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土にかえり森になる

コンクリとプラッチックの中に住んでいると、
人は、畳が落ち着くやら、
木目が目に優しいやらと安易にくちばしりがちだ。
木のぬくもりがうんたらかんたら、
人工のものばかりだと心が乾くだの、
やっぱり子どもが暮らす場所は自然の素材で整えたいだの、
しょっちゅう聴こえてくるわりに、
本気でそういう環境で「生活」しようとしてる人って
ごくごく少数なんでないの?
と、かなり疑っている。
だって自然はこんなにもめんどくさい。
風呂桶の板を一枚一枚確かめながら
隙間に檜のカンナくずをつめたり、
どこからか湧いてくるカマドウマを
声にならない叫びをあげながら駆除したり、
急に熱湯になったり水になったりする
温泉に翻弄されながら頭を洗っていると、
ハラの底から
「FRPユニットバスさいこーーーー!!!
 機密性バンザイ!!!」
と叫びたくなる。
余暇の時間を過ごすにはいいけれど、
新建材での生活に慣れてしまったら、
もう木造家屋には戻れないと思う…
愚痴もなく語れる「木の家」なんてファッションですよ。
木の素晴らしさを語る前に、
自分ちを構成している建材の素晴らしさを讃えよう。
隙間から風が吹き込んでこない壁、
雪の重みでピシパシ音のしない屋根、
どっしりと足元を支える床。
木は、
歪むし、割れるし、腐るのだから…

さて、
我らが山小屋は
実にシンプルな木造建築であり、
時々補修はされつつも築約半世紀。
建てた時に学生だった子がもうおじいちゃんですから、
あそこもここも傷んでおりまして、
特にトイレの前の床の老朽化が目立ってきておりました。
こう、踏むと、やばい感じにたわむ…
えー?なんでこんなとこが?
と原因をいろいろ考えて、思い当たったのは、
湯気。

そういやぁ、足元あったかかったもんね。
あったかくなるくらい湯気が溜まってるんだもん、
そりゃ廊下も腐るよね。
えー、下落っこちたらどうしよー
斜面に建ってるから、実は結構床高いよ。
と、ケラケラ笑えていた時期が、
それでも5年くらいはあったのです。

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