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「おんな」vol.7 Naokoさん / 藤里一郎先生

二度と、同じ場所で同じようにそこに映るうつくしさを抱きしめることができないとも思うし、何度だってまたそこへ戻って来られる気もする。

潮風が目にしみて、海の匂いと湿気で愛おしさに溺れそうになる。
あなたとの世界が、距離が優しすぎて。自分が自分でいることを許されていることに、途方もない安心感で震えた。

この街を通って揺れていく風が触れて、
隣を歩いて、少し離れたところからあなたが見てくれて。それだけで何もいらないと思ってしまう。

もう、あなたとのことしか思い出せないし、
ここに来たらどこを歩いてもあなたがいる。海と一緒に流れてくる温度に、私はこの瞬間がずっと続いて温かいまま昇華して仕舞えばいいと思った。

あなたが触れる、私のまぶたも首筋も熱くなってこのまま溶けてしまったら、一つになれるんだろうか。

あたたかい光が包む景色にさらわれたら、
あの時の刹那が永遠に続くようで、この場所には戻れない気がしてきた。もう、二度と。

けれど、それと同時にあの日の匂いを思い出すと感じる。やわらかい痛みに抉られて、何度だって私は「私」と「あなた」に還ってこれるのだと。

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