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第95回アカデミー賞全部門ノミネート最終予想

今年もこの瞬間がやってきました。ちょっと忙しくて、前回と同じように全部門解説は出来ていませんが、気が向いたら後で捕捉を入れたいと思います。

用語集
・英国アカデミー賞 - BAFTA
・ゴールデングローブ賞 - GG
・クリティックス・チョイス・アワード - CC
・全米製作者組合賞 - PGA
・全米映画俳優組合賞 - SAG

作品賞

まず、最重要賞にあたるBAFTA、GG、CC、PGA、SAGを制覇した『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』『イニシェリン島の精霊』は候補入り確定、現時点は受賞はこのどちらからか出るものと考えても良い。SAG以外の4賞で候補入りした『エルヴィス』『TAR/ター』『トップガン: マーヴェリック』、BAFTA以外の4賞で候補入りした『フェイブルマンズ』も当確と言って差し支えない。GG、CC、PGAで候補入りした『アバター: ウェイ・オブ・ウォーター』は、BAFTAで技術賞の2部門しかノミネートされなかったことや、大作の競合が多い今年のレース展開が不安要素として考えられるものの、13年のブランクを物ともせず公開1ヶ月強で興収20億ドルを突破する特大ヒットを記録している話題性を考慮すると、まだアカデミー内での訴求力はしっかり保持していると考えられる。

上記7作を現状ノミネートまで安泰な作品として、残り3枠を考えて行く。
まずは8枠目だと考えているのが『ウーマン・トーキング』。テルライド映画祭のプレミア後には絶賛票が集まり、一時期は『フェイブルマンズ』や『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』に並ぶほどの一大有力候補だったが、GGでの作品賞落選を皮切りに、PGAでも落選するなど急失速。極めつけが先日のBAFTA、俳優賞・監督賞・作曲賞の候補を勝ち取れなかった上、作品唯一の当確部門とされていた脚色賞でも落選。最重要賞でまさかの候補ゼロを喫し、予想家の間では作品賞予想から本作を外す動きが少なからずあった。ただ、個人的には2つの理由からまだチャンスを持っていると考えている。1つ目の理由としては、SAGのキャスト賞に候補入りしたという点。会話劇であり、密室劇の要素もあるという点では、同賞でノミネートされながらオスカー候補を逃した『あの夜、マイアミで』と『マ・レイニーのブラックボトム』を想起してしまう部分もあるが、前作が同賞を受賞した『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』や、役者陣のアンサンブルが評価された『ナイブズ・アウト: グラス・オニオン』や『The Woman King』、『逆転のトライアングル』などを抑えて、賞シーズンの後半に位置するこの賞でノミネートを受けることが出来たのは、作品の勢いが完全に死んでいる訳ではないことの証明と受け取れる。2つ目の理由は、脚色賞の最有力候補であるという点。BAFTAこそ逃したものの、CCでの受賞や脚色作品で唯一のGG脚本賞候補に加え、USCスクリプター賞の候補にも挙がっており、今年の脆弱な脚色賞レースの中ではトップクラスの成績を収めている。作品賞候補にならず脚色賞を受賞した例は1998年の『ゴッド・アンド・モンスター』にまで遡る必要があり、近年の作品賞と脚本系賞の関係の強さを考えると、作品賞のノミネート無しは考えづらい。
9枠目と考えているのが『ザ・ホエール』。ブレンダン・フレイザーの演技に関しては広く激賞されているものの、批評家評価がかなり割れていることもあって、つい最近まで主演男優賞とメイクアップ&ヘアスタイリング賞以外は常に落選寄りの当落線上にいた本作。だが、ここ数週間になって、PGAでのサプライズ候補入りを皮切りに、ホン・チャウのBAFTA・SAG入りや、フレイザーのCC受賞(+感涙のスピーチ!)。興収面でも、インディペンデント映画ながらアメリカのみで1000万ドルを突破するスマッシュヒットを記録し、賞レース以外でも注目を集め始めている。ただ不安要素を1つ挙げるとしたら、配給のA24は、1年に1作品以上作品賞にノミネートさせた経験が無いという点。A24にとって、今年は既に『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』が最強の第1候補として君臨しているので、必然的に本作の優先度は2番手になるのだが、これは『レディ・バード』が作品賞にノミネートされた年、2番手としてCCやNBRで候補入りしていた『フロリダ・プロジェクト』をノミネートさせることが出来なかった例を思い出す。ただ、『フロリダ・プロジェクト』が作品賞以外でノミネートの可能性があった候補がウィレム・デフォーの助演男優賞のみと、かなり展望が弱かったのに対して、本作は確定枠の主演男優賞とメイクアップ&ヘアスタイリング賞に加え、助演女優賞や脚色賞の可能性も強く持っている。このジンクスを壊すには十分な作品力なのではないだろうか。

残り1枠。予想家の間で最も支持を集めているのは『西部戦線異状なし』だろう。BAFTAで史上2番目に多い14部門でのノミネートを果たし、作品賞の候補にも挙がった。オスカーでも技術部門を賑わす存在にはなると思うが、作品賞となると疑問符が残る。というのも近年、国際長編映画賞の有力候補で作品賞に残った作品は『愛、アムール』『ROMA/ローマ』『パラサイト 半地下の家族』『ドライブ・マイ・カー』と、三大国際映画祭での出品歴と批評家賞での好戦績、そして歴史的名作級の高評価(例を挙げるとMetacritic 90点以上)を受けている。本作はそのどれにも完璧に当てはまっているとは言えない。Netflixの配給やアメリカ資本がある程度入っている点など、上記の作品群と比べるとメジャーな作りの作品ではある部分は考慮できるが、ならば批評家賞やCC・PGAでの結果が心許なく感じる。Netflix作品という観点だと『ナイブズ・アウト: グラス・オニオン』はGG・CC・PGAで候補入りする好成績。『ウーマン・トーキング』や『ザ・ホエール』と同様に脚色賞の有力候補である点や、前作が明確に2019年の作品賞次点だったことを考えると、ノミネートは堅くすらあるように見える。ただ、問題は脚色賞以外にノミネートされそうな部門が現状ない部分だろう。助演女優賞のジャネール・モネイが一時期かなりバズを持っていたが、BAFTAで候補漏れし、重要賞の候補がCCのみになったことで一気に可能性が薄く。総ノミネート数が2部門の状態で作品賞候補になる例の少なさを考えると厳しいか。PGAに滑り込んだ『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』は、前作で受賞したSAGのキャスト賞で候補漏れ、今年は大作枠として『トップガン』と『アバター』が盤石な位置を確立しているので、ここに入り込むのは難しそう。『The Woman King』はBAFTAでの監督賞候補でバズの持続を見せた形にはなっているが、比較的エンタメ作が評価されやすいGGやPGA、SAGでノミネートを逃したのが痛い。NBR(ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞)とAFI両方でトップテン入りしている作品の中で、毎年必ず一作は作品賞候補になれない作品が出てくるというジンクスの今年の犠牲者なのではないかという疑念も取り除けない(他の今年の両賞トップテン入り作品は『アバター』、『イニシェリン島の精霊』、『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』、『フェイブルマンズ』、『トップガン』、『ウーマン・トーキング』)。『Aftersun』はA24の3番手である上に、ホームであるはずのBAFTAで主演男優賞しか候補入り出来なかったのが痛い。賛否両論の批評や興行的大コケ、『エルヴィス』との競合などで勢いを落としている『バビロン』については、公開前はかなりの有力候補と考えられていた点やCCでは作品賞候補になっている点、さらに、いくつか受賞最有力候補の技術部門があるなど、昨年の『ナイトメア・アリー』のような形での逆転候補入りを果たす可能性がある。ただ、そうなるには『ナイトメア・アリー』のBAFTA・ASC(全米撮影監督組合賞)での撮影賞候補や、SAGでのケイト・ブランシェットの助演女優賞候補入りのような、"前兆"がもっと必要になるだろう。

そこで、ラスト1枠にチョイスしたのが『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』。正直、個人的に感動した作品という部分もかなりあるが、『ウーマン・トーキング』と『グラス・オニオン』と同様に脚色賞の有力候補、そして、#MeToo運動の初期報道を描いた作品というアメリカ映画界における重要性も考慮できる。前哨戦で目立った戦績は、AFIのトップテン入りとキャリー・マリガンのGG・BAFTAノミネートぐらい。なぜそんな本作の候補入りを予想するかというと、ネヴァダ映画批評家協会賞で作品賞を受賞したためだ。2011年から設立された比較的新しい批評家賞で、まず過去11回の内、『ゴーン・ガール』が受賞した2014年を除いた10回で、作品賞を受賞した作品が本戦での作品賞候補になっている。これだけなら他に起こっている批評家協会賞もあると思う。ただ、この賞。少なく見積もって30以上ある批評家協会賞の中で、唯一『コーダ あいのうた』と『グリーンブック』の双方に作品賞を与えている特異な賞なのだ

監督賞

最重要賞にあたるBAFTA、GG、CC、DGA(全米監督組合賞)を制覇した『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』のダニエル・クワン、ダニエル・シャイナートのコンビ"ダニエルズ"、そして、全米・ニューヨーク・ロサンゼルスの三大批評家賞で作品賞を受賞した『TAR/ター』のトッド・フィールドも、これまでに同じようにこの三大批評家賞で作品賞を受賞した6作品の監督が、全員本戦で監督賞候補になっていることを考慮。当確と言えるのは正直この2人だけだと考えている。

ダニエルズと同じくBAFTA、GG、CC、DGAの重要4賞を制覇した『イニシェリン島の精霊』のマーティン・マクドナー。前哨戦歴はトップクラス。作品自体も作品賞を1、2で争う有力候補ということもあってノミネートは堅いのだが、多くの予想家が考える不安要素としては、2017年のマクドナーの前作『スリー・ビルボード』で、今年と同じようにBAFTA・GG・CC・DGAで候補になりながら、本戦では監督賞候補を逃してしまったという"前科”がある点だろう。さらに本作は『スリー・ビルボード』よりも会話劇重視の方向性の小さな作品になっている為、再び脚本賞止まりになる可能性は無いとは言い切れない。ただ、重要なのは2017年と今年では重要4賞コンプリートの難易度が変わっているという点。作品賞枠が拡大した2009年から2019年までの10年間で、重要4賞を制覇した監督が3人未満だった年は2011年と2016年の2回のみ、他の8年は3人以上が重要4賞を制覇していた通り、以前はかなり高確率でコンプリートが可能だった。しかし、BAFTAにロングリスト制度が追加され、より独自性のあるラインナップを打ち出すようになり、2020年と2021年は結果的にオスカーで受賞を果たしたクロエ・ジャオとジェーン・カンピオンの1人ずつしか、重要4賞制覇者は現れなかった。このように、現在の感覚だと重要4賞のコンプリートのみで、十分予想に値する信頼度が付与されると考えられるので、予想に入れた次第。

まず、2018年からジンクスとして定着し始めている、国際長編映画賞候補作の監督枠。今年もこの枠があると仮定して考えると、この枠に入った監督は全員もれなくBAFTA候補にもなっている為、BAFTAにノミネートされた『西部戦線異状なし』のエドワード・ベルガーと『別れる決心』のパク・チャヌクの2人が枠として該当する。BAFTAでの勢いや、作品賞レースでのインパクトを考えるとベルガーが優勢か。戦争映画という監督賞でかなり評価されやすいジャンルなのも強み。だが、作品賞の予想根拠とほぼ同じポイントになるが、この映画は三大国際映画祭への出品が無く、これまでこのジンクスに入って来た監督の作品は全て三大国際映画祭への出品(特にカンヌ)をしている。さらにベルガーはテレビ業界で名を上げた監督ということもあり、これまでこのジンクスに入って来たハネケやキュアロン、パヴリコフスキ、ポン・ジュノ、ヴィンターベア、そして昨年の濱口竜介のような、監督賞で評価を受ける芸術家肌志向の選出とは、タイプがちょっと違うように感じる。ただ、チャヌクはまず本年度のカンヌ監督賞受賞者。そして、既に世界的な評価を確立していながら、『オールド・ボーイ』や『お嬢さん』など数々の名作がオスカーでは冷遇されてきたという所で、キャリア全体を含めての候補というのも考えられる。よく考えたらポン・ジュノも『殺人の追憶』や『母なる証明』での冷遇の果てに『パラサイト』でノミネートを受けた。作品のインパクトの違いはあれど、チャヌクもその形になるのではないだろうか。

最後の1枠に選んだのは『ウーマン・トーキング』のサラ・ポーリー。ただでさえ評価されづらい会話劇という作品の性質。BAFTA、GG、DGAのスナブなんか致命的も致命的なのだが、ポーリーはジンクス的には実はかなりノミネートされやすい状況にいる。まず賞レースが本格的に開幕する前に授賞したパーム・スプリングス国際映画祭の監督賞。この賞自体は本格的に設立されたのが2018年と最近で、さらにその初回の受賞者がスナブを受けた『アリー/スター誕生』のブラッドリー・クーパーなので、データとしての信ぴょう性は薄いのだが、その翌年は『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』のクエンティン・タランティーノ。さらにその翌年と翌々年は『ノマドランド』のクロエ・ジャオと『パワー・オブ・ザ・ドッグ』のジェーン・カンピオンが授賞し、3年連続の監督賞候補と、2年連続の監督賞受賞を送り出している。しっかりとバズを持続させて作品賞候補を果たしていたこの4作品と並んで監督賞を受賞しているのはかなり面白い。さらに、ポーリーが受賞した数少ない監督賞で、セントルイス映画批評家協会賞と女性映画ジャーナリスト同盟賞がある。この2つが実はオスカーとかなり整合性が高い。前者は2004年に設立され、過去18回の間で受賞者がオスカー候補にならなかったのは2012年の『アルゴ』のベン・アフレックのみ。後者は2007年設立で過去15回の間で受賞者がオスカー候補にならなかったのは2012年の『ゼロ・ダーク・サーティ』のキャスリン・ビグローのみと、かなりの高い一致度を示している上、お互いに唯一一致しなかった年が、謎にイレギュラーなラインナップになったことで悪名高い2012年という点も興味深い。
正直、このポーリーの予想は僕のノミネートされて欲しいという気持ちが凄く入っています。男性監督のみのラインナップにはもう辟易としてるし、恐らく90%ほどの確率でスナブされると思いますが、もしその10%を引き当てて候補入りした時に、自分の予想にポーリーの名前が入っていないのが嫌すぎる。だから今年の推し枠としてしぶとく候補に入れ続けます。

個人的感情でポーリーを入れたことによって、弾き飛ばされたのが『フェイブルマンズ』のスティーヴン・スピルバーグ。スピルバーグの業界での立ち位置や、GG受賞やDGA候補になっていることを考えたら、普通に予想したらまず候補漏れすることは無いとは思うのだが、BAFTAでロングリストにすら入らなかったのが、未だに疑問符として浮かび続けている。ロングリスト制度が出来てから3年目と日が浅すぎるので、傾向を伺うサンプルとしての有用性は低いものの、BAFTAの監督賞のロングリストに入らず、オスカーで監督賞候補になった監督はまだ存在しない。さらに、ロングリスト制度になってから、『DUNE/デューン』のドゥニ・ヴィルヌーヴや『シカゴ7裁判』のアーロン・ソーキンと、作品賞有力候補で、GG・CC・DGAの候補になったのにもかかわらず、スナブされる監督の例がある。もしこの例が今年も続くとしたら、スピルバーグがその該当者になる気配を感じる。考えすぎかもしれないが、近年のBAFTAとオスカーの結び付きの強さを考えるとあながち変な予測とも言い切れないのでは。

主演女優賞

まずGGのドラマ部門とコメディ・ミュージカル部門の主演女優賞を分け合った『TAR/ター』のケイト・ブランシェットと『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』のミシェル・ヨーが確固たる2トップ。SAG、BAFTA、GG、CCの重要4賞に入っており、批評家賞での受賞歴もお互いに目を見張るものがある。候補入り確定。

『Till』のダニエル・デッドワイラーもかなりブランシェット、ヨーに次ぐ3番目としての足場を固めてきたように感じる。一時期は予想家から受賞予想に挙げられることもしばしばあったほどだったが、GGで意外な落選。この段階では『ザ・ファイブ・ブラッズ』のデルロイ・リンドーの歴史的落選を想起すらしたが、その後、CC・SAG・BAFTAと重要賞で連続ノミネート。いつもの「ただGGがクソでした」で決着といった感じになりそう。SAGとBAFTAでの候補入りは、デッドワイラーの事前の懸念点だった「他の候補に比べたら知名度不足」という点と、「凄惨なリンチ殺人を受けた黒人少年エメット・ティルの母親の物語というアメリカ以外はそこまで馴染みの深くない(実話としての知名度的な意味で)ストーリー」という点のカバーにもなっていると考えられるので、ほぼほぼ不安要素は無いだろう。『The Woman King』のヴィオラ・デイヴィスも、上記の3人に隠れがちだがブランシェットとヨーに並んで重要4賞の候補を静かに勝ち取っている有力候補。実はこの『The Woman King』は出演時間のデータから考えると、助演女優賞でキャンペーンされているトゥソ・ムベドゥが本来主演のはずという部分で、後述するようなカテゴリー面での若干の不安要素はあるものの、候補漏れはあまり考えずらい。

そして、今年の主演女優賞レースをややこしくしているのが『フェイブルマンズ』のミシェル・ウィリアムズだ。賞レースが開幕する前までは、スピルバーグの母親からインスパイアされた主人公の母親役という役柄から、助演女優賞レースの大本命として多くの予想家の受賞予想に入っていた。しかし賞レースが始まる直前の9月、ウィリアムズが主演女優賞としてキャンペーンされることになるとの報道。わざわざ圧倒的な助演女優賞の最有力候補を、毎年激戦になる主演女優賞でキャンペーンするという選択には批判が殺到。さらに、トロントでのプレミアで映画を観ていた観客からは、ウィリアムズの演技を称賛する声と共に「通常の助演演技よりは見せ場を持っているものの、主演ではない」という証言も散見され、今年最大のカテゴリー詐欺の一つとされた。前哨戦で、ウィリアムズを助演としてノミネートさせたのはシカゴ映画批評家協会賞のみで、GGやCC、サテライトやAACTA(オーストラリア国際アカデミー賞)など、重要賞は軒並みキャンペーン通りに主演女優賞でノミネートさせた。ただ、ここで考えられるのは、アカデミー賞会員は配給会社のキャンペーンを無視して、助演に投票する可能性があるという点だ。会員が配給の指定を無視した例はいくつかあり、一昨年の主演としてキャンペーンされていた『ユダ&ブラック・メシア』のラキース・スタンフィールドが助演男優賞にノミネートされた例、2009年の助演としてキャンペーンされていた『愛を読むひと』のケイト・ウィンスレットが主演女優賞に例などが代表的にある。ただこの例に関しては、スタンフィールドは異論なく主演としてキャンペーンされていた中での助演男優賞候補であり(未だに彼を助演として投票した人の意味が分からない)、そもそも彼の候補入り自体がサプライズであったり、その年の助演男優賞レースで競合が少なかったからこそ起きえた特異な例だし、ウィンスレットに関しても前哨戦の段階で賞によってカテゴリーの見解が分かれていた(GG・CC・SAGは助演、BAFTA・サテライトは主演)という点でウィリアムズとは違うと感じられる。今年の助演女優賞レースの熾烈さを考えると主演女優賞での投票も一定数あるだろうし、仮に集計で助演女優賞の判定になったとしても、他の助演女優賞候補に押されてノミネートを逃すのではないか。個人的には主演女優賞でのノミネートと予測。BAFTA・SAGの連続候補から分かる通り、作品の嫌われっぷりからは予測できないほど好調な『ブロンド』のアナ・デ・アルマス、ウィリアムズを主演女優賞から押し出す、あるいはウィリアムズの助演移動で空いた枠に入る可能性もあるが、会員数の増加で会員の人種的・性別的な層が幅広くなりつつあるアカデミー賞で、故人のマリリン・モンローに対する性差別的ステレオタイプを含んだ搾取的な一作が楽々と評価されるされるとは思えない。

主演男優賞

この部門に関しては明確にトップ4がいる。CCを受賞した『ザ・ホエール』のブレンダン・フレイザー、GGのドラマ部門とコメディ・ミュージカル部門をそれぞれ受賞した『エルヴィス』のオースティン・バトラーと『イニシェリン島の精霊』のコリン・ファレル。この3人が現在主演男優賞に向かって熾烈な争いを繰り広げており、『生きる LIVING』のビル・ナイも作品がサンダンスでの初公開という弱点を物ともせずノミネートを重ねている。この4人は重要4賞を制覇しており、誰か1人でも抜けるとは考えづらい。

残り1枠がかなり難しい。最も候補入りに近いコンテンダーは、CCで候補入りした『トップガン マーヴェリック』のトム・クルーズ、BAFTAで候補入りした『Aftersun』のポール・メスカル、そしてSAGでサプライズ候補に挙がった『ハッスル』のアダム・サンドラーの3人だと考えている。まず作品が圧倒的に力を持っているのは『トップガン』のトム・クルーズ。個人的にはアイスマンとの対面シーンのみで十分ノミネートに値する演技を見せていたと思っているが、他の候補者と違って演技が前面に出てくる映画ではないのがネック。作品のエンターテインメント性やトム・クルーズのネームバリューを考えると、大衆寄りな傾向のあるGGと業界賞のSAGで候補漏れしたのがかなり痛いように見える。アダム・サンドラーに関しては、『アンカット・ダイヤモンド』での歴史的名演の印象が未だにインパクトを残しているからか、賞レース開幕時点で予想家の中で完全に存在を忘れられていたわけではない。クルーズと違いしっかりと業界賞の中でサンドラーのネームバリューを発揮した訳だが、逆にこっちは作品自体の注目度の低さが目立つ。昨年の『ナイトメア・アリー』のケイト・ブランシェットのような、SAGでたまに起こるスター俳優のサプライズ候補入りの現象として見ても良いか。
自分は5枠目に『Aftersun』のポール・メスカルをチョイス。他の有力候補の中で唯一BAFTAとCC、重要賞2つにノミネートされている点もあるが、個人的にメスカルには、昨年の『ロスト・ドーター』のジェシー・バックリーを想起してしまう。それはメスカルが『ロスト・ドーター』に出てるからという訳ではなく、テレビシリーズや評価されたインディペンデント映画で印象を残していた俳優の満を持してのBAFTA候補という点で、『チェルノブイリ』や『ワイルド・ローズ』、『もう終わりにしよう。』などでキャリアを積んで助演女優賞に候補入りしたバックリーと、『ノーマル・ピープル』や『ロスト・ドーター』で注目を集めた後主演男優賞に候補入りしたメスカルは通ずるものを感じる。作品賞の勢いに乗って『西部戦線異状なし』のフェリックス・カメラーがサプライズ候補になる可能性も匂うが、作品が14部門で候補になった中、BAFTAロングリストから唯一の落選を喫してしまっているから厳しいか。

助演女優賞

今年一番の混戦部門と言っていい。GG・CCを受賞した『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』のアンジェラ・バセットと、『イニシェリン島の精霊』のケリー・コンドン。両者とも重要4賞で候補入りしており、この2人はギリ当確と言って差し支えないか。

残り3枠はどうなってもおかしくない。
まず注目は『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』のジェイミー・リー・カーティスか。上記の2人と同じく重要4賞で候補入りしており、これまでBAFTA(『大逆転』)やGG(『トゥルーライズ』)での受賞経験がありながら、オスカーにはあと一歩届かなかった名優ということもあってキャリア全体に対する投票もあるだろう。ただ重要なのが、本作には別の有力候補ステファニー・スーがいるという点も考えなくてはならない。作品の中では飛び道具的に扱われているカーティスに対して、スーは主人公の娘と悪役という作品の根幹に関わる重要な役柄を演じている為、純粋な演技評価で考えたらスーこそ重要4賞候補になるべき存在なのだが、その疑問に応えるかのようにSAGで候補入り。先立って候補入りしていたCCと併せてカーティスの後を猛追している。昨年の『ベルファスト』でのカトリーナ・バルフとジュディ・デンチの様に、前哨戦でより結果を残していた有力候補が、同作の前哨戦でより結果を残していなかった有力候補に負けてしまう逆転現象が起き、スーのみの候補になるのではないかという読み。

他2枠に関してはもはやルーレットで決めても良いぐらいかもしれない。枠を狙うコンテンダーの中でひとつ抜けている候補を挙げるとしたら『ザ・ホエール』のホン・チャウだろうか。ヴェネツィアでの賞賛もあって、賞レース開幕時点では最有力候補の一角とされていたのだが、GG・CCでの候補漏れで勢いを失っていた。しかし、ここ数週間で作品自体のバズも復活すると同時に、BAFTAとSAGで連続候補入り。チャウは『ダウンサイズ』であと一歩のところでオスカーノミネートを逃して経験がある。『ウォッチメン』や『Driveways』での好演した上、さらに今年は本作の他に『ザ・メニュー』や『Showing Up』にも出演し、知名度や注目度は『ダウンサイズ』出演時と比べ物にならない。ノミネートの可能性は十分開けている。
ラスト1枠、『ナイブズ・アウト: グラス・オニオン』のジャネール・モネイは、モネイ自身のスター性や役柄にある仕掛けのことを考慮すると可能性はあったが、GG・BAFTA・SAGの連続候補漏れが痛い。作品のバズの弱まりも考慮すると厳しいか。『ウーマン・トーキング』組からは、ジェシー・バックリークレア・フォイが絶賛を受けていたが、作品の勢いの弱まりや票割れが災いしたのか、獲得した重要賞の候補はバックリーのCCのみとかなり絶望的。『ウーマン・トーキング』という作品から、女優賞ノミネートが一人も出ないと予想するのはかなり心苦しいが、現状を考えるとそうせざるを得ない。個人的に食い込む可能性が高いと考えているのが、お互いにBAFTAとCCで候補入りを果たした『逆転のトライアングル』のドリー・デ・レオンと『SHE SAID/シー・セッド』のキャリー・マリガンのどちらかだと考えている。個人的には、作品賞の予想に入れている『SHE SAID/シー・セッド』のマリガンをチョイス。『プロミシング・ヤング・ウーマン』で主演女優賞受賞まであと一歩のところまで迫っていたことが記憶に新しいように、オスカー会員の人気も持っているだろう。ただ、レオンに関しても本人の愛らしいキャラクターと演じている役柄の面白さが、どうしても『ミナリ』のユン・ヨジョンを想起させるので、「この人にノミネートされて欲しい票」が集まる可能性は容易に想像できる。

助演男優賞

三大批評家賞、重要4賞ノミネートを完全制覇した『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』のキー・ホイ・クァンは何があっても落ちる訳がない。違う人格を1人の人間の見た目で演じ切る複雑な演技、GG・CC受賞にそこでの感動のスピーチ、さらに白人優勢のハリウッドの中で20年近く俳優業から退かざるを得なくなり、本格的な復帰第一作目でキャリアの中でもずば抜けた絶賛を獲得というドラマ性も含めて、受賞まで完全に確定している状態。

他の候補に関しては、『イニシェリン島の精霊』からブレンダン・グリーソンバリー・コーガンが重要4賞で候補入り、2017年から毎年発生している1つの作品からのWノミネート枠になるだろう。『フェイブルマンズ』のポール・ダノはBAFTAとGGを落としている弱点はあるものの、今年の4、5枠目の可能性がかなり開けている助演男優賞レース展開を考慮すると、ノミネートまでは堅いのではないだろうか。同じ『フェイブルマンズ』組からはジャド・ハーシュセス・ローゲンデヴィッド・リンチも称賛を受けていたが、今年のWノミネート枠は『イニシェリン島の精霊』が確立して知っている上、一番可能性が高いハーシュでさえCCのみの候補に留まっているので、票割れの心配はあまりないと考えている。
残り1枠、前哨戦歴で考えると、BAFTA・GG・SAGで候補入りを果たした『グッド・ナース』のエディ・レッドメインが有力ではあるものの、作品の弱さが気になるところ。同じくGGとSAGで候補入りした2020年の『リトル・シングス』のジャレッド・レトや、昨年の『僕を育ててくれたテンダー・バー』のベン・アフレックと同様のスナブ枠だと考えている。個人的には『ウーマン・トーキング』のベン・ウィショーだと予想。原作では語り手となる重要な役柄を演じており、劇中で見せ場もあるという評もあった。重要賞で1つもノミネートされていないのは致命的だし、『ウーマン・トーキング』って言ってるのに、役者陣のノミネートが男性のみってどういう予想なのかと自問自答してしまうが、今年は『ウーマン・トーキング』を推すって決めたので、個人的感情を込めて5枠に入れた次第。
さらに、あと、作品の勢いに乗って『エルヴィス』のトム・ハンクスが意外なサプライズ候補になる可能性を感じる。アメリカ現地ではラジー賞にノミネートされるなど、かなり賛否の別れたハンクスの演技だが、高尚を極めるプレスリーのステージでの姿に対して、軽薄の極みを体現したあのバランスの演技はどうしても嫌いになれない。

脚本賞

今年はWGA(全米脚本家組合賞)の発表がオスカーノミネート発表の翌日なので予想が難しい。まず、BAFTA・GG・CCの重要3賞に揃って候補入りしている『イニシェリン島の精霊』『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』『フェイブルマンズ』『TAR/ター』は候補確実と考えて良い。どの作品も作品賞候補を逃す可能性が低いということもあり、残り1枠に何が入るかの争いと見て良いだろう。
現状はCCで候補入りした『Aftersun』とBAFTAで候補入りした『逆転のトライアングル』の2択になっていると考えている。ただ、イギリス映画というアドバンテージを持っている上、主演男優賞などでバズを後者より持っていた『Aftersun』がBAFTAで候補を逃した痛恨を考えると、それを押しのけて候補入りした『逆転のトライアングル』が優位に立っているのではないかと考えている。昨年の『わたしは最悪。』のサプライズ候補入りの様に、『別れる決心』『CLOSE/クロース』に代表される非英語作品のサプライズ候補入りも期待しているが、さすがに厳しいか。

脚色賞

いくらBAFTAでスナブされたり、作品賞や俳優賞で不調だからと言って、重要賞・批評家賞双方の脚色賞レースを牽引し続けた『ウーマン・トーキング』が候補漏れするのは考えづらい。USC・BAFTA・CCで候補入りした『SHE SAID/シー・セッド』も今年の候補の中では『ウーマン・トーキング』に次ぐ2番手だと言える。『ザ・ホエール』もここ数週間のバズの復活を考えると可能性は高いと考えられる。USCで候補漏れし、WGAではノミネート非対象の作品でもあるので、脚色賞の組合賞を2つとも逃したのが確定してしまっているのが大きな不安要素ではあるが。『SHE SAID/シー・セッド』と同じくUSC・BAFTA・CCで候補入りした『生きる LIVING』は、あのカズオ・イシグロが黒澤映画を脚色という重みを考慮すると、ノミネートまでは安泰に見える。『ナイブズ・アウト: グラス・オニオン』は、USCでの非対象とBAFTAの候補漏れが大きな不安要素だが、前作が脚本賞候補になっている点と、WGAで候補になる可能性の高さを考え5枠目に入れた。ここに食い込む作品の可能性としては、USCで候補入りした『トップガン マーヴェリック』とBAFTAで候補入りした『西部戦線異状なし』が挙げられる。特に後者は古典的小説の再映画化という点で評価を受けやすいが、作品賞・監督賞の予想根拠と同様に、非英語映画が脚本系賞に食い込むには昨年の『ドライブ・マイ・カー』や『わたしは最悪。』レベルの高評価が必要になるのではないかと予測。

国際長編映画賞

まず、BAFTAで監督賞候補になった『西部戦線異状なし』『別れる決心』は候補確実。受賞も恐らくこのどちらかから出るだろう。そして、後述する撮影賞での候補入りを予想している『バルド、偽りの記録と一握りの真実』が入ると予想。作品評価自体はかなり伸び悩んでいるが、Netflix配給かつイニャリトゥの知名度を考慮するとそれを補って余りあるのではないだろうか。今年までに11年連続でインデペンデント・スピリット賞の候補作から1作は本戦ノミネート作品が出てきているが、今年は上記の3作を含め多くの有力作が選外に。その中でもヴェネツィアの審査員大賞やMetacriticでの絶賛などが際立つ『Saint Omer』がオスカー候補になるのではないかという読み。

2019年の『聖なる犯罪者』を皮切りに、2020年の『少年の君』、2021年の『ブータン 山の教室』と、有力候補とされていなかった作品のサプライズ候補入りが継続的に起きている。今年もそれが起きるとしたら、無名作品としては『エンドロールのつづき』『The Blue Caftan』が該当するが、2019年の『燃ゆる女の肖像』とフランス代表になった『レ・ミゼラブル』の様に、あの『RRR』を倒してインド代表になったという話題性から『エンドロールのつづき』が選ばれるのではないかと考えている。

GGでまさかの受賞を果たした『アルゼンチン1985』。BAFTAやCC候補になっているので前哨戦歴から考えると候補漏れの確率はそこまで高くないものの、批評家賞であまりインパクトを残せていない点や、前述した他部門でノミネートされる可能性がある3作品と無名作品枠、インデペンデント・スピリット賞との整合性の枠に押し出されてしまう形に。『CLOSE/クロース』はBAFTAでの選外とカンヌのグランプリ受賞作という点で、最終的にノミネートされなかった2019年の『アトランティックス』や昨年の『コンパートメント No.6』や『英雄の証明』のラインに乗っかっているのではないかと推測。『EO』は三大批評家賞の外国語映画賞を制覇しているものの、ここを制覇した作品は『4ヶ月、3週と2日』や『アデル、ブルーは熱い色』、『天国の口、終わりの楽園』など何故かスナブされる作品が多い。

長編ドキュメンタリー映画賞

今年のこの部門の争点は、昨年の『The Rescue』がそうであったように、2017年から発生している有力候補がスナブされる現象が起こるかどうかという所だろう。というのも、クリティックス・チョイス・アワードを受賞し、一時期は最有力候補とされていた『おやすみオポチュニティ』がショートリストの段階でスナブされたため、今年のスナブはもう終わっている可能性があるという点だ。
ただ、個人的には『All the Beauty and the Bloodshed』がスナブ枠になりそうな気配を感じている。ヴェネツィアの金獅子賞受賞や三大批評家賞制覇という強みはあれど、クリティックス・チョイス・アワードと全米製作者組合賞で作品賞候補を逃してオスカーを受賞した作品は2017年の『イカロス』のみ、その『イカロス』も前哨戦で最有力に位置していた作品ではないことを考慮すると、最有力作品がこの2賞を逃したのはかなり致命的なのではないか。

『ファイアー・オブ・ラブ』『All That Breathes』『ナワリヌイ』は、数々の長編ドキュメンタリー賞候補作を送り出しているサンダンス映画祭に出品されている上、IDA(国際ドキュメンタリー協会賞)・CEH(シネマ・アイ・オナーズ)・CC・PGA・DGAを制覇している為、候補漏れは考えづらい。『クロティルダの子孫たち』は、2019年に『アメリカン・ファクトリー』を受賞に、2020年に『ハンディキャップ・キャンプ』をノミネートに導いたバラク・オバマ元大統領の制作会社ハイヤー・グラウンド・プロダクションズが制作している点が大きなアドバンテージ。『Bad Axe』は5枠全てがサンダンス作品になるのを防ぐために、サウス・バイ・サウスウェストでの絶賛が印象に残っている本作を予想に組み込んだ。

長編アニメ映画賞

アニー賞・BAFTA・GG・CCを制覇した『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』『長靴をはいたネコと9つの命』『私ときどきレッサーパンダ』『Marcel the Shell with Shoes On』には当確を出していい。残り1枠は、2013年以降、毎年1作品はアメリカが製作していない作品がノミネートされている点を考慮して、外国作品になると予想。アニー賞で候補になった外国作品は『Little Nicolas』『犬王』のみで、前者はアヌシーのグランプリを獲得している強みがあるものの、後者は重要賞のGGでノミネートしている点で有利と予想。

撮影賞

今年最も無茶苦茶な前哨戦状況になっているのがこの撮影賞なのではないだろうか。まず重要なのが、ASC(全米撮影監督組合賞)との親和性がかなり高いという点だ。アカデミー賞の候補とASCの候補が一致数が4作未満になった例は2006年まで遡る必要がある。なので、基本的にはASCの候補作から4作選ばれると考える必要がある。まず、ASC・BAFTAでの候補、そしてCCで受賞した『トップガン マーヴェリック』はほぼ当確を出していい。そして、ASCとBSC(英国撮影監督組合賞)の両方にノミネートされた『エルヴィス』『THE BATMAN -ザ・バットマン-』もかなり可能性が高い。2010年代以降、ASCとBSC双方にノミネートされた作品は42作あるが、その中でオスカー候補にならなかった作品は5作しかない。今年この双方にノミネートされた作品が2作しかないという点でも、ノミネートまでは安泰なのではないだろうか。

ASC候補の作品からもう1つ選ぶことになるが、個人的には『バルド、偽りの記録と一握りの真実』をチョイス。ダリウス・コンジの色が見えないほど、長回しや広角など、エマニュエル・ルベツキの撮影を再現しようとしているのだが、いくら別の撮影監督によるものとはいえ、ルベツキに3年連続で賞を与えたオスカーが無視するとは考えづらい。残り1枠はBAFTAで撮影賞入りした『西部戦線異状なし』だと予想。評価されやすい戦争映画である上、2013年以降、毎年初候補の撮影監督がノミネートされているというジンクスがあり、それに該当するのが本作なのではないかという予想。

作曲賞


編集賞


歌曲賞


衣装デザイン賞


美術賞


メイクアップ&ヘアスタイリング賞


音響賞


視覚効果賞


実写短編映画賞


短編ドキュメンタリー映画賞


短編アニメーション映画賞


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