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頭部の安定とバランス反応

パフォーマンス向上には姿勢の安定は重要な要素となります。


姿勢の安定において重要な感覚器は体性感覚・前庭覚・視覚の3つになります。
これらの3つの感覚器が働くことで姿勢を保持しています。



1.体性感覚

地面の形状や柔らかさなどの情報は足底感覚や、筋中に存在する筋紡錘などから情報を脳に送り続けています。地面が傾いている、凹凸などの形状を認知するためにも体性感覚は重要な感覚器となります。そのため筋肉は収縮器官でもあり感覚器官でもあるとされています。

2.前庭覚

小脳にある前庭にて重力や身体に加わる加速度、頭部の傾きを感じ取り、頭部を垂直に保ちます。
重心動揺計にてその軌跡を計測すると、絶えず重心は動揺しています。動揺する重心を感知し、姿勢を常に修正し保持しています。


3.視覚

視覚はフィードフォワードという、先行的に入る情報を処理し、姿勢を修正するのに貢献しています。そのため視覚を優位にトレーニングを行うとその処理に時間がかかるため、実際のスポーツ動作との乖離が生じる可能性があります。

これらの3つの感覚器の情報が統合され姿勢を保持しています。

姿勢制御のポイント
✔︎筋肉を感覚器として働かせるためにも姿勢保持における過剰収縮を避ける
✔︎頭部を平行に保つ
✔︎視覚によるフィードフォワードを活かすためにも頚部を動かしたい
(眼球の動きも大事)

→頭部を平行に保つためには脊柱の分離(頚椎-胸椎・胸椎-腰椎)が必要になる


4.バランスとは

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バランスが良いという定義は何を意味するのかを考えたい。

その場で止まるためのバランス→足を動かさずにバランスを保つ→バランスを崩した際に一歩出せる。

その場で止まるバランスも必要だが、バランスを崩した際に一歩踏み出せることもバランスが良い証拠である。


上述した通り、姿勢制御には脊柱の柔軟性により頭部を平行に保つ能力が必要になる。
そのため、バランス能力向上には脊柱の柔軟性の確保が必要になる。


5.脊柱柔軟性評価

姿勢評価|台形型・平行四辺形型
姿勢により硬い部分、弱い部分をおおよそ見分ける

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リーチ動作|骨盤帯に対する胸郭の動的柔軟性を評価する
骨盤の傾斜に対して、非移動側の内外腹斜筋が胸郭の傾斜を制御する。
また胸郭の傾斜に対して、非移動側僧帽筋による肩甲骨下方回旋および内転、運動側前鋸筋による肩甲骨上方回旋により、胸郭を垂直位に保つ働きをする。
以上の立ち直り反応により、胸郭の垂直位が保たれることで頭部は安定する。
しかしいずれかの機能不全により、両側の肩関節を水平に保たれなくなることで胸郭が傾斜し、頭部の立ち直り反応を引き起こすことになる。

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足を地面に着いた状態の並進運動は脊柱のS字状の移動量を評価する。
足を地面に着いた状態では骨盤が水平位を保たれることで、下部体幹に対する上部体幹の移動量を評価することができる。
このS字状の移動量は上述の圧縮伸張ストレスを分散できるだけでなく、脊柱の分節的な動きを可能とし、動的な安定性にも関与すると考える。
そのため、C字状の柔軟性に加えてS字状の移動量も同時に評価する。


片脚立ち|下肢に対する骨盤帯の移動量、骨盤帯に対する胸郭の移動量を評価する。
支持基底面内に重心を収める戦略の評価となる。
①骨盤側方移動に伴う股関節内転にて重心を支持基底面内に保持する
②足底に対して骨盤側方移動が大きくなり、重心が支持基底面内側に寄ると股関節外転筋での制御が必要になる。
③足底に対して骨盤側方移動が小さいと、上半身質量中心を移動させ、支持基底面内に重心を収める必要がある。

✔︎骨盤帯の移動量の増加は下肢筋の対する遠心性の負荷が高まり、それを制御する筋の障害を招くリスクが高まる。
✔︎胸郭の移動量増加は頭部の移動量増加を招き、姿勢保持が難しくなる。

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体幹回旋|下肢に対する骨盤帯、骨盤帯に対する胸郭の柔軟性を評価する。
支持基底面内において重心の移動戦略を評価する。
姿勢を保つには支持基底面内に重心が投影されている必要がある。

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④足部に対して骨盤帯・胸郭が均等に回旋し、重心が支持基底面内に留まっている。スライドされた各関節は筋によって制御される。
③足部に対して骨盤帯を大きく回旋させ、骨盤帯に対して胸郭の移動量が少ない。足部に対する骨盤帯の移動量が大きいことから、足部と骨盤帯の間にある筋には大きな負荷がかかる。
②足部に対する骨盤帯の移動量が少ないが、骨盤帯に対する胸郭の移動量が大きいことから、その間にある筋には大きな負担がかかる。

②③は各部位間の運動量の差があることから、一部に負担がかかりやすい状態になることから全体の移動量は制限されやすい。

下肢の連動性低下による骨盤帯移動量の減少は、胸郭での代償を招き頭部の移動量が増加するため、姿勢保持を困難にする。

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6.連動性トレーニング

腕や脚を動かす時に全身が連動することで、作り出されたパワーが滞ることなく発揮することができる。
上肢の動きは胸郭を介して体幹へ伝わり、下肢の動きは骨盤帯を介して体幹へ伝達される。その逆も然り。

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四肢の動きの低下は、その動きを体幹が代償することで、本来の連動性は損なわれ力の伝達のロスに繋がる。
そのため、最適な力を発揮するには体幹と四肢が連動し、またその動きを制御できることが条件と考える。

以上より
胸郭と骨盤帯の回旋運動を均等化させることで、バランスよく姿勢を制御することができる。
胸郭は上肢、骨盤帯は下肢と連動するため、それぞれの連動性の低下は体幹回旋運動の低下を招くことになる。


軸回旋の重要性


連動性トレーニング例


スポーツパフォーマンスにおいてバランスが良いということは非常に重要な要素となる。
バランスを保つ、バランスが崩れても一歩出せる。それぞれにおいて脊柱の分離、柔軟性が重要になる。
特に頭部を安定させることが姿勢を保持するために条件になる。
不安定なところでバランスを保つ練習の前に、柔軟な身体を獲得する必要があるのではないだろうか。



平 純一朗|タイラ ジュンイチロウ

Medical Fitness Ligare(https://ligare-matsudo.com)GM 2016.10-
L-fit.(https://www.l-fit.training)代表 2017.10-
アスレティックトレーナー養成校非常勤講師 2011.4-2023.2
社会人関東サッカーリーグ1部所属チームトレーナー 2016.1-
V2リーグ女子所属チームトレーナー 2016.10-2022.3

【資格】
理学療法士
日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー

【SNS】
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