ポイント集めるために必要な総合4位が見えるやいなや、レッドブルのアドバイザーを務めるヘルムート・マルコから『お墨付き』をもらったなんてニュースも出ました。

ビップスにとって良くない状況ではありましたが、わたしがF2イギリスラウンドを観戦している時に、放送された無線の交信にある予感を覚えました。
前述の角田の活躍と比較して、角田のチームメイトのジェハン・ダルバラの戦績は今一歩でした。ダルバラも今季からレッドブルの傘下ドライバーとしてF2に参戦しています。
そんなダルバラが中位を走っている時、チームにこの後の戦況を無線で尋ねます。が、チームは

「いいから速く走れよ」

と強い口調で返します。ダルバラの戦績に満足していないチームの態度を感じたわたしは、もしかしたらこのままダルバラの戦績が上向かないと、日本に入国できないビップスと交替させるのではないか?と考えました。レッドブルは過去にも、サポートした若手のパフォーマンスが上がらないと、無慈悲にサポートを打ち切ってきた組織です。

ただここでダルバラを降ろし、ビップスと角田がチームメイトになった時、ライバル関係が必ず良い効果をもたらすとは限りません。ただ何が起きても驚かないよう、こういう予感は予感として置いておいて、何が起こるか見てみよう。と構えることにしました。

すると事態はわたしの思う斜め上に進みました。イギリスラウンドの次のスペインラウンドのレース中、ショーン・ゲラエルというドライバーが接触事故により椎骨を骨折してしまいます。


ゲラエルは6週間の安静が命じられ、その間のレースを欠場する事になりました。6週間安静となると、今決まっている限りだと9月半ばのイタリアラウンドまでの6レースは欠場です。こうなった時、アピールの為にF2に出たい若いドライバーは少なくありません。チームは代役を探す必要が出てきます……。

そしてF2へ

現地時間で8月の21日でした。来週にベルギーラウンドを控えたこの日、ゲラエルの所属するチーム、DAMSから発表がありました。

「ユーリ・ビップスをゲラエルの代役とする。期間は3ラウンド」

思わぬ形でF2デビューが決まりました。後にF1へ進級するドライバーが命運を分けた瞬間は、唐突に誰かの代わりを務める時だったりします。ビップスもそうなるのでしょうか?

現在F2で好調を維持する角田に、国内外からF1進級への期待がかかっていますが、今回のビップスの参戦で潮目が変わるのか注目したいと思います。

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