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あふれるように

なずむ
という古い言葉が、
ここで過ごす時間に一番ぴったりくるように感じている。
プラスの意味のある言葉ではないけれど、
生産性のあることはなぁんにもしていないのだから、
良い言葉で表現できないのはしかたない。

本ぐらいは読むけれど、
まぁだいたいは寝ていて、
気が向いたら温泉にどぼんと浸かり、
ごはんも、もーどん兵衛とかでいんじゃない?っつって、
ストーブに誰が油を足すかで無言の喧嘩をし、
冷えてきたら温泉に入り、
廊下が寒いって言って布団にもぐり…
ただ泥のように停滞している時間。

バリアフリーとか、
ヒートショックとか、
省エネとか、
そういう発想がない時代につくられた木の浴槽は
深さがしっかりあって、
どぼんと浸かると耳の下くらいまでお湯がくる。
お湯がたっぷりしていることはぜいたくだ。
と思う。
いや、こういうセカンドハウス的なものがあるのは
それだけで本当に贅沢なのはわかってるけど、
そうゆうのを抜きにして、
本能が「これは贅沢なことだ」と言う。

贅沢ついでに言うと、
温泉の権利というのはどうやら
ペンションとかを経営する人向けであるらしく、
(そりゃそうだ)
たまにしか来れない我が家が
どれだけじゃばじゃば使っても、
基本料金の範囲から大きく足は出ない。
…らしい。

信州というのは湿気の少ない場所で、
そこにある、
たまにしか使わない木の風呂というのは、
カラッカラに乾く。
楢山節考の映画の中で、
姨捨山についた “わらび” たちが最初にみるのは
乾いて壊れてしまわないように
前の “わらび” が水を入れておいてくれた木桶なんだけど、
(ここらへんのことはふわっとした記憶で書いております)
もう本当に、
しばらく通わないだけで
木製の桶なんかはタガが外れるくらい乾ききる。
水気をきっておかないとかびるので、
帰る時にはある程度乾かすようにしているのだけど、
一ヶ月も空けておくと、
次来た時には風呂桶が乾燥して隙間が空いちゃって、
ザーザー音がするくらい水が漏る。
しばらくして水分がゆき渡れば
きちんとお湯がたまるからいいんだけど、
景気良くザーザー出すのはお代のかかる水よりも
実質0円の温泉よね。
って事で、温泉の方を使うことになる。

ザーザー漏れた温泉と
その熱い湯気はお風呂場の基礎部分を満たし、
廊下の床までほんのり暖かくなる。
まさに一石二鳥!
と、得意になっていた、
そんな時期もありました…

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